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希望は抵抗にあり!〜ウェブメディア「香港独立媒体」のマルコさんに聞く


香港の雨傘運動の拠点、金鐘オキュパイのテントで、レイバーフェスタにゲストとして参加する「香港独立媒体」の編集・運営スタッフのマルコさんに話を聞きました。聞き手=レイバーネット国際部。(写真左がマルコさん、右は同じくフェスタのゲストのタムさん。写真はすべてオキュパイの現場)

香港独立媒体
http://www.inmediahk.net/
https://www.facebook.com/inmediahk

◆10年目を迎えた香港独立媒体

独立媒体で活動を始めて3年になります。独立媒体は市民メディアのひとつです。2004年当時、主流メディアでは報道されない事件がたくさんありました。当初は、社会運動に携わる人々の情報を掲載することが中心でした。2005年のWTO会合で韓国農民などによる抗議行動や今回のオキュパイなど、さまざまな社会運動の活動家が情報を掲載してきました。

2009年、私たちは自分たちで報道する取り組みを開始しました。特約記者という制度をつくり、記事を書いてもらうことにしました。特約記者になってもらったのは大学の教員や社会運動の活動家です。主流メディアが報じないニュースを書いてもらい独立媒体として報道することで、市民の立場に立った報道をつくることが目的です。


   *チョーク・アート「ドラえもん のび太の雨傘大冒険」

◆一日に7万件のアクセス

独立媒体は、当初は社会運動に特化した媒体で、それほどたくさんの人がアクセスするということではありませんでした。2012年にフェイスブックなどが市民の間にも広がり、ウェブメディアもたくさんできました。独立媒体はすでに8年の経験があったので、フェイスブックも利用して、たくさんの市民に独立媒体の報道などを広めることができました。いまでは一日7万件のアクセスがあります。

2009年の高速鉄道の建設や2012年の国民教育実施への反対運動など、そして今年の雨傘運動でも、多くの市民が独立媒体の報道にアクセスしています。フェイスブックでの情報拡散を通じて、速報性を求める読者のニーズにも対応することができており、いまでは香港の市民メディアのなかでも影響力のある一つになっています。

◆たくさんの市民が支える

2013年、影響力のあったウェブメディア「主場新聞」(HOUSE NEWS)が、突然閉鎖されてしまいました。主宰者が、今後の香港社会の見通しに悲観したことや経済的問題で閉鎖を決めてしまったのですが、わたしたち独立媒体は、たった一人の経営者の判断に市民メディアの経営を依存させてはならないと思っています。私たちの運営資金は複数のルートを通じて調達されています。私たちの活動方針に賛同する多くの市民からの寄付によって独立媒体は運営されています。主場新聞のようにたった一つの財源だけに頼るのではなく、大学の教員や学生、市民などたくさんのひとびとが私たちの活動を支えてくれています。

◆雨傘運動で発揮された市民メディアの利点

今回の雨傘運動における独立媒体の役割ですが、主流メディアでは取り上げない運動のさまざまな情報を報道してきました。たとえば主流メディアでは警察の暴力についての追及が甘い場合があります。私たちは現場にいるたくさんの活動から、警察の暴力を映し出した情報など、さまざまな情報を受け取り、私たちのほうですぐにそれを編集して、現場からの速報性あるニュースとして読者に提供することができました。これは普通の主流メディアではなかなかできないことです。たくさんの現場の活動家が私たちに情報を提供してくれることで、それが可能になっています。

特約記者や現場の市民らによる情報提供にもとづいた独立媒体独自の報道、それにさまざまな社会運動活動家自身による主張や宣伝などの情報という二本柱が、独立媒体の特徴といえます。ですから今回の雨傘運動でも、運動の経過をニュースとして報道するだけでなく、この運動にかかわる人々の様々な意見や主張なども積極的に掲載してきました。


