本文の先頭へ
LNJ Logo 報告:10.13さようなら原発集会in日比谷
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 1013kuro
Status: published
View


10.13さようなら原発集会in日比谷

    報告=黒鉄好

日比谷野外音楽堂で開催された「10.13さようなら原発集会in日比谷」(さようなら原発1000万人アクション実行委員会主催)に参加しました。参加者は野音を埋め尽くし、主催者発表で6500人。ほとんどが労働組合関係者でした。

午後1時半から、集会はYaeさんのコンサートで始まりました。

午後2時からは、主催者・呼びかけ人を代表して、鎌田慧さん(ルポライター)があいさつ。JA(農協)グループが、10月10〜11日に開催された第26回定期大会で脱原発の運動方針を採択したことに触れ、「大間原発にたったひとりで反対してきた“あさこハウス”の熊谷あさ子さんは、「海と畑があれば他に何もなくても生きていける」と決して電力会社に土地を売らなかった。電源開発は彼女の土地をあきらめ、別の場所に原発を建てるため設計変更しなければならなかった。JAの方針転換は大きなできごとであり、命を生産する農業が原発と全く相容れないとわかった農業者の固い決意だ。この決意に応え、私たちは今こそ原発を叩き潰そう」と述べました。

続いて、名古屋での集会に参加するため、この場に参加できなかった落合恵子さん(作家)のメッセージが朗読。「私が中学生の頃、第2次大戦があった。私は中学生の素朴な思いで「大人たちはなぜみんなで反対しなかったの?」と訪ねた。…今、私たちは同じ過ちを犯し、同じことを問われている」。そして、1945年にラテンアメリカで初めてノーベル文学賞を受賞した女性作家の言葉を引きながら、「今まさに骨格が育ち、血肉が成長している子どもたちに、1日たりとも待てなどといえないように、被曝にさらされながら骨格が育ち、血肉が成長している福島の子どもたちに、1日たりとも待てということなどできない」と子どもを守る必要性を訴えました。

高橋哲哉さん(哲学者)は、「3.11でわかったことは、この国の政府は平気で国民を欺き、捨て去り、国民以外の住民を排除するということ。オスプレイの配備問題を見ても、政府・行政はどこを向いて仕事をしているのかといわざるを得ない」と政治・行政を強く批判。先日から報道されている福島県民健康管理調査をめぐる「秘密会」問題やSPEEDI隠ぺい問題等を挙げ、「福島で生まれた者として私が残念に思うことは、福島県もまたこの1年半のあいだ、県民に対して欺き・捨て去りに終始したことだ。国を変えることと同時に、こんな福島県を変えなければならない」と、住民切り捨ての福島県政変革を強く主張しました。その上で、「郡山市で、子どもたちに集団疎開を求める裁判(仮処分申請)が闘われている。福島県民には避難の権利が認められるべきだ」と、「ふくしま集団疎開裁判」への支援を訴えました。

福島現地からの訴えは、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」の森園かずえさん。「1年半経っても、私たちは地震が起きるたび、避難しなくてよいのだろうかと心配し、“あの日”に引き戻される。…福島では、蚊や蛾などの小動物が去年に比べてずっと少なかった。トンボは1匹しか目にせず、普段の年ならコンビニの青い紫外線灯(殺虫灯)に衝突しているはずの虫もほとんどいない」と福島での「命の危機」を訴えました。「いま、東京が、何事もなかったかのように生活していられるのは、懸命に収束作業に当たっている被曝労働者、作業員がいるから。3千人の作業員の6割は福島県民。加害者が被害者を雇っている。これが福島の現実だ。…こんな状態になっても原発を動かそうとする人たち。地球は人間だけのものじゃない。この会場には、普段働いている方も多いと思うが、私は原発メーカーである東芝・日立の人たちに、命とは何か問うてみたい」。

