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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(1月25日)〜山口香委員が「オリンピックはいらない、があっていい」発言
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●根津公子の都教委傍聴記(2018年1月25日)

山口香委員が「オリンピックはいらない、があっていい」発言

 今回も公開議題は1件、「『東京都スポーツ推進総合計画(仮称)』策定(都知事策定)に関する意見聴取について」。非公開議題はいつもながら、「教員等の懲戒処分について」。

<『東京都スポーツ推進総合計画(仮称)』策定に関する意見聴取について>

■国や都は個人のスポーツにまで口出しするのか?!

 文科省は1961年成立のスポーツ振興法を50年ぶりに全面改訂し、2011年にスポーツ基本法を成立させた。同法は「地方公共団体(の長=都知事))は、『地方スポーツ推進計画』を定めるよう努めるものとする」。その際に「教育委員会の意見を聴かなければならない」と定める。それに沿って、都知事は今年3月に「東京都スポーツ推進総合計画(仮称)」を策定することとし、その案を都教委に提示。都教委はこの日の定例会の議案としたということだった。

 案は、「誰もが、いつでも、どこでも、いつまでもスポーツを楽しみ、スポーツの力で人と都市が活性化する『スポーツ都市東京』を実現する」と謳い、3つの政策目標《スポーツを通じた健康長寿の達成》《スポーツを通じた共生社会の実現》《スポーツを通じた地域経済の活性化》を掲げる。
 《健康長寿の達成》では、都民のスポーツ実施率(18歳以上)56.3%(2016年)を2020年には70.0%を目標にする、という。過労死ラインの長時間労働及び非正規・低賃金労働が深刻化していることには触れずに、何と脳天気な、と思わずにはいられない。《共生社会の実現》を小学校入学から「特別支援」という名の下、都や国が奪っておいて、何をか言わんや、である。《地域経済の活性化》は、オリンピック競技場としてつくった施設の維持に頭を抱える都の姿が垣間見える。

■「オリンピックはいらない、があっていい」の発言

 事務方の提案を受けて、教育委員から次の発言(要旨)があった。
 「スポーツの影の部分を伝えるべき。ドーピングやスポーツ嫌いなどの」(北村教育委員)
 「東京オリンピック・パラリンピック2020に向けてスポーツ過信になってはいないか。オリンピックはいらない、があっていい。皆がスポーツをやらねばということになるのは怖い」(山口教育委員)
 「できない人を排除することのないように。オリンピックでの北朝鮮と韓国の歩み寄りに見られるように、オリンピックは政治であることを示していくことも大事」(宮崎教育委員)

 山口委員の発言には同意できる。しかし、だ。山口教育委員を含む全教育委員が定例会で承認したうえで始まった、年間35時間を課すオリンピック・パラリンピック教育。それは、「オリンピックはいらない、があっていい」とはなっていない。都教委作成の「オリンピック・パラリンピック学習読本」は、オリンピック・パラリンピックの「負」の部分は一切示さず、「オリンピック・パラリンピックは素晴らしい」との認識に立ち、そこに子どもたちを誘導する。

 その一例を挙げる。読本の「はじめに」の扉では、「東京2020大会は、開催都市東京で学ぶ中学生(高校用は「高校生」)の皆さんにとって貴重な機会となるとともに、この経験は、生涯にわたるかけがえのない財産となります。・・・理解を深め、」と言い、読本の最後は、中学生用は「自分にできること、やるべきことは何かを考え、2020年の自分のあるべき姿を思い描いてみよう」と締めくくる。高校生用では「ボランティアと社会貢献」を言った上で、「自分がやるべきことは何かを考える」ことを勧める。しかも、都教委は、高校生にはボランティアを必修=義務とした。「オリンピックはいらない」の選択肢など、子どもたちにないことは歴然としている。子どもたちに対し、「国家事業としてのオリンピック・パラリンピック大賛成」の意識・価値観の刷り込みを、都教委は教育委員会定例会の承認のもと行なっているのだ。ここを曖昧にしてはならない。

 オリンピック・パラリンピックに関するこれまでの定例会で私の知る限り、山口教育委員がこのような発言をしたことはなかった。しかし、現時点でこのように考えられるのなら、ぜひとも定例会で問題提起し、教育委員で論議し、進行するオリンピック・パラリンピック教育に変更や改善を加えてほしい。いや、そうすることが、教育委員としての責務ではないのか。その責務は、山口教育委員ひとりにあるのではなく、全教育委員にある。

■意見聴取に対する「回答」は

 「東京都知事が策定する『東京都スポーツ推進総合計画(仮称)』は、都教育委員会策定の『アクティブプランto2020(第3次推進計画)』、「『東京都オリンピック・パラリンピック教育』実施指針」等と、理念や施策の方向が一致していることから、(教育委員会は)『異議なし』として回答する。」事務方が予め用意した、この都教委「回答」案に全教育委員が賛成し、議事は終了した。したがって、この文面が都知事に届けられる。
 上に紹介した発言と「計画(仮称)」は矛盾しないのか。提案に対する意見の違いをしっかり論議すること、それを経て提案をどうするかを決めるのが定例会での教育委員の任務であろうに、教育委員はそれをせず、いつもながら事務方が出した案に容易に賛成した。無責任もいいところ。


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