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映画紹介 : そこに在るを受け入れる〜『恋とボルバキア』(小野さやか監督)

   笠原眞弓    人は他人を、本当に理解できるのか。私は生まれながらの見かけの性と自分が認識してい る性が一致している。一方、知り合ってからだんだん女性になっていった友だちに、何の 違和感も持たなかったが、あくまでも出会ったときの性で付き合っていた。ということは 、その人の気持ちを十分に理解しているとは言えないと、この『恋とボルバキア』は迫っ てくる。  現在、指定校となって小学校のトイレ問題などの解決に取り組んでいる自治体がある。会 社でも試行錯誤しているところがあると聞く。  しかし、「LGBT」 を理解するということは、トイレや更衣室だけの問題、戸籍の問題 だけであるはずはなく、そこを入り口として制度を整えることも大切だが、根本は人格を 認められるかどうかを突き付けられるのだと思う。  この10月の国政選挙では、LGBTに理解を示しているかのような表現が多く見られた。た だ言葉ずら、字ずらだけ、その場限りの理解したふりはやめてもらいたいと、落ち着きの なさを感じたのは、私だけだろうか。現に自民党の竹下亘総務会長は、国賓の同性カップ ルの宮中晩餐会への出席を問題視して、いかがなものかといった。分かったふりすらでき ないレベルだ。  この映画は、女装する男性として生まれた人々のドキュメンタリーである。一言で女装 男性と言ってもさまざまで、普段は男性として生活していて、ある時だけ女装する人、普 段から女性として生きている人、恋人のいる人いない人、自分に戸惑っている人と、誰一 人として同じではなく、それぞれに個性がある。それは、男であって男である人となんら 変わらず、一人ひとり違った思いや悩みを抱えていることが伝わってくる。  妻のウエディングドレスがうらやましかったタクシー運転手は、休みの日に女装して高 尾山にハイキングに行ったり……。子どもが欲しいという人だっている。 家族にも受け入れてもらえない人もいると思うのだが、なんといってもホッとしたのは、 二人の母親。ひとりは、そんな息子を全面的に受け入れ、「生まれてきてくれてよかった 」という。他の家族もまったく違和感なく彼女に接している。  もう一人は、両親が子どもに会いに行くシーン。母親が「今日はどっちかな」と父親に 話しかけるも、何か照れているような父親。母親はドアを開けて、「こっちだった」と笑 う自然体。  ただあることを受け入れる、そんな人になりたいと思った。 (C)2017「恋とボルバキア」製作委員会  ボルバキア:宿主を性転換させる共生バクテリアの一種    94分/12月9日よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

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