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カナダ政府はシリア難民の受け入れを!〜20ヵ所以上の町で集会デモ

             長谷川澄(モントリオール)

 トルコの浜辺に打ち上げられたシリアの3歳の幼児、アラン・クルディ君の遺体写真は世界中にショックを与えましたが、カナダでも大きなショックと現政権に対する強い怒りを巻き起こしました。この子の叔母に当たる人がバンクーバー在住で、その人を通して、この一家の難民申請がされていたのに、書類の不足を理由に申請を蹴られていたことが判明したからです。 

 現政権はステファン・ハーパーを首相とする保守党(Conservative Party)ですが、全くの新自由主義政党です。この政権になった2006年からカナダの難民受け入れは年々少なくなりました。2005年には3万5千人以上を受け入れたのに2014年は約2万3千人になり、申請が蹴られることが多くなっています。ことに北米自由貿易協定に入っているメキシコからの難民申請は「メキシコは民主的な国で、難民になる理由はない」と言われて蹴られることが多くなりました。メキシコが政府批判をするジャーナリストや学生にはかなり危険な国であることを、現カナダ政権は認めようとしないのです。ハイチからの難民申請も難しくなっています。

 このためにカナダには、難民申請を助けたり、不法入国した人を助ける、大小いくつものNGOがあります。しかし、一般の人はカナダは以前の通り、難民を多く受け入れる国という思い込みが強く、ハーパー政権になってからの問題に関心が強いとは言えませんでした。それだけに亡くなったシリア幼児の一家の話は大ニュースとなりました。

 10月中旬の総選挙の選挙運動が始まったところでもあったため、反対党はどこも現政権の難民政策批判をし、自分達の党が政権を取った場合の改善する点の公約も出しました。難民関係のNGOは連携して、9月5、6、7日の3連休にカナダの西から東まで、全部で20以上の町で難民問題にもっと関心を持ってもらうための集会とデモを企画しました。

 モントリオールでは、5日に「国境のない団結」(Solidarite sans Frontieres)という団体主催の集会とデモが行われ、私も参加しました。3連休の始めの日で、遠出した人も多かったのと、宣伝も行き渡っていたとは言えないため、参加者は300人弱でしたが、メキシコの現状などの話が聞けたことや、自分自身が難民としてカナダに来たスピーカーが二人いて、難民問題を実感できたこと等、得るところの多い集会でした。

 一人は「カナダに着いた時、誰一人として知り合いもなく、言葉も自由ではなかった心細さを今、まざまざと思い出しています」と言った後、胸が詰まって、言葉が続かなくなってしまいました。すると、聴衆のなかの若い女性が「団結、団結、難民と、移民と、不法入国者と団結」というシュプレヒコールをして、励まし、皆もそれに続きました。それはちょっと感動的でした。

 スピーチの後、主催者が「今日は真夏のように暑いけれど、これからデモをする元気がありますか」と聞き、賛成多数だったので、モントリオールの中心街を地下鉄駅2つ分デモしました。解散の時に主催者は「今日のデモは予定になかったので、もちろん無届けですが、ご覧のとおり何事もなかったし、人々が連れ立って、公道を歩くのは基本的な権利ですから、これからも皆で、やりたい時にデモをしましょう」と、後を付いてきたパトカー2台の前で言ったのがとても面白かったです。

 参加者は多くなくても、周りで見ていた人は概して好意的でした。カナダではデモなどに賛同するときは通りがかりの車がクラクションを鳴らすのですが、集会の時、側を通った路線バスの運転手さんもクラクションを鳴らしてくれました。

 ベトナム戦争の時、カナダはボートピープルなど7万人近くを受け入れたし、コソボ危機の時、急を要する問題だから、当時の政権は移民局職員のチームを派遣して、難民査定を現地で行い、3、4か月の間に5千人を受け入れたのです。シリアから現在までに受け入れた人数は2374人です。国連からの要請で今後3年以内に1万人を受け入れると現政権は言いましたが、あまりに時間がかかるし、ヨーロッパの状態を見れば人数が少なすぎます。選挙で政権が変わって、難民政策が大きく変わってもらいたいと思います。


Created by staff01. Last modified on 2015-09-10 02:14:52 Copyright: Default

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