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時代に抗した熱い群像劇〜『冬の時代』51年ぶりの上演

                 牧子 嘉丸

 劇団民藝の『冬の時代』を見た。これは木下順二が「大逆事件」後の社会主義者たちのまさに厳しく長い冬の時代を描いた問題作である。

 暗いのしかかるような権力の重圧のなかで、しかし人びとは決して圧(お)し殺されてなんかいない。実によくしゃべり、よく笑い、よくけんかする。そのやや生硬で古めかしいセリフも役者同士の呼吸と熱いかけ合いで、気持ちよく伝わってくる。

 「売文社」を設立してなんとか冬の時代をやり過ごそうとする渋六こと堺利彦と、それを待機主義として批判する若い大杉・荒畑の対立。またそこから脱落していく同志たちの姿が生き生きと演じられている。なかでも主人公渋六役の千葉茂則さんは自然体で独特の存在感があり、まるで堺利彦その人を彷彿させるような見事な演技である。

 この時代を描いた作品としては、宮本研『美しき者の伝説』(1968年初演)が有名だが、それを先立つ4年前にこんな木下作品が発表されていたとは。

 明治・大正の社会主義者の苦悩と忍耐と情熱にくらべれば、我々は恵まれすぎているし、またその民主的権利を十分に発揮して闘っているとはいえない。アベの極右暴走政治にとどめを刺す闘争に激励と叱咤と勇気を与えてくれる必見の芝居である。

 パンフレットに木下順二に長年私淑した松本昌次さんのインタビューがあり、いつもながら明快・簡潔に話されている。またレイバーネットのコラムで発信する意義にもこう応えられている。「わたしの出会った先人たちは本当に素晴らしかった。そのことを伝え残したい」と。この芝居では、まさにその素晴らしい先人に出会えるのである。

*東京・紀伊国屋サザンシアターで4月28日まで。詳細


Created by staff01. Last modified on 2015-04-22 09:51:43 Copyright: Default

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