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帰る人も帰らない人もどちらも被害者〜『終の住処を奪われて』上映会

    堀切さとみ

 12月3日、さいたま市で『終の住処を奪われて』の上映会が行われた。映画の 主人公である、福島原発被害東京訴訟団長の鴨下祐也さん(写真)を招いて話を伺った。主催は「原発問題を考える埼玉の会」。隔月で学習会を重ね、この日は24回目だった。

 東京訴訟団は、国と東電の責任を追及する300人が原告になっている。そのほとんどが、国が決めた避難区域の「外」からの避難者だ。彼らはなぜ避難しているのかを自力で説明しなければならない。その理不尽と闘い続けてきた。

 鴨下さんは家族四人でいわき市に暮らし、福島高専で理科を教えていた。屋上で野菜の水耕栽培をし、地域と年を結びつける農業を目指した。だが、事故が起きて鴨下さんは一家で避難するが、そのいわき市は3・11以降、一度も避難指示が出されたことはない。事故から一か月後、子どもたちは学校に通い、人々は普通に買い物をし、新たに家を建てる人もいて、フツーに見える。だから「子どもを守りたい」という思いで避難した人は「神経質な人」にみられてしまう。


 *原子力財団が出していた広報誌「アトムふくしま」には、野菜の測定結果が載っていたが、3・11後発行されなくなった

 鴨下さんは、お母さんたちの不安感情を裏付ける客観的なデータを示し、避難の必要を訴えてきた。いわき市の家は、今も高いセシウムが計測される。水耕栽培していた野菜からも高い値が出る。が、テレビでは放送直前になって「数値はオンエアできません」と伝えてきた。それは一度や二度ではなかった。だから映画に出ることにしたのだという。

 今年の春には、今まで避難区域だった地域が、次々と解除された。そして区域外避難者への住宅「支援」が打ち切りになった。「埼玉の会」に参加する人の中には福島からの避難者も多く、心が揺れている。


 *映画のシーンから

 会場から、福島高専出身だという男性が「自分は、いわき市は住めない場所ではないと思ってる」と発言した。それに対して私(筆者)は「じゃあ、あなたは何で住めると思ってるんですか?」と聞いてみたが、答えはなかった。

 南相馬市から避難している元教師は「危険なレベルだっていうのはわかってるけど、帰りたいんだよなあ」と言う。「オレはあとニ、三年しか生きないからいいんだよ」と。鴨下さんは「高齢者が一人で帰れるわけではないでしょう。必ず介護する若者や子どもも、一緒に帰ることになる」と言い切った。「世代間倫理」という言葉を思い出す。子どもたち、次の世代に何を遺すべきかを本気で考える必要があるのではないか。

 そして、鴨下さんはいう。避難した人もとどまる人も、帰る人も帰らない人も、どちらもが被害者なのだ。加害者である国が、避難者を「支援する」というのは間違っている。加害者は被害者に対して「責任をとる」。この軸を見失ってはならないと。

※DVD『終の住処を奪われて』(遠藤大輔監督・37分)は1000円(上映権付は5000円)と価格もお手頃です。ぜひ地域での上映会をオススメします。


Created by staff01. Last modified on 2017-12-06 21:08:28 Copyright: Default

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