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LNJ Logo 裁判所前の男・大高裁判レポート : 主役不在の「ウルトラファッショ的訴訟指揮」
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●「裁判所前の男・大高正二」暗黒裁判・第4回控訴審(9月18日)報告

主役不在の「ウルトラファッショ的訴訟指揮」

 暗黒裁判といわざるをえない。傍聴人は所持品検査に加え、法廷内に入っても8人の警備職員に監視される。軍事法廷と変わらない。そこに手錠姿で2人の警備職員に引き立てられてきた被告人・大高正二さん(写真上)。午後1時半、開廷が宣言される。まず証拠申請書類を裁判官が点検する。しばらく沈黙の時間があった。そこで大高さんは静かに手を上げた。「ちょうどきりがいいので発言したい」と言った途端、井上弘道裁判長は「発言できません!」。大高「そのことについて言いたいのです」。井上「これ以上しゃべったら退廷です」。傍聴席からは「おかしんじゃない」の声。大高さんは弁護団と相談するために、弁護団に向けて一言発した。そうしたら井上「退廷、退廷させなさい」と警備職員に命令した。警備職員もあまりに突然でちょっと躊躇したように見えた。「こんな程度で退廷なのか」職員もそう感じたに違いない。井上裁判長は「退廷、退廷」と職員をせかせる。2人の警備職員は大高さんに腰紐・手錠を付け、引き立てていった。大高さんは足を踏ん張りながら、「私の裁判で私がいなくてどうしてできるのか。なぜ発言させないのか」と叫び続けた。この間、ほんの数分の出来事だった。

 弁護側の大口弁護士は「訴訟指揮の濫用だ。裁判は当事者と傍聴者が審理が尽くされた、と納得することが重要。裁判長が暴力で被告を放り出す。主役のいないところでやる裁判は異常だ。憲法違反の訴訟指揮をやめよ」と迫る。その発言に傍聴席からは「よーし」「その通り」のつぶやき声が飛んだ。井上裁判長は傍聴席をにらみつけて「今度発言したら退廷させる!」ときた。

 結局、裁判は主役不在で約1時間続いた。大高さんは本当に杉田守衛をこぶが出るほど強く殴ったのか。この事件は「裁判所前の男・大高さん」を排除しようとする裁判所のデッチ上げではなかったのか。一審で杉田守衛は当初「思い切り殴られて5センチ位のこぶが出来た」と証言したが、弁護側が医者の証言やカルテなど精査し追及した結果、地裁判決では「こぶ」ではなく「むくみ」であると認定せざるをえなかった。腫れが何日も残る「こぶ」と、すぐに腫れが引いてしまう「むくみ」では大きな違いがある。弁護側は控訴審でこの事実認定を明確にするために、杉田守衛を最重要証人として申請していたのだ。

 ところが、この日(9月18日)の第4回控訴審で、東京高裁第12刑事部・井上裁判長は、証人申請をことごとく却下してきた。冒頭で大高さんを排除したのもその目論見があったからかもしれない。そして「きょうで結審、次回判決にしたい」と弁護側に審理打ち切りを通告した。弁護団の長谷川直彦弁護士は怒った。「裁判長は真実発見義務を放棄するのか。被告の弁護権はどうなるのか。本当にこぶだったのかを杉田証人に確認することはどうしても必要だ。また“被告人質問申請”も却下したが、これでは被告は法廷の場でいっさい発言できないことになる。他の控訴審でも弁論はともかく“被告人質問”はすべて認められている。これではもはや裁判とは言えない!」と声を張り上げた。萩尾弁護士、大口弁護士も次々を弁論し「再考」を求めた。しかし井上裁判長は「再考しない」と答えるだけで切り捨てた。結局、弁護側も粘り次回判決はさせずに、「被告側の弁論」をすることになった。

「問答無用」の暗黒裁判。傍聴していても気分が悪くなるものだった。しかし、この日の裁判の最後に、弁護団は傍聴者の声を代弁する形で、傍聴の権利に関する「申しいれ」を井上裁判長に対して行った。大口弁護士「この裁判を429号の警備法廷から一般法廷に変更すること。傍聴人の所持品検査をしないこと。過剰警備の理由を明らかにすること。以上を申しいれる。現在の所持品検査は任意といいながら実質的には強制であり、これは令状なしの差し押さえと同じだ。裁判所の見解を伺いたい」。傍聴者の私たちがもっとも聞きたいことだった。井上裁判長の答えは「所持品検査は裁判所の判断で行っている」とだけ。大口弁護士「その判断の根拠・基準・理由を聞きたいのだ」。井上裁判長「すでに答えました」。長谷川弁護士「令状なしの検査は憲法35条違反ではないか。異議を申し立てる」。井上裁判長「棄却します」。これで終わりである。何を聞いてもまともに答えない。切り捨てる。力づくの訴訟指揮だった。長谷川弁護士は報告会で「ウルトラファッショ的訴訟指揮」を命名した。

 この日の傍聴席は37席(抽選は40人並んだ)で満席だった。報告会には15人ほど集まったが、初めて傍聴したという女性が3人いた。大高裁判の内容もしらずたまたま傍聴した人もいた。一人はこう感想を述べた。「こんなことが日本の現実で起きていることが信じられない。裁判員制度とか始まって、裁判の公開をアピールしていると思っていた。これでは傍聴に来たくなくなるし、失望して裁判所は信用をなくすのではないか」。

 次回の大高裁判は、10月11日(金)午後1時半、東京高裁429号法廷で行われる。抽選は午後1時から、玄関前。裁判所の本当の姿は「429号警備法廷」に凝縮されている。本当のことを知るためにも、裁判を監視・傍聴し、事実を知らせていくことが、ますます必要だと思った。(松原 明)


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