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「イヤなものはイヤ、おかしいことはおかしい」〜不起立教員・梅原聡さんが講演

 7月1日、「君が代」解雇をさせない会の講演会が東京・中野で開かれた。30人が参加した。ゲストは、元大阪府立高校教員、梅原聡さん(写真)。今年3月、「君が代」不起立を理由に、再任用を拒否された。大阪府では2011年(大阪市では2012年)に、教職員に「君が代」の起立斉唱を義務付ける「君が代」条例が制定された。2012年には、職務命令違反3回で分限免職になる職員基本条例も制定された。以後、職務命令違反で61人が処分されている。

 梅原さんも、2012年の卒業式で不起立をし、戒告処分を受けた。梅原さんは、それまで「何となく“君が代”で立つのはいやだっただけ」だという。しかし、条例が制定され、子どもに歌わせるための強制が迫ったとき「これはありえない」と思い、不起立を選択した。校内ではただ一人だった。

 卒業式当日、大阪・維新の会の府議が列席した。府議は、梅原さんの不起立を見て「ルールを守らない教員がいてごめんなさい」と挨拶、その後、自身のブログに「残念な卒業式」というタイトルをつけ、梅原さんを再度批判した。このブログを見た卒業生、保護者の怒りはすごかった。「あやまるべきは、卒業式を台無しにした府議だ」「ここまで育ててくれた最高の恩師をけなされて黙っていられない」「残念な卒業式ではなく、最高の卒業式だった」などのコメントが相次いだ。

 梅原さんは、府議の行動を見て、「こんな国になってしまった。黙っていてはいけない」という思いを強くした。卒業式の前に生徒たちには、自分が不起立すること伝えていた。しかし、わかってくれる生徒もいたが、そうでない生徒もいた。卒業式が終わってから、自分の気持ちを文書にし、二か月ほどかけて一人ずつ宛名を書いて出した。

 反応は手紙やメール、電話であった。ある卒業生は次のように書いてきた。「物事が知らぬうちに当たり前になり、おかしい事をおかしいというと罰せられる世の中になってしまったような気がします。きちんとおかしい事をおかしいと行動できた先生をとても尊敬します。私も、おかしい事をおかしいと言える大人になりたいです」

 その後、入学式・卒業式から排除された。梅原さんは、自分の気持ちをビラにして卒業式後に配った。当日、ある生徒からの手紙が下駄箱に入っていた。「国歌はうたわれるべきものだと思います。しかし“歌うべきでない”という人もいる。それを無視した条例には反対です。信念をもって闘いぬいてほしいです。ビラがきっかけで、自分で考え、答えを見つける第一歩を踏み出せたような気がします」。

 2014年にはどうにか式場内に入ることができた。この年は、卒業生の木村ひびきさんと一緒の不起立になった。ひびきさんは、式前に校門の前で、不起立への自分の気持ちを書いたビラを配った。彼女の行動はまわりの生徒たちに受け入れられ、メディアにも取り上げられた。「ひびきさんとの出会いは、自信になったし、これからもやろうという気になった」と梅原さんは語る。教員と生徒が支えあっての「君が代」不起立だった。

 2012年の処分後、担任からはずされた。生徒たちにどう訴えたらいいかと悩んだ。そこで、自己紹介のとき、処分撤回の裁判をしているとか、憲法記念日には、12条(自由権及び人権を保持する義務)に関連して、「自由だと思っていても、がんばらないと取り上げられる」と話して、自分の思いを伝えた。最初は問題にされるのではと心配したが、杞憂におわった。

 2014年、梅原さんは、大阪弁護士会に人権救済を申し立てた。木村ひびきさんも一緒だった。2016年、弁護士会は、条例や職務命令で国歌の起立斉唱を求めることは思想・良心の自由を侵害していると認定、府教委などに対し人権を侵害しないよう勧告した。

 今年、梅原さんは定年を迎えた。再任用に当たって、校長から「起立斉唱の職務命令に従うかどうか、“はい”か“いいえ”で答えよ」と言われた。「そのような問いには答えられない」と言うと、不合格になった。教員の定年は60歳で、年金支給の65歳までほとんどの教員が再任用されている。不起立で再任用されなかった教員は、大阪では少なくとも7人いる。今後、梅原さんは、人権救済の申し立てをテコに不合格の撤回を求めていく。

 再任用を拒否され、生徒・同僚との場を奪われた梅原さんだが、学校前でのビラ配布は、相変わらず続けている。「イヤなものはイヤ、おかしいことはおかしい」。これが梅原さんが生徒や同僚に届けたいメッセージの原点だ。(佐々木有美)

*この講演は、河原井さん根津さんらの「君が代」解雇をさせない会の総会第二部で行われたものです。


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