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2016わたしの一冊に寄せられたアンケート

放送アーカイブ(68分)

以下は、レイバーネットTV第112号放送「2016わたしの一冊〜本の発見」に寄せられた「わたしの一冊」アンケートです。到着順です。(推薦者・本タイトル・著者・発行所)です。

1、フクシマ陽太郎
『夢の夜から口笛の朝まで』(丸山健二・左右社)

作者が書下ろしの作品だけを発表して以来十数年になる。あえて小出版社から出版して数年。どんどん読者を振り落すように抽象的な語句を主体に描くようになった。実に難しい。しかし、読後には人間とは何か、世界とは何かという難問についての問いを読者が自分のものとする深い感動に襲われる。軟弱でナルシズムばかりの文壇小説にはない醍醐味が味わえる。

2、ジョニーH
『永遠平和のために』(カント・集英社)

国連や憲法第9条が生まれた「16歳からの平和論」の復刊にあたる著書で。はじめに藤原新也の写真とともにカントの言葉が載っていて、子どもやそのレベルの大人に「平和」について語るときのヒントになる。「平和というのは、すべての敵意が終わった状態をさしている」から始まる。

3、小泉綾子
『モチモチの木』(斎藤隆介 作/滝平二郎 絵・岩崎書店)

子どものころ母親が読んでくれ、大人になって自分で読み、母親になって子どものために読みました。そしてまた今、自分で何度も読み返している絵本です。

4、松原明
『三六〇〇日の奇跡 「がん」と闘う舞姫』(吉野ゆりえ・かまくら春秋社)

木下昌明さんのドキュメンタリー『がんを育てた男』をつくった直後に、友人から稀少がんの肉腫で「5年生存率7%」から奇跡の10年生存を達成した吉野ゆりえさんのことを聞いた。さっそく読んだのがこの吉野さんの手記。19回の手術、5回の放射線治療をやり抜くのだが、けっして「闘病記」ではない。吉野さんは治療法を選択し、とにかく前向きに日々を生きる。「生存率7%に自分が入りもっとその数字を伸ばすのだ」と。告知後の10年間で、彼女は日本初のブラインドダンス大会開催や「サルコーマセンター」の設立を実現した。そしてことし7月に48歳で亡くなった。人間のすごさと勇気、どんな状況でも前向きに生きることの大切さを教えてくれた本だった。

5、白石孝
『止めよう!市民監視(アベノリスク)五本の矢』(海渡雄一編・盗聴法廃止ネットワーク)

監視社会マターを分かりやすくオムニバスで説明しているうえ、安いので買いやすい。私も執筆している。

6、山口正紀
『真実〜私は「捏造記者」ではない』(植村隆・岩波書店)

日本軍「慰安婦」制度被害者だったことを名乗り出た韓国女性の訴えを日本の新聞で初めて記事にした記者が20数年後、歴史修正主義者らによって「捏造記者」のレッテルを張られ、すさまじいバッシングを受けた。本書は、ジャーナリストの誇りをかけて歴史修正主義・右派メディアと闘う記者の渾身の闘いの記録。

7、長谷川澄
『チェルノブイリの祈り』(スベトラーナ・アレクシエビッチ著・岩波書店)

チェルノブイリ原発事故の10年後に著者が事故処理に駆り出されて亡くなった消防士の遺族や、汚染地にとどまり続ける老婆、等々から丹念に聞き取ったことでつづるドキュメンタリーです。10年たっても、昨日のことのように事故の前後のことを詳細に語っている のに、その人の人生はその10年で全く別なものになってしまっている、そのことが読む者に強い衝撃を与えます。福島は事故の起き方が違ったから、事故後2,3週間で亡くなった作業員はいなかったかも知れませんが、米海兵隊の被災者のことから考えて、受けた線 量が多くて、仕事を止めさせられた作業員のその後がとても気になります。

8、白沢 正
『ルポ 雇用なしで生きる』(工藤律子・岩波書店)

ワーカーズ・コレクティブ(労働者協同組合)というものをこの本で知りました。他にも時間銀行とか、読むと労働や社会についてとてもイメージがふくらみます。

9、杜 海樹
『水木サンの幸福論』(水木しげる・角川文庫)

幸福の7ヵ条 第1条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない・・・。水木氏から次の世代へのメッセージかも。

10、森井久美子
『「知」の欺瞞』(Alan Sokal & Jean Bricmont・岩波書店)

