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今年こそ狭山が動く!〜「狭山事件の再審を求める東京集会」開かれる

 2月23日夜、東京・台東区民会館9階大ホールで、「狭山事件の再審を求める東京 集会」(主催・実行委)が開かれ、280人が集まった。

 1963年5月1日。埼玉県狭山市で女子高生が殺され、農道に埋められるという痛ましい 事件が発生した。直前に東京で起きた「吉展ちゃん誘拐事件」に続き、またしても身 代金を取りに来た犯人を逃す大失態を演じた捜査陣は、世論の厳しい批判をかわすた めに被差別部落への見込み捜査を開始。アリバイの曖昧だった石川一雄さんを逮捕し た。

 あれから55年。第3次再審請求申立てから12年近く。無実の罪で人生の大半を獄中で 過ごした石川さんは、この日も妻の佐智子さんとともに支援者らに元気な姿を見せ た。「すぐ疲れるという妻に、昨日初めて布団を敷いてやった。私は毎日鍛えているから 疲れない」。「無罪を勝ち取ったら風呂いっぱいにビールを張って、そこに飛び込み たい」。石川さんの言葉に、会場は温かい笑いに包まれた。

区民会館は浅草寺の東側に位置する。歩道には公安刑事がたむろしている。

 主催者あいさつで青木正男実行委議長は政府が画策する「働き方改革」を厳しく批 判。「労働実態の偽データと同じく、狭山事件で石川さんを犯人とした証拠がねつ造 されたことは明らかだ」と話した。「差別と格差を許さない社会の実現を」と訴え、 「一日も早く無罪を勝ち取るため実行委も全力でがんばる」とアピール。

 松島幸洋実行委事務局次長は、43年前に東京高裁で下された悪名高き「寺尾判決」 (確定判決)のでたらめさを、再審請求の経過とともに丹念に暴き出した集会基調案 を提起した。

 狭山弁護団の河村健夫弁護士が演壇に立った。演題は「私たちが真っ先に求める事実 調べベスト3」。
 その一つ目は万年筆のインキを鑑定した「下山鑑定」(2016年)である。被害者が普 段使っていたインキと、石川さん宅から「発見」された万年筆のインキが別物である ことを科学的に裏付けた。「ペーパークロマトグラフィー」という手法で実証した。
 二つ目は、脅迫状の筆跡と石川さんの筆跡を調べた2018年提出の新証拠「福江報告 書」。コンピューターを駆使した最新の科学的「筆者異同識別」によって、脅 迫状の筆跡は99・9%の確率で石川さんのものではないことを明らかにした。
 三つ目は、取り調べの様子を録音したテープだ。これによって、有罪判決の根拠 である警察官証言「スラスラ自白した」の信用性が崩れた。自白どころか犯行の経過 を石川さんはまったく知らないために、何度も取調官に質問していることが証明され た。

 河村弁護士は、足利事件、布川事件等を例に挙げ、「冤罪の被害者は、社会的弱者や 孤立者に集中する」と語り、「だからこそ警察は、そんな被疑者に対しては、違法で強 引な捜査も許されると思い込んでいる」と語った。

 集会には、実行委参加団体のほか、地域で活動する個人やグループも多数訪れた。冤 罪を題材にドキュメンタリー作品を作ってきた映画監督の金聖雄さんは、新作「獄友(ごくとも)」の内容を紹介した。無実の罪で長年にわたり自由を奪われてきた被害者たちの友 情を描いた作品だ。3月24日から公開される。

 集会の終了後には必ず会場出口に立ち、参加者一人ひとりに固い握手を求める石川さ ん。彼の人柄に触れるたびに私は思う。もし石川さんがえん罪という国家的犯罪と無縁の、静かな人生を送っていた ら。懸命に働き、家族に囲まれてのんびりと 老後を迎えていたら。その長い年月の中で、誠実で義理堅くお人好しで優しい性格 に、どれほど多くの人が癒され、救われただろうか、と。

「不運だったけど、不幸ではない」――「獄友」たちの言葉が、説得力を持って響い てくる。

 79歳になったばかりの一雄さんに、残された時間は長くない。「今年こそ狭山が動 く」――佐智子さんは繰り返し力を込める。成功裡に集会を終えた来場者は、事実調べ・再審開始を勝ち取る決意を新たにして帰路についた。(Y)


Created by staff01. Last modified on 2018-02-27 19:44:33 Copyright: Default

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