   *立法会(香港議会)入口のオキュパイ

◆政府職員からの内部情報も

こんなエピソードがありました。香港政府は街頭オキュパイが市民生活や交通に混乱をもたらしていると批判していたときに、独立媒体はある消防員の情報提供を受け取りました。その消防員によると、政府は防災への懸念を述べているが、それは嘘っぱちで、実際には消防などで問題になることはない、という情報でした。また医療救急員らからも救急車などの通行に影響が出ることはないという情報がもたらされたり、と政府部門の内部情報なども、独立媒体に寄せられ、私たちは政府が被害を誇大に宣伝しているという報道として、それをウェブサイトに掲載しました。

◆今後は「真のメディア」として成長したい

独立媒体の設立当初は社会運動のメディアという性格が強かったのですが、その後10年の経過の中でそれだけにとどまらない役割を果たしてきました。今後はさらに「本当のメディア」としての役割を果たしたいと思っています。そして主流メディアでは報道しない情報をあわせて提供していきたいと思います。

現場にいる活動家による情報提供は、主流メディアにはない利点です。また主流メディアでは、社会運動の視点からの報道に対して、経営や政府からの圧力がかかりますが、私たち独立媒体にはそのような制約はありません。おもにウェブサイトでの情報提供ということで紙幅の制限もほとんどありません。最前線のアクティブな情報が制限なく提供できる、という強みがあります。また私たちのフェイスブックには39万人の読者がいます。それなりの影響力があるといえます。


   *LENNON WALL HONGKONGに掲示された無数のメッセージ

◆今後の雨傘運動のゆくえ

この雨傘運動についてですが、それほど楽観はできないとおもっています。なぜなら中央政府はかたくなにその立場−−真の普通選挙は実施しないという立場−−を崩さないからです。現在、民主派は議会で三分の一の議席を確保しており、それは来年3月に議会で行われる選挙制度についての表決で、政府案を否決できるだけの議席をもっているということです(重要法案は三分の一で否決可能)。しかし否決された場合は、前回の選挙制度の枠組みを用いることになっています。つまり2012年の制度のまま、ということです(行政長官は1200名の選挙委員の八分の一の推薦で立候補できるが、投票権があるのは選挙委員のみ)。つまり2017年の直接選挙は実現できず、その次の2022年までチャン スを待たなければならない、ということになります。

◆若者たちが訴える「希望は抵抗にあり」

80年代以降に生まれた若者たちの運動への参加が続いています。2005年から06年にかけて、皇后埠頭の解体に対する反対運動、2009年の高速鉄道反対運動、2012年の国民教育反対運動がつづいてきました。若者たちは政府のやり方に対してつよい不満をもっています。

97年の返還以降、経済、社会が後退していることを実感してきました。かつて意識の上で存在した香港人としての「優越感」というものの喪失があります。少しずつ中国国内とおなじになっているのではないか、という感じがあるのです。オキュパイの現場にはたくさんのスローガンが掲げられていますが、そのなかで「希望は抵抗にあり」というものがありますが、それは「いま立ち上がらなければ、将来は立ち上がることもできない」という多くの若者の危機感をうまく表していると思います。

◆日本での交流を楽しみにしています

日本の経済、とくに若者の現状について言えば、厳しい状況にあると理解しています。大学を卒業しても安定した仕事に就くことは、そう簡単ではないと聞いています。香港でも状況は似ていますが、香港では若者が自らの未来について考え行動しています。日本でもそのような若者たちがいると思います。日本でみなさんとお会いできることを楽しみにしています。

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レイバーフェスタ2014・12月20日・田町交通ビル6Fホール

 毎年恒例のレイバーフェスタ。ことしは12月20日、東京・田町交通ビル6Fホールで開催します。香港からマルコさん、タムさんが来日し、プレゼンテーションを行います。いま香港で何が起きているのか、何が問われているのか、香港問題の核心に迫ります。またフェスタでは午前は3分ビデオ・川柳の発表、午後は「冗談じゃない!若者貧困社会」(DVD「ブラックバイトに負けない!」上映+若者トークセッション)もあります。香港のパートは午後3時からです。ぜひご参加ください。メール予約がおとくです(当日1700円→1500円)。また21日(日)午後にもスペースたんぽぽで、香港ゲストとの交流会を予定してます。12.20詳細12.20メール予約


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