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東アジアの国家暴力と対峙する〜東アジアのヤスクニズム6日目



    〈ヤスクニ−フクシマ〉

東京演劇アンサンブルのメンバーによるリーディングが行なわれた。 2012年、ブレヒトの芝居小屋につづき、台湾で開催された「洪成潭光州五月版画展」で 『アンティゴネ』を上演した王墨林さん(ワン・モーリン)を迎えるにあたり、『アン ティゴネ』をモチーフにした作品をリーディングした。

リーディング  エピローグ?
エルフリーデ・イェリネク/作 林立騎/訳 小森明子/演出   

ドラマトゥルク/井上百子
演出助手/桑原睦
協力/東京演劇アンサンブル
出演/奈須弘子 久我あゆみ 原口久美子 天利早智 水流梨津美

東日本大震災による福島第一原発事故、放射能汚染……終わりの見えない災害を、『アン ティゴネ』をモチーフにイェリネクが描いた問題作。地震、津波、メルトダウン、放射 能汚染、移住、難民、原発企業、国家、埋葬できない遺体、生きるに値する生と生きるに 値しないとされる生――この災害と現在に関わるさまざまなことばが終わりなきループに 陥っていく……

今回の連作〈靖国の迷妄〉には、〈ヤスクニ−フクシマ〉という作品がある。

「女たちの声、聞こえない音、洪さんの絵に囲まれて、今回のこの空間でしかできないことを、やりたかった」(演出で、東アジアのヤスクニズム実行委員会共同代表の小森明子さん)

トークセッション


台湾から劇作家の王墨林さん(ワン・モーリン)をお迎えし、 東アジアの法と人権を追究される徐勝さん(ソ・スン/立命館大学特任教授)とトーク セッションをした。

徐さんは、歴史地理的概念としての「東アジア」−−つまり、数千万人の民衆を殺戮した帝国主義の暴虐が歴史において「東アジア」をつかみだしたということをまず指摘した。

洪成潭さんと出会い、2005年、佐喜真美術館での展示を契機に、東アジアの国家暴力の傷 跡を巡る旅がはじまり、台湾、沖縄、韓国、さらにその国家暴力で東アジアを鋳出した日 本軍国主義の現身である靖国神社を巡り、そこでどのような芸術的抵抗と連帯が可能であ るかを探ってきたことを語った。洪成潭さんが命がけで刻んだ五月版画「夜明け」の重要 性は、そこに現れた民衆の闘いと生きざまが、すなわち帝国主義と独裁の国家暴力に対峙 して闘ってきた東アジア民衆の姿であるからである、と。 2006年に洪成潭さんと台湾を訪れて以来、台湾でで五月版画の展示を行なう試みを重ねる なかで、王墨林さんと出会い、「アンティゴネ」の公演を控えていることを知った徐さん は、五月版画とアンティゴネのコラボレーションは天の配剤であるという啓示がひらめい たという。なぜならば、洪さんの芸術の真骨頂は、澄まし返り閉じこめられた美術館の中 ではなく、生き生きとした人々の祭り、遊び、闘争の中でその真価を発揮するからだ。 1986年の超大型コルゲクリム「民族解放闘争史」の展示が然り、2005年の佐喜真美術館が 然り、2012年の東京ブレヒト劇場での展示がそうであった。こうして台湾での五月版画展 示と王墨林さん翻案による「アンティゴネ」上演が実現した。劇には五月版画に付した洪 さんの詩が随所に使われ、光州事件が演劇のクライマックスとなり、現代の東アジアにお ける悲劇を浮き彫りにした。

その後、洪成潭さんは、「2014光州ビェンナーレ特別展―盛月五月」での展示不可事件に 直面し、今年1月の東京での「表現の不自由展」、5月ドイツでの「禁じられた絵」展覧 会で自身の表現を続けてきたこと、それはいわば東アジアが「精神の戒厳」状態であるこ とを証明することがらであった。そして、靖国も精神の戒厳の象徴であるとした。

王墨林さんは、1991年舞台芸術集団「身体気象館(Body Phase Studio)」を立ちあげて以 来、反主流の実験的舞台芸術を追求し、2005年に牯嶺街小劇場の運営を引き受け台湾の小 劇場運動をリードしてきた台湾を代表する舞台芸術家である。

1949年に戒厳令が宣布され、解除されたのは87年、37歳のとき。だから自分は「戒厳令の 子」だと言う。台湾は戒厳令によって歴史を2つに区分するようになった。国民党独裁 と、民主選挙による政治。しかし、戒厳令解除で国家の本質は変わったのか? 民権を主 張した国民党が独裁と名指され、民進党総統こそが台湾の総統である、という二元対立に よって形成された国家概念こそが虚偽的であり、イデオロギーの反映だと考える。 続けて、こうした国家イデオロギーと密接にかかわっていた個人史を語った。ここでは細 かくふれられませんがたいへん興味深い内容だった。

いま、中国大陸の民主化に関心があり、国家と個人の対立をテーマにした創作を構想中と のこと。

最後に、洪成潭さんの作品〈台湾ヤスクニ−銅像の谷間〉(下)について、お二人から歴史的説 明があった。

台北の南、新店渓と淡水河が合流する手前、大きな湾曲の始まる窪みの部分に馬場町紀念 公園がある。そこは植民地時代に台湾守備師団の騎馬訓練場のあった所で馬場町と呼ばれ ている。1949年、蒋介石が国共内戦に破れ、台湾に逃避してから、政治犯の処刑が行われ た場所である。228事件に続く台湾現代史のもうひとつの国家暴力の狂乱が始まった。 「白色恐怖(テロル)」である。約4000人を処刑し、そこで流された血を土で覆っている うちにそれが重なり丘のようになっている。 戒厳令下の台湾では、至る所に蒋介石の銅像があった。戒厳令後、ここには台湾全土から 撤去された蒋介石の銅像が集められ、まるで廃品回収場のごとく置かれている。

あと3日です! 

*  *  *
7/31 (金) 18〜21 時  ●アートとヤスクニズム  毛利嘉孝(社会学、東京藝術大学准教授) 井口大介(美術家) 市原研太郎(美術評  論家) 金城実(彫刻家) 洪成潭(画家)

8/1 (土) 14〜17 時  ●ヤスクニと日本軍「慰安婦」  『“記憶” と生きる』 上映+トーク:土井敏邦(映画監督) 洪成潭(画家)

8/2 (日) 14〜17 時  ●東アジアのヤスクニズム  ダグラス・ラミス(政治学、沖縄国際大学教員)+まとめディスカッション(コメン ト:須藤遙子(文化政治学、自衛隊協力映画研究)、小倉利丸(現代資本主義論)ほか)

(文責:岡本有佳)


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