小泉総理大臣の「勝ち組負け組成果主義」の絶叫以来、国民のモラルは地を這うようになってきたが、安倍総理大臣にいたって、加えて欺瞞とご都合主義にもとづく国粋主義・利己主義が深く浸透してきている。それは経済界だけでなく、軍学共同のように研究者の世界をも侵しているものであり、国民をも汚染している元凶である。この本はそれらの基礎となっている人文・哲学の貧困を教えてくれる。イギリスのEU脱退、アメリカのトランプ大統領の出現など、世界の転変期に役立つ1冊だと思う。

11、正木斗周
『日本劣化の正体』(佐藤栄佐久・ビジネス社)

収賄額0円で有罪とされた「抹殺」元福島県知事。原子力ムラがどこまで悪辣であるかということを、地方自治の立場からきわめてリア ルに示してくれている。

12、黒鉄 好
『この経済政策が民主主義を救う』(松尾匡・大月書店)

2016年、読んだ本では最もおすすめ。安倍政権に対抗すべき左派勢力が、旧民主党のように緊縮財政や増税を訴えたのでは勝てない。ではどうすればいいか? を論じた本。左派こそどんどんお札を刷ってお金を作り、財政出動で福祉、教育、医療に充てよ、安倍政権よりもっと派手に財政出動することが左派の勝つ秘訣と訴える。 ヨーロッパで反緊縮の嵐が吹き荒れたことを見ても、小さな政府を目指す新自由主義の時代は完全に終わりを告げた。日本でいつまでも自民党に対抗できる勢力が現れないのは、弱者を救済する真の意味で社会民主主義的な勢力が弱小だからだ。そんな社民主義勢力を「一流の経済政策」をもって自民党に代わる選択肢に押し上げるための処方箋が詰まっている。

13、林田英明
『誰がこの国を動かしているのか』(鳩山由紀夫/白井聡/木村朗・詩想社)

鳩山友紀夫、白井聡、木村朗3氏の鼎談が、「対米従属」の戦後構造を暴き出し、権力とメディアによる情報操作を打ち破る力を与えてくれる。廉価な新書で読みやすく、核や沖縄などを題材に、タイトルの内実を解き明かす。鳩山政権を崩壊させたのが、普天間移設にからんで官僚が捏造したと思われる「極秘」文書というのにもうなった。

14、根本道夫
『私物国家』(広瀬隆・光文社)

日本の闇の系譜がよくわかります。

15、飛幡祐規
『いのちと責任』(李孝徳編・大月書店)

親鸞の研究者の高史明(こうしめい/コ サミョン)と西欧哲学研究者の高橋哲哉の対談は、2010年?2012年、3.11をはさんで4回行われた。アジアと世界における日本の歴史と現在の日本社会を考えるのに、とても大切な示唆をたくさん与えてくれる。深い思考と誠実な言葉がつむがれている。

16.笠原眞弓
『ヒロシマを伝える』(永田浩三・WAVE出版)

これは、永田さんの前著『ベン・シャーンを追いかけて』に続いて『奄美の奇跡 「祖国復帰」若者たちの無血革命』を読んだ方四國五郎の子息光さんからの連絡から世に出た本。『はだしのゲン』の騒ぎがきっかけで、学生たちとヒロシマを私たちはどう伝えてきたか調べる中で出会った人。進駐軍の隠蔽の中で、したたかに伝えてきた人たちを掘り起こしている。NHK広島支局に持ち込まれた1枚の絵から始まった「市民が描いた原爆の絵」は4006枚になり、その中心的な人の一人が四國五郎だった。その人を軸に大田洋子、峠三吉、山代巴、正田篠江、栗原貞子、大江健三郎など多数の私の知っている人知らない人が網の目のように絡まりながら紹介されていく。その真ん中に四國が据えられているのだ。今のジャーナリズムの危機を意識し、弾圧の中でいかに発信していったかをつづっている。

17、堀切さとみ
『魂の退社』(稲垣えみ子・東洋経済新報社)

会社を辞める・・・これには勇気が必要です。この本の著者は、朝日新聞社をこの春50歳で退社した、アフロヘアの女性記者。会社に縛られまいと、収入も名声も捨て、すべての電化製品を捨てたアパートで暮らしています。「もったいない」という周囲の言葉を振りきって会社を辞めてから、この国がいかに会社中心社会であるかを思い知るのですが、挫折と希望が半分半分というのがよい。先行きの見えない中、筆者と同学年の私は、わが身に照らしつつ熟読しました。

