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世界一生き物の多い海で何が起きているのか
 〜映画『圧殺の海―沖縄・辺野古』

                       笠原眞弓

▼ゲート前のおじい、おばあたち

 「圧殺の海」、それは全編闘争現場といっても過言ではない。まず、キャンプ・シュワブの工事用ゲートでの攻防で始まる。2014年の7月政府は工事推進のため、公安警察と海上保安庁職員を多数投入してきた。海での測量や工事用浮き桟橋を作るなど、いわゆる辺野古の新基地建設に向けて、政府は工事を急いでいた。工事専用のゲートをつくり、資材の搬入を始めた。それを阻止しようと、沖縄の人々が集結する。声を涸らす山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)は、県警や防衛庁職員に呼びかける。「なぜ君たちは我々の邪魔をするのか」「なぜ我々が工事を止めたいか」とトラメガから呼びかける。防衛局の違法行為であるジャバラの門を取り外す間、「やめてください」という警察に対し「あなたたちがやってくれるか? やらないなら下がっていてほしい。手を出さないでほしい」と頼み、作業終了後は「黙って見ていてくれてありがとう」という(警察が手を出さないのはこの門が違法だかららしい)。しかし、直ぐに元に戻されてしまうのだが。

 大きく画像がゆれる。もみくちゃにされるほどカメラは、人々の中に入っている。トラックの前に座り込み、運転手に直に訴えたい島袋文子さん(85歳)たち。一人剥がされ一人加わり、また剥がされる。ウチナンチューの決死の覚悟がにじむ。本土からの人も加わっている。この闘争は、東京近辺のように、1ヶ月に1度とか週に1度、最近は多くなっているが、たかだかその時間だけという行動ではない。毎日、しかも24時間。だれも強制していない。休みなく続く。それほど政府への不信、本土の人々への失望がにじむ。

▼世界一生き物の多い海で…

 空色の空に空色の海が光る。海中にはジュゴンの噛みあとのついた海藻が。キャサリン・ミュージック(海洋生物学者)さんは、「ここは、地球上で最も多様性豊かな生態系が残されています。ただただ壮観です」と。サンゴもカニも400種以上、魚に至っては1000種以上とか、ジュゴンの餌である海藻の噛み跡も確認さている。そんな海の沖合2キロまでが立ち入り禁止地区(米軍使用区域)となる。

 ことの起こりは、1995年、20年前だった。3人の米兵の暴行事件に沖縄県民の怒りが爆発した。激しい基地返還運動が起こり、普天間飛行場の全面返還が決まった。しかし、それは市街地から県内移転であり、大浦湾(辺野古)に白羽の矢が立った。納得できない県民の阻止行動と民社党政権下で、一たんは県外移転もあり得るかという情勢になったが、自民党の返り咲きで結果的に、辺野古170haを埋め立て1800mのV字型2本の滑走路と輸送船が接岸できる軍港を造成ことになった。

 1艘の抗議行動に対し、海上保安庁(海保)の7艘のゴムボートと、2艘の白い船がこちらに近づく。それらの船に向かって、そこはジュゴンの餌場だから、すぐに退去するようにと呼びかける。だが、彼らは動かない。トラメガはさらに声を張り上げる。「埋め立ての承認申請には、フロートや工事用浮き桟橋の設置については、書かれていなかった。だからそのことを取り締まるように」と。が、彼らは聞く耳を持たず、ひたすら海保の指示に従って、この海域から出て行くようにと警告する。

 あなたは知っていましたか? いま、米軍用の基地新設の工事の一部が不法であることを。私は知らなかった。それなのに海保は、ここは立ち入り禁止だとか、危険区域だから入るなと言っている。

 カヌーで抗議をする若者たち。それを阻み、大きな魚を引っ掛けるような鈎竿で引き寄せ、海保のボートに引き上げる。「海中で何をしているのか」という抗議の声も聞こえる。海保に捕まり暴行を受けたカヌー隊の一人は、むち打ち症用のギブスをはめ、「カメラのないところでは、やりたい放題。カメラが近づくと大丈夫か?という」と報告。そこで海保の行為を記録するため、ヘルメットに小型カメラを付けて海上行動に行く。一斉にオイルフェンスに向かう彼らに、海岸から声がかかる。「県民が付いているぞーッ」と。カヌー隊のほとんどが県外者だ。その声援がうれしいという彼らの顔には、責任感が滲む。そのカメラが、しっかりと海保の過剰警備を写す。

▼両目を開けて見て知ることから共有と行動を

 こうして大勢の人が「人殺しのための基地」をつくらせない行動をしている。この力が、翁長新知事を誕生させた。映画は、そこで終わっている。その後仲井真前知事は、任期を4日後に控えた2014年12月5日に、県庁にも出庁せず、埋め立て工事の変更3件のうち2件にサインした。12月の国政選挙でも、沖縄県の選挙区4区全てで、自民党の議員を排除した。年が開けて、海保の暴力はきつくなり、ゲート前での大型トラックの往来も激しくなっている。沖縄復興予算の減額もほぼ決まり、翁長知事が上京しても安倍首相はじめ菅義偉(沖縄担当大臣)も、会おうともしない。1月25日の「辺野古に基地はいらない 国会ヒューマンチェーン」に7000人が集った。これが民意でなくて何なのだろう。

 こうしている今も辺野古では、阻止行動が続く。彼らのこのままでは「遅らせることはできても、止めることはできない」という、悲痛な声に応えたい。そのためにも「いま辺野古の現場で何が行われているか、それを見て欲しい」との藤本幸久監督の作品への思いを共有したい。

★2015年・109分 制作=森の映画社 監督=藤本幸久/影山あさ子
2月14日よりポレポレ東中野での上映 自主上映企画歓迎(問合せは下記HPから)
★森の映画社

*写真提供=「森の映画社」


Created by staff01. Last modified on 2015-02-14 17:56:20 Copyright: Default

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