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LNJ Logo 堅川弾圧裁判「稲葉奈々子さん」証言記録
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*レイバーネットMLから

根岸です。

遅くなりました。10月11日堅川弾圧裁判で証言をしていただいた茨城大学の稲葉奈々子さんの証言記録です。日本と欧州の居住権への考え方違いや公共空間を行政が管理する日本の特異性などが浮き彫りになる証言でした。以下に、報告します。

また、このところ堅川の状況が変化しましたので、それも報告します。これからも支援の方宜しくお願いします。

稲葉さん 証言

社会学、特に社会運動論が専門。方法論として社会運動論、つまり法律を作る過程での市民運動との関係について。フランス留学中にフランスの住宅政 策が形作られ、フィールド調査を行った。投機目的にフランスの公的機関が所有する住宅を、住居がない人が占拠したことが学問上の視点だった。フランスでは 市民社会が法律の成立にどう関わるかが問題、日本では政治家だけで市民が関わることはない。

日本での堅川の問題は居住権に大いに関わるもの。フランスでの社会運動の政策への関わり方は、「持たざるもの」当事者が担い手になるという基本的 概念がある。そうでない場合、貧困問題はヨーロッパでは慈善に近い活動になっている。住宅、医療、仕事を得るといった社会的権利を奪われている人たち自身 が権利を取り戻す運動、「安定した住居の保障」といった考え方が根底にある。西ヨーロッパでは住宅は社会保障の一環であり、基本的権利で保障されるべきも のとなっている。

しかし、90年代に新自由主義が導入され、不動産市場の規制が緩和され、都市中心部の貧困者の排除が行われた。要因として労働者が非正規化され、 失業手当の受給期間が終わっても再就職できない労働者が増加し、最悪の場合家賃が払えず路上生活となるなど、住宅問題が深刻化した。都市開発によって貧困 層が住居を追い出され、パリにはホームレスが20万人存在した。当時、投機目的に行政機関が保有していた空きビルや空き家がたくさんあり、本当に住むとこ ろがなく困っている人をそこに住まわせるという運動が起きた。95年に最高裁で、必要に迫られて占拠した場合、違法ではないという判決が出た。これは19 世紀に食べ物がなくて子供のために肉を盗んだお母さんが無罪になったという判例が基になった。今もその判例は使われている。パリ市は、1993年に住居困 難者に立ち退きをさせない条例が成立している。

住宅への権利は法律で保障されていても権利として行使できなかったので、200人あまりのホームレスと支援者が2006年にサンマルタン運河の遊 歩道にテントを張り、「凍死していいのなら、ほっといてくれ」と市民に訴えた。これによって多くの市民が集まり、訴えを聞き、立法的な措置が採られ、 2007年1月に請求権付き住宅への権利法ができた。

請求権付きの住宅への権利はもともとスコットランドでつくられたもので、ポルトガルでも立法化している。また、北ヨーロッパでは住宅は社会保障で あり基本的人権ということが普遍的なことになっており、野宿の問題は原則としては存在せず、住宅への権利が保障されている。日本では、公共空間は行政が権 利を行使。社会的福祉とか人間的な政策が取られていない。

「公共空間を占拠する」というときに、フランスではそれ自体は問題にされない。まして刑事事件にはならない。公共団体の職員の考え方は、公務員は 公共性といった時に何が一番大事かということを考慮する。社会運動の主張が行為の違法性をしのぐと判断されれば、正統性を認められてきた。そういった社会 通念がある。公務員もそれを認識している。居住権は基本的人権として確立されている。「生きていくための保障」として。支援者が逮捕されることもない。本 件では野宿者の問題に水辺と緑の課が対応しているが、フランスではありえない。社会権規約の中でも「公的な場所を不法占拠しても強制排除をしてはいけな い。当事者と話し合いをする」となっている。国連を中心に住宅の権利は国際法上確立している状況もある。日本は大阪、ウトロに対して規約人権委員会は懸念 を表明し、勧告が出ている。

国際法は国内法より重んじることになっている。政府自体が取り組むべきことである。江東区の「都市公園法のルール」という言い訳は成り立たない。憲法や国際人権法で解決していくべきだ。

2月9日に話し合いをする約束をしておきながら、2月8日に行政代執行を行うとは、話し合いを反古にしたことになる。話し合いは当然。市民からの申し入れをきこうとしないのは、行政のあるべき姿を逸脱している。

野宿者を一人の尊厳のある人格として対応すべきで、尊重しないのは恥ずべきことだ。公園の管理者がこの問題を扱う事は構造的に問題がある。江東区の人権課は、「公園を守ることが先決だ。人権はそのあとだ」と言った。これは憲法違反で、看板だけの人権課ではないのか。

江東区は居住権が基本的人権であり、何より勝ると認識すべきだ。社会運動団体の訴えの内容に正統性があれば態度を変えていくべきだ。

 サンマルタン広場の運動が成功した訳は、路上生活者が「真冬で死んでもいいですか」と訴え、市民、世論が動き、政治家が動き、法律を作ることができたからです。  以上

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堅川近況

竪川の2度目の引越しを行いました。

以下、ブログの文章をもとにした概要です。ご確認くださいませ。

2度目の行政代執行させないために、10月20日に現在の地点のすぐ近くの「副堤」というところに引越ししました。

「副堤部」といわれても聞きなれない方がいると思いますので、簡単に説明します。

河川が氾濫したときなどのために、河川には堤防が設けられています。その横に避難などするときに使う「副堤」といったスペースを確保することを法律で定められています。
竪川はすでに暗渠となっているため、副堤部の役割は失われており、空き地になっていたり建物が立っていたりします。

今回の代執行の対象場所を江東区に確認したところ、堤防の内面と内面の間の「公園区域」であると発言しました。

つまり、「副堤」は今回の代執行の対象外になるのです。
そのため、ここに移動することを決めました。

代執行の対象外ではありますが、10月22日に江東区水辺と緑の課が引越し先を視察にきたときの雰囲気をみると、なにをしてくるのか正直わかりません。

無理やりフェンスを設置し住めなくしたり、警察など共同で小屋を排除しにきたりすることだって考えられます。
引越したといえど、まだまだ状況は不安定です。

ぜひとも現地にきたり、情報を拡散させたり、ご支援ください!











Created by staff01. Last modified on 2012-10-23 20:05:59 Copyright: Default

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