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「集団的自衛権にNO!」閣議決定も、行使のための法改定も許すな!〜「かながわ集会」に8000人

                      西中誠一郎

 2月21日、横浜の山下公園で「集団的自衛権にNO! かながわ大集会」(主催:横浜弁護士会 共催:日弁連、関東弁護士連合会、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会)が開催され、8000人を超える弁護士はじめ市民が集まった。

 昨年7月1日、安倍政権は国会閉会直後に「集団的自衛権」を閣議決定した。日本国憲法が1947年5月3日に施行されてから、歴代内閣が認めなかった「集団的自衛権の行使」をたった一回の閣議決定で容認し、武器輸出三原則も撤廃した。日米ガイドラインの見直しや、集団的自衛権を行使するための関連法の改正を、安倍政権は今春の統一地方選挙後に国会に上程すると、目されている。

 「集団的自衛権」を巡る露骨な解釈改憲の動きに対し、日弁連はじめ全国各地の弁護士会は、立憲主義に反するとして、「集団的自衛権行使容認に反対する全国一斉行動」を昨年12月から続けている。

 21日の新聞朝刊は「政府は20日、新たな安全保障体制整備のための与党内の協議会で、朝鮮半島有事を想定した『周辺事態法』を改正し、自衛隊派遣の地理的な制約を撤廃する考えを打ち出した。また他国軍の後方支援のための海外派遣を、『特措法』に寄らず、随時可能とする『恒久法』の制定を提示した」(「東京新聞」、「神奈川新聞」等)と大きく報じた。それだけに会場には、「集団的自衛権にNO!」の熱気が渦巻いた。

 主催者代表の横浜弁護士会会長の小野毅(たけし)氏は、「憲法の基本原則である『平和的生存権』が、安倍政権によって脅かされている。19世紀のドイツの法哲学者イエーリングは「世界中の全ての権利は闘い穫られたものである。権利は単なる思想ではなく、生き生きとした力なのである」という趣旨のことを述べている。権利を実効的にするためには、市民が権利を闘い穫らなければならない。『集団的自衛権にNO!』という大きな声を上げて、平和的生存権という基本的人権を勝ち穫ろう」と挨拶した。

 続いて、同志社大学大学院教授の浜矩子氏が発言した。「グローバルに人とモノと金が国境を越えていく時代は、皆が繋がって、誰かが誰かに支えられている時代でもある。この時代を生きていくためには、意見の違う人に対しても傾聴する『耳』と、人の痛みや苦しみを受け止め、もらい泣きをすることができる『目』、痛んでいる人や苦しんでいる人に差し伸べる『手』、この3つが必要。しかし、安倍政権にはそれが最も欠けている。聞くことのできない『耳』、涙なき『目』、奪い取る『手』だ。必要なのは『集団的自衛権』ではなく『集団的不戦の誓い』、『富国強兵』ではなく『諸国共生』だ。『取り戻す』ものは何もない。守るべきは平和」と安倍政権の基本姿勢を切り捨てた。

 日弁連会長の村越進氏は、「法律家の最大の使命は、基本的人権の擁護。戦争は最大の人権侵害であり、人権は平和の中でしか守られない。平和を危うくする動き、戦争の危険性を高める動きには総力を上げて反対しなければならない。イラク、アフガン、シリアの現状を見るにつけ、いくら強大な軍事力をもってしても平和を構築することはできない。武力の行使はかえって憎悪と報復の連鎖を生むだけだ。恒久平和主義を掲げた日本国憲法、特に9条は世界に誇る宝です。この憲法を一政権が解釈で変えてしまう、法改正で骨抜きにしてしまうことは断じて許すことができません。

 先週から与党内協議が始まっている。まだ限られた報道だが、そこで示されている案は昨年7月の閣議決定も飛び越している。今国会で大変危険な法案が出てくる恐れがある。これを絶対に阻止しなければならない。そんな法改正を許さない声を大きくしていきましょう」と警鐘を鳴らした。

 続いて、神奈川大学法科大学院教授(国際人権法)の阿部浩己氏。「安倍政権が掲げる『積極的平和主義』、これは積極的に軍事力を用いて介入していく『積極的介入主義』の別の言い方です。『積極的平和主義』の2本柱、その第一は集団的自衛権の領域外での行使、もうひとつは他国へ軍事的な支援を行うということ。

 「集団的自衛権」の考え方は、日本国憲法や国際社会の基本的なルールである国際法の基本的な理念に反するものです。なぜか?集団的自衛権というのは、『敵と味方』という考え方を導入するからです。集団的自衛権は敵を仮想し、その敵をやっつけるための考え方。しかし日本国憲法や国際法の基本的な理念は、人間を、国家や社会を、敵と味方に分けるのではなく、ひとつの統合された社会の中で人間が共に生きていく、そのような理念に基づいてできているわけです。集団的自衛権を用いて軍事力を行使するということは、人間を『敵と味方』に分け、そのような考えを国内にも広げていく。それは人間の間の差別にも繋がっていく考え方です。

