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戦場の実体験を掘りおこして伝える〜レイバーネットTVで『日本軍兵士』著者・吉田裕さん

アーカイブ録画(82分)

 今回(137号・12月12日放送)は、今年最後の放送で、来春までお休みとなる。機器を入れ替えての新体制になってから半年、やっと機器の扱いにも慣れてきたと担当者。映像出しのトラブルもなかったし……。

ニュースは4件


●シャープ亀山工場、日系外国人労働者3000人解雇記者会見
世界のシャープ亀山工場では、日系外国人労働者3000人を雇止めにした。12月3日に記者会見を行った。首切りのしやすさと有給休暇や各種社会保険付与逃れのための2ヵ月ごとの契約雇用だった。会社と交渉を始めると、暴力団が出て来たとか。なんともけち臭く、労働者の尊厳を無視したやり口といえる。彼らの生活を考えれば、早期の解決を願うばかりだ。

●入管法改訂法案の強行裁決前夜の国会前
12月7日夜の国会前で、若い人たちの切実な抗議の声を拾いつつ、続く未明に強行裁決されたと伝えた。前回の指宿さんのニュース解説を思い出しながら、「人間」として来る「労働力」への配慮に欠いた法案に、怒りを感じる。

●コンビニ加盟店ユニオンのシンポジウム
「コンビニの現場を考えるシンポジウム2018」が12月1日にあった。まず、コンビニオーナーになってはいけませんと。確実に脳梗塞などで、働けなくなるという。そして、日本の長時間労働を支えているのは、コンビニだと指摘する。なるほど、どんな時間でも食べ物や日用品を売っているではないか。だからこそ、今のシステムを根本から変えなければならないと思う。

●幕張メッセでの武器見本市に反対するスタンディングアッピール
千葉県の幕張メッセは、昨年1回、来年2回の武器見本市に場所を貸す。それを取り消すように運動しているが、12月8日、自衛隊基地が近くにある千葉県船橋駅前で行った見本市「いる?」「いらない?」のシール投票を紹介。77票のうち69票が「武器見本市はいらない」だった。日本の武器が、よその子どもを殺すかと思うと……という参加者の言葉は重い。

◇ニュース解説「関西生コン支部の大弾圧事件」

*動画ココカラ

「関生」といわれいてる労組が、脚光を浴びている。連帯ユニオン関西地区生コン支部が数次にわたる不当逮捕で大弾圧を受けているからだ。しかも警察がぐるになっているという話も。そこのところを連帯ユニオン本部書記長の小谷野毅さんが解説した。

去年の12月に関西地域でストライキをした。それがきっかけで164社が加盟している大阪の生コン協同組合が逆切れして、組合つぶしをはじめた。夏から警察が乗り出して弾圧がはじまった。

この生コン協同組合は、大手ゼネコンに出入りする業者団体で、ゼネコンから身を護るための組織だという。生コンを運ぶ側の労働組合も協調してきた。生コン価格が安定したら運賃も上げる約束をしていたのに、守られていなかったので、労働者の権利である賃上げ要求をしたところ、業者側はそれをゆすりたかりの組織犯罪と言い始めた。3月から警察が乗りだし現在までにいわゆるガサ入れを述べ80ヶ所、8月からこの11月まで毎月、組合執行部を含め40人くらいが1度ならず捕まっている。中には起訴まで進んだ人もいる。


何より問題なのは、デモ集会の現場にいなかった人までが「行動を指示した」ということで捕まっていること。弁護士によると、「共謀罪適用の練習」ではないかということだが、まさに共謀罪の適用そのものではないかとしか思えない。また、ヘイト集団と手を組み、行動の一場面だけを切り取って、暴力集団であるかのような動画を作ってネットで流している。労組員をビビらせ組合をつぶすという手口も透けて見え、忌々しき事態である。

既視感大ありの事件だ。戦前戦中に、治安維持法で捕まった人々の顔がちらつく。小谷野さんは、「我々も慎重に対処していかなければならない」と今後の運動の進め方に懸念を示した。

今後は、警察はおかしいのでは? 28条を壊すつもりか? というような署名活動もしていくし、1月には、議員会館でかなり大きな集会をするという。自分の身を護るためにも署名したい。人権を守るために果敢に闘っているということで、多田瑶子反権力人権賞をうけられることになったそうだ。

