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石川源嗣のコラム :バーニー・サンダースが敬愛するユージン・デブス
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東部労組の石川です。

ジャパンユニオン組合ニュース2017年6月号コラム<Focus of News>に下記をアッ
プしました。

<Focus of News>2017年6月号

■バーニー・サンダースが敬愛するユージン・デブス■

 アメリカ大統領民主党選挙候補バーニー・サンダースについては、<Focus of 
News>5月号で書いた。
レイバーネット http://www.labornetjp.org/news/2017/0508isikawa

 そのサンダースは、バーモント州知事選の「万年候補者」だった1976年、い
ったん政治人生にピリオドを打ち、生活のため、教育用の映写スライドを販売
する商売を立ち上げた。小学校や高校向けに、ニューイングランドの歴史のス
ライドを書き、生産し、販売した。なかなか楽しかったという。
 しかし彼が話したほとんどの大学生がユージン・デブスのことを知らないこ
とが分かったので、デブスの生涯と考え方についての30分のビデオを制作した。
大好評だったらしい。
 それでデブス以外のアメリカ急進派のビデオ・シリーズを企画するが、1981
年のバーモント州バーリントン市長選挙戦出馬とその勝利によって、政治人生
に戻ることになり、その結果ビデオの制作は終止符を打った。
 それでも、サンダースは「デブスは私のヒーローだ」と公言し、ユージン・
デブスを記念して作られた額を、いまでも自分のワシントンの事務所の壁にか
けているという。

 では、それほどサンダースが敬愛してやまないデブスとは何者か。
 ユージン・デブス(1855年〜1926年)は、17歳の時に鉄道機関士となり、2
年後の1874年に組合活動を開始。現場労働者からのたたき上げの魂を持った組
合指導者としての品性は終生変わらなかったという。
 1893年にはそれまでの保守的な組合を離脱し、アメリカ初の産業別労働組合
となるアメリカ鉄道労働組合をシカゴで創設、デブスが委員長に選ばれた。し
かしデブスらの反対にもかかわらず、組合員から黒人を排除する規定を削除で
きなかった。
 それでも、翌1894年のグレート・ノーザン鉄道での激しいストライキを指導
し、勝利に結びつけたことは伝説となっている。しかし、その後のプルマン・
ストライキは政府・軍の弾圧によって失敗し、デブスらは逮捕された。
 また、1905年には労使協調を主張する保守傾向を非難し、世界産業労働組合
(IWW)に創設者のひとりとして参加したが、直接行動派が主流となり、デブ
スらは離脱を余儀なくされた。
 その後、第一次世界大戦においてデブスは労働者階級の国際連帯を信じ、戦
争に反対したため、10年間の禁固刑で投獄された。
 デブスは、「私は資本家の兵士ではない。資本家階級の利益のための従軍に服
従することを拒否する」、「自分は1種類の戦争だけを、つまり社会主義の勝利
をめざす内乱だけを承認する。1セントでもアメリカの軍事費に賛成投票するよ
りは射殺された方がましだ」と宣言している。
 1920年、デブスはふたたびアメリカ社会党に擁立され、獄中から大統領選に
出馬し、100万票近くを獲得した。大統領選挙に6回も挑戦したことになる。

 デブスらの闘いは国際的な注目を受けた。
 ロシア革命の指導者レーニンは、「アメリカ社会主義者のもっとも人望ある指
導者で、アメリカ社会党の共和国大統領候補であるユージン・デブス」、「アメ
リカ労働者に愛される指導者、アメリカのべーベル、同志ユージン・デブス」
と賞賛している。とくに、第1次世界大戦勃発で、多くの同志がそれまでの革
命的立場を放棄して、雪崩を打って祖国防衛・社会排外主義派に転向し、第2
インターナショナルが崩壊する時期にあればこそ、「ユージン・デブスのように、
きたるべき戦争と結びつけて、社会主義のための内乱を公然と説く社会主義者
が、現れている」と述べている。

 このような思想と行動のユージン・デブスを「私のヒーロー」と公然と賞賛
し、支持し、その考え方を広めようとするバーニー・サンダースにこそ注目す
べきではないか。
 そういう人物が昨年、大統領選挙において青年層の強力な支持をかちえたと
いう事実にこそ注目すべきであろう。
 アメリカ労働者人民の革命ののろしは決して消え去ることなく、脈々とつな
がり、燃え広がろうとしている。(石)

Created by staff01. Last modified on 2017-06-06 16:04:26 Copyright: Default

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