 『集団的自衛権の行使』を正当化する条件は、『生命、自由、幸福追求の権利が根本から危険に晒される場合』と言っています。基本的人権である、生命や自由や幸福追求の権利を守るために軍事力を行使するということです。人権は軍事力を行使して守られるものなのでしょうか?むしろ軍事力は人権をないがしろにし、人権を破壊する、そのような危険性を秘めているものです。幸福追求の権利を実現しようとするのであれば、軍事力を行使しない形で貢献していくことが本来的な姿だと思います。

 先ほど弁護士会長から『平和の中でしか人権は実現できない』という話があったが、さらに一歩進めて、『平和それ自体が人権だ』ということを確認する必要があると思う。集団的自衛権は人権である平和を破壊する。人間の間に分断を産み出します。差別の意識を社会に広げていく。このような集団的自衛権には、はっきりとNO!を言わなくてはならないと思います」。

 続いて国会議員が発言した。超党派「立憲フォーラム」代表の民主党•近藤昭一議員、共産党委員長•志位和夫議員、社民党副党首•福島みずほ議員の3人。

 いずれの議員も、与党が圧倒的多数を占める国会情勢に強い危機感を抱きながら、異口同音に「『憲法違反の閣議決定は撤回せよ、閣議決定を具体化する一切の法改定を許すな!』この一点で、世界に誇る憲法9条を守り抜いていきましょう」と訴えた。

 リレートークの最後に、防衛省の取材を25年間続けてきた「東京新聞」編集委員、論説委員の半田滋氏の重い発言があった。「『後方支援』について日本はすでに行ってきた。『イラク特別措置法』に基づいて、陸上自衛隊がイラクへ、航空自衛隊がクエートに派遣された。クエートに派遣された航空自衛隊は陸上自衛隊が撤収した後に、武装したアメリカ兵を戦闘地域であるバグダッドに空輸をするという任務を始めた。5年間の活動が終わり、運んだ人数を見ると、国連職員は2000人、陸上自衛官は1万名、アメリカ兵は2万3000人。

 毎回、空輸機がバグダッドに近づくと、地上から携帯ミサイルに狙われて警報音が鳴り響いて、アクロバットのような飛行を余儀なくされた。機内は乗っていたアメリカ兵の嘔吐物でまみれるということを毎回やってきた。このことは2008年4月に名古屋高裁で、航空自衛隊の空輸活動はアメリカ軍の武力行使と一体となっていて、憲法違反であると認定されている。

 このようなことをこれから本格的にやろうとしている。我が国はイラクへの派遣をしっかり検証してきたでしょうか?していません。イギリスは当時のブレア首相を独立調査委員会に呼んで、証言をさせている。オランダも独立調査委員会がすでに結論を出していて、違法な戦争だった。すなわちアメリカが、フセイン政権が大量破壊兵器を隠し持っていると嘘をついておこなった違法な戦争だったと、オランダ政府が結論を出している。しかし日本は外務省が少しだけ内部調査をしただけで、その全容は公表されていないし、独立機関による検証も行われていない。

 このイラク派遣から戻ってきた陸上自衛官、アメリカ軍から離れたところで、『非戦闘地域』で人道支援を行った。PKOと同じように、道路を直したり、給水をしたりした。『非戦闘地域』であったにも関わらず、2年半の間に13回、22発のロケット弾が打ち込まれた。

 5500人が派遣され、死者が出なかったにも関わらず、日本に帰った後20人が自殺をしている。アクロバットのような飛行を余儀なくされた航空自衛官は3600人が派遣され、8人が自殺している。28人の自衛隊の若者が命を断たなければならなかった『後方支援活動』とは一体何なのかと、この検証も我が国は一切しない。その中で、後方支援だけでなく、アメリカの戦争にまで協力をしていこうと、なし崩し的に自衛隊が普通の国の軍隊に変わろうとしている。

 現在行われている与党協議は、閣議決定だけでは実効性をもてない自衛隊の武力行使にお墨付きを与えるための法律を作ろうとしている。そして統一地方選挙前にそのことを表に出せば、自分たちの票が減るから、それは隠しておいてゴールデンウィーク明けからのわずか2ヶ月間の短い期間で、この国の形を根底から変えようという策動が進んでいる。

 なんとしても国民的議論を高めて、こんなことをやってもいいのかと訴えていかなくてはなりません」。

 集会終了後、山下公園の一角を埋め尽くした参加者は、横浜市内を二手に分かれてデモ行進した。

 25日、読売新聞は「日米両政府は、岸田外相とケリー米国務長官の会談を3月に日本で行う方向で検討に入った」と報じた。「岸田氏が集団的自衛権の限定的な行使を可能にする安全保障法制の整備について説明し、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の見直しなどについて協議する見通し」とある。政府与党と米政府間の密室での協議を許してはならない。

【参照サイト】
「集団的自衛権行使容認に反対する全国一斉行動」(日弁連)
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2014/141220-150430.html
「自衛隊イラク派兵差し止め訴訟」
http://www.haheisashidome.jp/index.htm


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