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<木下昌明の映画の部屋 236回>
●ティエリー・フレモー編集、監督『リュミエール!』

遊び働く姿から風俗まで〜「映画の父」リュミエール兄弟の映像

 ティエリー・フレモー編集、監督の『リュミエール!』に目をみはった。

 “映画の父”と呼ばれたリュミエール兄弟の108本のシネマトグラフ。映画といっても、いまだ写真の延長でしかなく“動く写真”と呼んで、1作約50秒と限られていた。今日の映画のようなドラマ仕立てでなく、ありふれた日常を切りとったものにすぎなかったが、それでいてなんとドラマチックなことか。しかもこれらの撮られた約120年も前の世界――各国の街の風物や人々の遊び働く姿から風俗まで、昔々が鮮明によみがえってくるからすごい。

 最初の作品は、リュミエールの写真用品工場の従業員を撮った『工場の出口』。彼らの帰宅する模様をとらえたものだが、ドキュメントではない。強い日差しの下で撮られていること、短時間でゾロゾロ工場から出てくること、着飾っている人々が多かったことから推察すれば、撮影に合せた日常の真似(まね)事とわかる。つまり、これは科(化)学技術の発達に合わせた演出で、これが映画の原点となった。『工場の出口』は3バージョンあるが、どの作品も違っていて、馬車まで登場する作品もあるからシュールだ。どんなに現実を映しとったようにみえても、映画はフィクションなのだと教えてくれる。

 よく知られた『列車の到着』だって何バージョンもある。最初の『ラ・シオタ駅への列車の到着』では、画面奥から迫ってくる列車に、観客はゾッとしたというが、この時のホームの乗客はリュミエール家の人々が扮(ふん)していたという。

 個人的には、川で洗濯する女たち(洗濯工場か?)の頭上の道路を馬車が走り去る異なった二つの日常をひとつに収めた作品にひかれた。そこに映画的魅力があった。

 リュミエール兄弟は生涯1422本作ったとされるが、それらは撮影=映写技師を養成して世界中に送り込み、そこで撮影したもので、兄弟は「工場」の製品を売り込む商売人でもあった。(『サンデー毎日』2017年11月5号)

※10月28日より東京都写真美術館ホール他全国順次公開

〔追記〕「3分ビデオ」をつくる人は大いに参考になるのでは!


Created by staff01. Last modified on 2017-11-01 10:57:45 Copyright: Default

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