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LNJ Logo 香港で『原発の町を追われて』『反原発デモダイジェスト』を上映
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高橋信之@香港です。

ヨーロッパ各地でも日本の反原発の波に呼応する動きが広がっているようです。
香港でも、今年11回目の社会運動映画節で「原発映像デモダイジェスト」
(レイバーネット日本)と「原発の町を追われて ― 避難民
・双葉町の記録」(監督 堀切さとみ)が上映されました。香港社会運動映画
節に参加して受けた印象は、映画の中に社会運動があるというより、社会運動
の中に映画があるという感じでしょうか。ニューヨークからはじまった「我々は
99%だ」の運動に連動した香港の活動家は昨年、香港上海銀行の吹き抜け
のフロアに篭城したのですが、同映画節は篭城しているところに機材を持ち込ん
で金融寡頭制を批判する映画を上映したり、今年は、移動を強要された香港の
菜園村で5時間、立ち退きに抵抗した記録である「怒れる沿線」を村人と共に
鑑賞したり、以前に原発推進のシンポジウムを行った香港城市大学で今回、
日本の反原発映画をあえて上映したり、という具合です。なお同大学で学生など
も交えた討論は夜11時過ぎまで続きました。またマスメディアのブロードキャ
スティングに対して 同映画節は「ナローキャスティング」という言葉を使って、あえて大体的に宣伝しないところも面白いと思いました。日本の作品の鑑賞者は、城市大学での上映に約30名、香港独立メディアの事務所での上映はそれよりやや少な目でしょうか。以下は、日本の反原発映画鑑賞後の討論内容の要点を、同映画節の反核部会がまとめたものを私が翻訳したものです;

日本の反原発映画(二本)鑑賞後の討論内容の要点まとめ

2013年10月17日 香港城市大学
2013年11月17日 香港独立メディア

1)映画に関わる基礎資料の補足説明
● 堀切さとみさんが埼玉県で映画の制作を開始した経緯
● レイバーネットはじめ日本の独立メディアの簡単な説明
● 発電所建設と引き換えの交付金・雇用機会など「恩恵」も避難民差別の口実に
 されていること。
● 福島県、埼玉県、東京の地理的位置。
● 日本の状況:原発・政府・企業・メディア・学術会の利益関係。

2)東電の被災者に対する賠償金の支払い
● 賠償金の額は、発電所に近い人は遠い人よりやや高く同じ福島県民でも額が
 一様でなく、こうした政府・東電のやり方が被災者同士の不和を促す面もある。

3)香港の状況との比較

●日本人相互間の確執と差別の状況は、香港の新移民(大陸からの移民者)が
 受ける差別と共通する面がある。
● 香港で立退きを強いられた菜園村の村民と福島の被災者は同様に被害者。しかし
 マスメディアは事実を歪曲し、菜園村の村民が賠償金であたかも大もうけをしたか
 の様に描くが事実とまったく異なる。双方の被害者の状況はすべて独立したメディ
 アによって真相が報道されている。

4)日本のマスコミについて
● 日本のマスメディアは一握りの巨大グループが独占、東電とマスコミは広告費を
 通じ癒着。
● 一貫して原子キャンペーンを推進、「クリーンに発電できる」「コストが安い」
 「原発がなければ江戸時代に戻る」。
● いま日本のすべて原発が停止しているが電力不足はない。


5) 原発と核兵器の関係ほか
● 原発の運転過程で核兵器の燃料を生成可能。
● 原発の核エネルギーによる放射能汚染は極めて深刻。
● もし原発が環境にもそれほどいいのならば、各国政府はなぜさらに積極的に推進し
 ないのか。
● 一貫した原発推進の背景に、原発燃料を再利用する核兵器開発能力を維持したい
 政府の思惑がある。

6)東京電力、日本政府、マスメディアの関係
● 政府は一貫して報道を抑制、東電の放射能汚染水の問題を隠蔽。政府と東電は互い
 に責任をなすり合っている。オリンピック招致決定後、安部首相の政府答弁にブレ。
● 政府はメディアをコントロール。放射能拡散情報は事故から二ヶ月公表されなかった。

7)原子力発電の経済効率
● 原発は決して低コストではない。採掘、精製、輸送、冷却、廃棄物貯蔵などが費用を
 高くする。
● 一度爆発すれば石棺で覆い放射能を処理しなければならない。チェルノブイリ原発事故
 を例にしても石棺は永久に使えるわけではなく絶えず新しい物に作り変えなければなら
 ない。投資効率が大きくマイナスになる可能性がある。

8)香港政府と電力会社による原発PRとその方法
● 原発の詳細な資料を提示せずただ「電気料金を節約できる」と吹聴。
● 政府のテレビCMは、日常の生活も放射能を浴びており「放射能があっても安全で正常」。

9) 原発に替わる進路とそれを阻む力
● ドイツは原発廃止の方向にあり、代替エネルギーの開発に注力。原発以外の選択肢も不
 可能ではない。
● これら石油・ガスに依存する大企業は、利益を独占するため代替エネルギーの開発に圧力
 をかける。
● 再生エネルギーの技術的進歩は早いが、軍事・他の権力の独占により成長が阻まれている。

10) 香港社会は原発の民主的討論が欠如
● 一旦原発の危機が生じた際どう対応するかなどさらに討論すべし。
● エネルギー、技術に関する民主的討論を一貫して欠いている。
● 例えば発電所は中枢都市に電気を供給しているのにどうして地方に建設するのか?私たちは
 原発を建設しない選択は取れないのか?私たちは原発を取るのか太陽エネルギーを取るのか?
 などを討論すべし。

11) 環境保護に関する香港での討論
● グリーン・ピースやFOEなどの環境保護団体は、日本政府が汚染水を垂れ流していることを国際
 的に明らかにして情報の透明度を高めるべきではないか。
●(環境団体スタッフの発言)香港マスメディアは環境問題に十分紙面を割いていない。関心が
 不十分。社会各層が一体となって努力すべきだ。
●(他の環境団体)香港人の環境問題への関心は低くなっている。環境保護の討論のレベルが下が
 っている。「環境保護がなければ経済的な損失はいくらか」という見方のためお金で問題が解決す
 れば本人はもうその問題に関心を失っている。

12) 原発廃棄物の処理
● 廃炉を決めても、その過程で多くの処理が必要であり、多くの危機をはらんでいる。

13)原発の開発資金はどこから来たのか。

14)エネルギー問題を考え直そう。もともと人類にそんなに多くの電力は必要なのか

15) 香港の年末のエネルギー・ミックスの諮問会議について。

16) 映画を見た感想
● もし香港人が福島の被災者と同様の生活を余儀なくされたらどう対応できるか想像し難い。
● 映画に描かれた被災者の心情と悩みは十分に具体的で観衆にわかり易く伝えられている。

17)福島の事故と日本全体の状況
● 日本の反原発の気運は事故直後に比べやや冷淡になっている。

(香港社会運動映画節 反核部)

Created by staff01. Last modified on 2013-11-24 10:26:34 Copyright: Default

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