18、渡辺美紀子
『颶風の王』(河崎秋子・角川書店)

馬とともにきびしい自然に生きる明治から平成まで6世代を描いたスケールの大きい作品。著者が羊飼いであることも興味深い。

19、指宿昭一
『安全な翼を求めて』(山口宏弥・新日本出版社)

航空産業において労働組合が「安全の砦」であることを明らかにしたドキュメンタリー。

20、井内誠司
『オール・イン』(天野貴元・宝島社)

著者は小学生時代に「将棋の神童」と呼ばれ、プロを目指し、あと一歩まで届きながらも夢破れる。さらに27歳で「ステージ4」の舌癌と診断され、舌の切除手術受け言語障害に。本書はそれまでの人生と心境をつづるが、過酷な運命にもかかわらず筆致に湿り気がなくそれが読者をひきつける。人生の価値は勝ち負けではないことを改めて教えてくれる一書。
※なお、著者は本書刊行の翌年に逝去。最後まで将棋に挑む姿はテレビドキュメンタリーとして放送され、現在、ネットで見ることが出来る→https://www.youtube.com/watc h?v=XP3TQPv7wRQ

21、見雪恵美
『教えられなかった戦争・沖縄編』(製作・上映委員会編)

教えられなかった戦争・沖縄編、フィリピン編、マレー編のうちの1つ伊江島の基地、沖縄の基地問題、日米同盟(日米安保)について、わかりやすく解説されてます。阿波根昌鴻さんを、はじめ、32ページには、田中正造さんのことも、少しふれてます。マスコミの取材は、よく来るそうですが、政府の威圧で、ボツになることが、多いそうです。日米安保を、考える上でも、マスコミが伝えないことにおいても、是非、お読みいただきたい、1冊です。

22、甲斐織淳
『まさかの福澤諭吉』(作:雁屋哲 画:シュガー佐藤・遊幻社)

「福澤諭吉はわが郷土・大分の生んだ偉人」と子供のころから教えられてきました。しかし、足尾銅山鉱毒事件に際し、諭吉は加害企業と政府を擁護し、救済を求める被害者農民の請願行動に対し「断固たる仮借なき処分」を要求しました。そして、農民の請願行動に対し警官隊と憲兵隊が襲撃するという近代日本史上特筆すべき暴力的な言論弾圧事件が引き起こされます。いったいどこからこのような諭吉の言動が出てくるのか、その謎を解き明かしてくれるのがこの漫画本です。「天は人の・・・」は諭吉の言葉でも思想でもないことには、驚きました。てっきり「諭吉の言葉」だと錯覚していました。アジア諸国に対する諭吉の差別的、植民地主義的思想は目を覆うばかりで、「ヘイトスピーチの元祖」だったのです。「貧富の格差にはめをつむって忍び、大富豪をますます富ませ、対外国との商戦に備える」というのは、安倍政権の「大企業減税、国民重税」「格差社会の容認」、原発被害者の切り捨てと原発産業の発展を目指す政策の思想的背景となっています。安倍晋三の首相就任演説の冒頭、福沢諭吉の引用から始めたのは偶然ではないのです。このような男を一万円札に使っているのは、近隣アジア諸国に対して、失礼千万です。私達日本人が、植民地主義やあの戦争を全く総括していないということを宣伝しているようなもので、これは恥ずべきことではないでしょうか。この本は、福沢諭吉という人物を媒介として日本近代史を振り返る、絶好の材料を提供してくれたと思います。

23、木下昌明
『暴露―スノーデンが私に託したファイル』(グレン グリーンウォルド・新潮社)

オバマ政権を震撼させたスノーデン事件を内部から暴露し、告発したドキュメント。先ごろ、ローラ・ポイトラス監督の『シチズンフォー〜スノーデンの暴露』が日本でも公開された。また来年2月に公開されるオリバー・ストーン監督の『スノーデン』。これらをみる上でとても参考になり、刺激をうけた。何しろ、一国の政権を相手にたたかったスノーデンの信念はどこから生まれたかといえば、ビデオゲームだったというから驚きだ。やはり『君の名は。』時代は、インターネットのゲーム感覚を身につけた中で生まれる!と教わった。


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