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どうする労働運動!百戦錬磨のベテランが語る〜『労働組合で社会を変える』出版記念討論会

 さすが百戦錬磨のベテラン活動家たちだった。組合づくりの実践経験からつかんだ教訓やヒントに溢れていた。4月18日午後、東京・全水道会館で開かれた「『労働組合で社会を変える』出版記念討論会」には約70人が集まり、労働組合運動の再生に向けて活発なディスカッションが行われた。パネリストは、著者の石川源嗣さん(東京東部労組副委員長)・鈴木一さん(札幌地域労組副委員長)・松本耕三さん(全港湾委員長)の3人。「社会を変えるには、政策制度要求も重要だが、基本は職場で仲間を増やし職場の力関係を変えることではないか」、司会の須田光照さん(東京東部労組書記長)の提起を受けて、さまざまな角度から討論が行われた。

 石川さん(写真上)は「この本は私の個人で書いたものではなく、東部労組のみんなでつくったもの。たたかいの中から生まれた」と前置きした上で、「労働者が立ち上がる原動力は、“差別反対・人間として扱え”というところにある。その怒りをベースに、幹部の代行主義ではなく当事者の労働者自身がたたかうことが大事だ」と、本にこめた思いを語った。

 札幌地域労組の鈴木さん(写真上)は、150ヶ所以上の組合づくりをしてきた。「私たちオルグは、当事者に“地獄の底までとことん付き合うよ”という決意をまず伝える。当事者がハラをくくれば90%組織化は成功する。しかしフラフラしていたら会社にやられてしまう。労働組合は組合というより“組”なんだ。そして、なにより大事なのは“自発的運動”。やって楽しかったということが大事。強制された運動は表面的には人は動くが力にならない。御用組合がいくらできてもだめだ」とズバリ語った。オフレコの裏話も多く、共感と笑いで盛り上がった。

 会場を含めてのディスカッションでは、労働組合活動家の高齢化・若者との世代ギャップ・パターン化した運動スタイル・非正規への無関心、などさまざまな問題点・批判点も出された。松本耕三さん(写真上)は若者対策でこんな経験を語った。「青年教育ということで全港湾はこれまで毎年1千万円の予算を組んで、いろんなことをやってきたが、失敗ばかりだった。そのなかで唯一効果があったのが『5.15沖縄平和行進』の取り組みだった。沖縄ツアーで現場に触れることで、青年たちは大いに刺激を受けた。『平和行進』は最初は上からの取り組みだったが、いまは青年たち自身が自発的に取り組むようになった」。

 日本の労働運動全体が衰退している問題について、鈴木さんはこう語った。「先輩たちの労働運動がなぜダメになり、全体が御用化してしまったのか。意外と思うかもしれないが、旧総評系で強いといわれた組合ほど実は幹部が腐敗していた。右であれ左であれ“組織は腐敗する”をいうことを肝に銘じて、考えていくことが大事だと思う。韓国では、御用組合といわれた韓国労総もゼネストに立ち上がるまでになっている。韓国の労働運動に見習うことは多い」「私の組合事務所には“万国の労働者、団結せよ”のスローガンが貼ってあるが、他者・横のつながりが大事。札幌地域労組は連合系だが、全労連系組合とのつながりを意識的につくっている」。

 会場発言で、非正規差別とたたかっているメトロコマース支部の疋田節子さん(写真上)がこう質問した。「先日4日間の座り込み闘争をした。支援の人はのべ400人以上が集まったが、同じ職場の売店員は一人も来なかった。オルグはしているが効果がない。悲しい。どうしたらいいのか?」。

 3人が答えた。松本さん、「人の気持ちは必ず変わる。全港湾でも組合を400人でつくったがすぐにみんな脱退した。ところがその後、何かのきっかけで3人が立ち上がり結局全員戻った経験がある」。鈴木さん、「組合で脱退や裏切りはつらい。組合が1人や2人になるのも珍しくない。メトロコマースは7人もいる。仲間に恵まれている。いますぐ成果は目に見えないかもしれないが、影で背中を見ている人がいることは間違いない。かくれキリシタンがいるから自信をもって」。石川さん、「メトロコマースのストに対しては、『少数派のストは無駄、効果ない』という声が組合関係者からあったのも事実。でも実際にやってみて成果もうまれた。たしかに職場での仲間づくりは簡単ではない。メトロコマースの人たちもやっているが、涙ぐましい日常的努力を継続することしかないと思う」。

 数十年にわたって活動してきた組合オルグの答えは含蓄があった。こうして、一冊の本『労働組合で社会を変える』(情況出版)をきっかけに行われた討論集会は、午後1時から4時半まで3時間を超える白熱したディスカッションとなった。(M)

*『労働組合で社会を変える』(1800円+税)の申込みは、東部労組まで

動画(全記録 2時間42分)


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