◇ことし私のベストワン〜本と映画で振り返る

*動画ココカラ

コーナー司会はレイバーネットブッククラブの志真秀弘さんと佐々木有美さん。本で今年を振り返るシリーズ3回目は、映画も加わった。ゲストに『日本軍兵士』の著者である吉田裕(一橋大学教授)とレイバーネットのHPで連載中の「ほんの発見」の執筆者である大西赤人(作家、「メタポゾン」編集長)さんを迎えた。

最初に事前アンケート寄せていただいた29人の方の内容発表があった。*アンケート全内容
あなたが選ぶことしのベストワン作品。本と映画で2018年を振り返った。その作品の中から今の社会の問題が浮かび上がってる。歴史に学ぶ韓国の民主化に対して、まったく学んでいない日本との対比が顕著であったこと。原発関連の福島、石牟礼道子さんが亡くなったこともあり水俣が、そして沖縄の歴史を考えるものが多かった。今の日本の直面している問題を扱ったものが多数を占めた。 本では、石牟礼さん関係と水俣で5点、労働問題が2点、戦争関連が3点あった。


映画はまず『沖縄スパイ戦史』(三上智恵、大矢英代監督)。実際の沖縄戦がこれほど描かれたものはなかったし、実相をえぐったものもなかったと志真さん。少年兵のことも知らなかったことだと。大西赤人さんは、沖縄というものを日本にとって都合のいい「ツール」としてしか存在していなかったと看破する。

後半は、ベストワンにも選ばれていた『日本軍兵士』(中公新書)の著者・吉田裕さんをゲストにお招きしてお話を伺う。


表題通り、先の戦争での兵士の実体験でつづられている。昨年12月発刊以来、わずか7ヵ月で14万部を超えるベストセラーになり、朝日、毎日の他、読売、産経などでも取り上げられていた本である。それは、段々戦場体験者が少なくなる中で、いま自衛隊が海外に派兵されたりと戦争現場に行くかもしれない現実が迫ってきている。そういうことから読まれたのではないかと吉田さん。

大西さんは、過去の戦争を侵略だなんだというと、「自虐史観」などと指弾されるが、服がない、糸がない、食べ物がないということは否定のしようがない。『戦争がつくった現代の食卓』という本によると、アメリカではレトルトやフリーズドライなどは、軍の食糧のために開発されたものだが、日本では兵士の生活など考えもしなかったことが浮き彫りになったという。

吉田さんはこの本を読んだ人が、20キロ、30キロの水を背負ってみたという話も披露し、人間としての「兵士の目線・立ち位置」にスポットを当てたという。


戦争そのものがどう準備され、どう闘ったかの戦争の中身が詳しく再現されている。何キロの荷物を背負って行軍したかはもちろん、軍靴の中の水虫問題、兵站補給のない中での行軍、何を食べ何を着たか等々。例えば、治療できなかった虫歯の問題は、生きのびてもその後のQOL(生活の質)に大きく影響しているはずだという。米軍では十分な歯科医師がともに従軍していたとか、数カ月ごとに休暇があり本国に帰れたので人間的だが、日本軍は奴隷労働もいいところだと。

この本の特徴は、徹底した資料の読み込みである。研究費のほとんどは古書店にみ、中国や南方戦線に兵士を送りだした県の図書館の資料もしらみつぶしに調べたという。中には、手書きで書いたものをコピーして製本したものもあり、記録を残すことにこだわる熱い気持ちが伝わってきたという。

300万人を越える戦死者の中身は、異常に高率の餓死、海没死、戦場での自殺・「処置」、特攻死、物資欠乏よるもの……。それでも「戦う、頑張る」それを支える精神論の一つ「前向き思考」は、自分たちの首を絞めることだと指摘され、なるほどと気づいたのだった。

レイバーネット川柳班が、12月22日に発行する『反戦川柳句集—「戦争したくない」を贈ります』のまえがきの中に「……しかしかれらの戦争には致命的な弱点があります。私たちの協力が必要だということ。……」とあるように、私たち一人ひとりが戦争を拒めば、戦争は起きないということ。自分の手で戦争を止めようと勇気の湧く放送だった。

(なお来期は3月20日からスタートします。企画持ち込み、スタッフ参加など大歓迎です。→レイバーネットTVプロジェクト


*番組の最後に12.22レイバーフェスタの案内

報告=笠原眞弓・写真=小林未来


Created by staff01. Last modified on 2018-12-16 15:08:25 Copyright: Default

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