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バンクーバーで「平和の白いポピー」の式典〜市民犠牲者たちを追悼

    長谷川 澄

 カナダなど英連邦の国々では、第一次世界大戦の戦闘が終結した11月11日を「記憶の日(Remembrance Day)と呼んで、自国の参戦した戦争で、戦死した兵士を悼む日とされ、式典などもあります。第一次大戦の大きな戦闘地、フランダースの野に、そこで斃れた兵士たちの血の色のような真っ赤なポピー(ひなげし)が、野原一面に咲き乱れたという詩から、この日は、胸に赤いポピーの造花を付ける人が多く、テレビのアナウンサーや、政治家などは殆ど皆、付けているし、駅などでは、退役軍人の老人たちが造花を売っています。軍隊は一般市民を守るものではなく、国家とその支配層を守るためにあると信じている私には、ちょっと居心地の悪い日ですが、勿論、ポピーは付けず、老人に差し出されても「いいえ、私は付けたくないのです」ときちんと言うようにしています。

 この「記憶の日」の赤いポピーは、英国で1920年代から始まった習慣ですが、その数年後には、ノーモア戦争の強いメッセージを込めて、白いポピーを付ける運動も英国で始まりました。自国の軍隊の戦死者だけでなく、全ての戦争被害者を悼む、戦争を美化せず、平和の文化を推進するという3つの主張を元にした運動は、今も続いています。“現代の戦争、紛争の被害者の90%は一般市民であるから、市民の死者も兵士もいっしょに悼まなければいけないし、兵役を拒否したり、戦争に反対して、拘束されたり、殺害された人も勿論、戦争の被害者として悼まれるべきである”ことが、Peace White Poppyのウェブページには書かれています。

 カナダにもこの平和の白いポピーの運動は早くから入って来たのですが、退役軍人会などから強い反発を受けて、英国のような大きな運動にはなっていないのが現状です。そして、退役軍人からの反発を避けるためか、戦争の美化、戦死の英雄視をしないという点は強調せず、“戦争の被害者の全てを記憶すること、戦争による環境破壊にも思いをよせ、戦争という手段で社会を変革することを拒否し、平和的な話し合いによる紛争の解決を呼びかけ、より良い未来を築くことに専心すること”を運動の柱に据えています。

 国土を爆撃されたこともなく、軍隊が外国に行って、戦死者が国旗に包まれて、帰って来るのをテレビで見ている人たちは、戦死者は、国のために自分の命を犠牲にした人と思ってしまうのかなと私は考えています。でも、カナダにはベトナムのボートピープルだった人も、イラク、アフガニスタン、シリアなどからの難民、移民も何万人もいるのです。国旗に包まれるどころか、誰の体か分からないほどに、ばらばらに飛び散った死体などを見てきた人がすぐ隣にもいるのですから、その人たちと知り合い、話を聞くことで、カナダ人の戦死に関する考えも変わって行くだろうとは思いますが、多分時間がかかるのでしょう。

 とにかく、白いポピーの運動は、大きくはなくても続いてはいて、今年バンクーバーでは、11月11日に、去年に続き、2回目の“世に広く知られてはいない戦争、紛争の市民犠牲者たちを悼み、花輪をささげる式典”が「バンクーバー平和のポピー」と「BCヒューマニスト協会」の共催で、市の公園で行われました。花輪はバンクーバーの種々の団体から、記憶されるべき犠牲者たちへのメッセージをつけて捧げられました。

 バンクーバー9条の会は“広島、長崎の原爆被害者”へ花輪を捧げましたが、“米国の原爆の犠牲となった、日本人、朝鮮人、その他の国籍の人、捕虜となっていた連合国兵士に捧ぐ”と明記された、行き届いたものでした。他には、南京虐殺の犠牲者、パレスチナ紛争、シリア、イエメンの市民被害者、多くの子ども兵士たち等々、第一次大戦の後も、人間社会がどれだけ多くの戦争、紛争による被害者を生み続けて来ているかをまざまざと示す、数々の花輪だったようです。その中で、乗松聡子さんの主宰する、ピースフィロソフィーセンターからの花輪のメッセージに私は強く心を打たれました。花輪に付けたメッセージは英語ですが、乗松さん自身が日本語に訳してくださったものを以下に添付します。

ーー●ピースフィロソフィーセンターからのメッセージーーーーーーーーーーーーーーーー

 この花輪は、大日本帝国(1868−1945)の植民地支配、侵略戦争、弾圧、搾取による何百万、何千万の民間人の被害者に捧げます。これらの残虐行為には、殺害(大規模のものから小規模のものまで)、強姦、略奪、性奴隷、強制労働、徴兵、強制自殺、追放、強制同化、差別、貧困、医学実験、生体解剖、不法な逮捕、投獄、拷問、処刑、他の暴力、虐待や人権侵害などが含まれます。被害者は、アイヌ、琉球諸島、朝鮮半島、中国、台湾、樺太、千島列島、香港、フィリピン、マレーシア、シンガポール、インドシナ、タイ、ビルマ、インド、インドネシア、ティモール、ニューギニア、グアム、北マリアナ諸島、マーシャル諸島、他の太平洋の島々、そして日本の人々などです。この花輪はまた、捕虜として虐待されたり殺されたりした人たち、また、日本国内で戦争に反対した人たちを含む大日本帝国に抵抗し闘った人たちも記憶します。

2017年11月11日
  ピース・フィロソフィー・センター
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 このような花輪が日本の8月15日の式典にも飾られる時が来たら、多大な被害を受けたアジアの国々や、沖縄やアイヌの人たちと真の和解、理解ができるだろうと思います。そういう時が来るまで、私たち普通の市民こそがこのことを記憶し、哀悼のメッセージを発信し、日本の現在と将来に対する責任を考えていきたいとも思いました。(カナダ・モントリオール在住)


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