本文の先頭へ
LNJ Logo 小倉利丸ブログ : 英国のテロ: 首相は何を知っていたのか?
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1496370157716st...
Status: published
View


小倉です。表記のエッセイを訳しました。ブログをご覧ください。以下、
前書きのみ。
http://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/2017/06/02/terror-_in_britain/

以下に訳出したのは、Counter Punch に掲載されたジョン・ピルジャーによるマンチェス
ターの「自爆テロ」についてのエッセイである。日本では、共謀罪がテロ対策を口実に国
会でも成立の瀬戸際という危うい状況にあることを念頭に訳したものだ。

ピルジャーは、マンチェスターの事件を対テロ戦争が引き起した帰結であるとはっきりと
指摘している。特に、英国がリビアに対して行なった軍事介入における戦争犯罪(多数の
民間人が破砕爆弾やクラスター爆弾の犠牲になった)と、カダフィを排除するためにイス
ラム主義者たちを利用してきた軍や諜報機関を批判する。英国のみならず米国やフランス
も含めて、かつての植民地諸国を支配・従属しつづけようとする野望のために、西欧「帝
国」の国益のためにイスラム主義者を使い捨ててきた歴史を視野に入れなければ「テロ」
の問題は答えを見出せない。

日本も含めて、西側諸国は、みずからの歴史的な植民地支配とポスト植民地主義(新自由
主義的な支配)に内在する国家の暴力や犯罪を一切反省することなく、こうした自らの犯
罪を棚上げして「正義」の側に、彼らが「テロ」と呼ぶ対象を「悪」の側に分類する単純
な善悪の構図に大衆の心情を動員する。かつての植民地地域を現在に至るまで支配・従属
させつづけようとする野望と米国のような新たな帝国の野望をアフリカに抱く諸国との複
雑な利害を背景にしながらも、「テロ」については、その表面的な現象だけを歴史的文脈
から切り離して取り出し、あたかも理解しえない非人道的な行為であるかのように決めつ
けて報復と厳罰化を正当化しようとしてきた。日本も含めて西欧諸国は、そもそも「テロ
」を理解することを拒否し、「テロ」に関連すると彼らが考える社会集団を網羅的に監視
して敵視し、排除し、基本的人権を剥奪し、ときには国外に追い出し、同時に、彼らの母
国には軍事介入して内戦を助長する。

「テロ」には歴史的社会的な文脈がある。しかし、「テロ」を理解することは、この文脈
に触れることになる。このことは、同時に、国家が隠蔽してきた権力犯罪、彼らがたって
きた、「テロ」に帰結せざるを得ないほどのその何倍、何十倍にもなる殺戮と支配の歴史
を明みに出すことになる。だから、「テロ」は理解ではなく無条件に「悪」のレッテルを
貼って、根絶やしにしたいのだ。こうした経緯はピルジャーのこの短かいエッセイからも
十分読みとれると思う。

同様に私たちは、共謀罪の立法事実として政府が持ち出す「テロ」をめぐる言説を、日本
の植民地支配の時代から対テロ戦争における米国の侵略への加担に至るこの国の国家犯罪
との関わり抜きには理解すべきではない。日本がテロの脅威に晒されるのであれば、それ
はテロリストと名指された「敵」の理不尽で理解を超えた「悪」の問題だと片付けるので
はなく、テロを誘き寄せることになった(なるであろう)この国の不合理で理不尽な対外
政策や覇権主義、排外主義という、この国の犯罪にも目を向けなければいけない。こうし
た国家犯罪や「経済進出」や「援助」なる言葉でごまかされてきた資本の犯罪が隠蔽され
正当化されるだけでなく、さらに、対テロ戦争の泥沼に今以上に足を踏み入れることこそ
が、「テロ」を招き寄せる根源にある。

日本はかつての植民地支配や戦争責任はおろか、イラク戦争以降の戦争への加担と責任す
ら明確に自覚せず、きちんとした検証すら行なっていない。こうした日本の国家犯罪を文
字通り放免する構造を共謀罪はより一層強化するものとして導入されることになる。戦前
も含めた歴代の支配者たちの犯罪を見逃してきた責任は、この国の主権者にある。近代日
本の侵略を国家犯罪としてきちんと処理し、対テロ戦争から撤退すること、日米同盟から
離脱し、自衛隊を派兵せず解体すること、文字通りの意味での「非武装中立」という戦後
反戦平和運動の基本原則に立ち返ることが、「テロ」対策の唯一の選択肢だろう。しかし
こうした原則的な議論が国会の場ではもはやほとんど聞かれなくなっている。

ピルジャーのこの短かいエッセイは、日本のわたしたちがこの国の「テロ対策」や対テロ
戦争について何を考えるべきかを示唆してくれると思う。

本文は下記をごらんください。
http://www.alt-movements.org/no_more_capitalism/2017/06/02/terror-_in_britain/

Created by staff01. Last modified on 2017-06-02 11:22:40 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について