また、森園さんは、福島原発告訴団、ふくしま集団疎開裁判、「子ども・被災者支援法」の重要性に触れながら、これほどの事故でも誰も責任を取ろうとしない現状を変える必要を訴えました。「全国の女性たちはつながっていきましょう。その女性たちをサポートしている男性の皆さんも一緒に頑張りましょう」。

「あさこハウス」からは小笠原厚子さんが報告。「どんなに無視され、村八分にされ、孤立させられても、私の母は電源開発に決して土地を売らなかった。今、新規原発の建設を認めないと言いながら、政府は一方で大間原発の建設再開を認めたが、もし、母があのとき、あきらめて土地を売っていたら、今頃大間原発は稼働していただろう」と、1人でもあきらめず闘うことの必要性を訴えました。

呼びかけ人のひとり・大江健三郎さん(作家)は、「もともと希望とはあるものともないものとも言えない。それは地上の道のようなものである」という、中国の小説「故郷」(魯迅)の一節を引きながら、「原子力ムラの弱点は、私たちに何も希望を示せないこと。私たちはこうして集まり続ける限り希望がある。集まって道を作り、希望を持って行きよう」と述べました(ちなみに、「故郷」はこの一節の後、かの有名な「もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」に続きます)。

同じく呼びかけ人のひとりで、今日、体調不良のため欠席となった内橋克人さんに代わり、脱原発を宣言して注目を集めた城南信用金庫の吉原毅理事長が閉会のあいさつ。吉原理事長は、この集会に出席する直前、東京で開催中のIMF(国際通貨基金)・世界銀行総会に経営者のひとりとして参加した後、この集会に参加しました。日本広しといえども、IMF・世銀総会と反原発集会に同時に参加したのはこの人くらいでしょう。

「IMF・世銀総会に経営者の立場で参加してきたが、彼らの一番の心配は電力不足と、脱原発が電気料金値上げにつながることだった。しかしどちらも心配はいらない。電力は足りているし、原発は安いという宣伝も全く事実ではない。なぜなら、無限大のコストがかかる使用済み核燃料の処理費を電力会社はコストに含めていないからだ。なぜ含めていないか。後の世代、つまり子どもたちに初めからツケを回すつもりでいるからである。この会場には会社で働いている人が多いと思うが、会社とは会計でコミュニケーションを取る場所。そこで会計がおかしいという状態になっている」と、経営者独自の視点で、原発コストをごまかす電力会社、経営者を批判しました。

「政府が2030年代に原発ゼロの方針を決定したとき、経団連、経済同友会、日商の経済3団体が連名で「原発ゼロは現実的ではない」と共同声明を出した。(大飯原発)再稼働の時も「中小企業は再稼働で大変喜んでいます」と野田首相に感謝した。私も経済団体に属しているのに、あの共同声明を出すとき事前に何の相談もなかった。経済団体は中小企業の代表というが、いったいどこの中小企業の代表なのか」と、自分が所属している経済団体を批判しました。

「私はヘアードライヤーを使わなくてすむよう、髪を短くした。節電は誰にでもできる」と、吉原理事長は会場の笑いを誘いながら、こう述べました。「経営者の中にいると、やっぱり大事なのはカネ。でも、経済・企業活動の目的は本来、人を幸せにすることで、儲けはその手段に過ぎない。経営者でも、もう原発はこりごりだという人がたくさんいる。いま、経営者に求められているのは脱原発に踏み出す勇気だ」。

鎌田さん、落合さん、高橋さん、そのいずれもが「3.11がまるでなかったかのように再稼働の動きが強まっている」と、3.11の風化と原発推進派の巻き返しの動きに強い危惧を抱いている点で共通していました。

その後、参加者は、会場周辺をデモ行進して脱原発を訴えました。

福島集団疎開裁判、福島原発告訴団運動はともに、いま最も重要な局面を迎えています。集団疎開裁判は、住民の請求を棄却した1審・福島地裁郡山支部決定を受け、現在、仙台高裁で抗告審が行われていますが、一般の裁判の弁論に当たる審尋が行われるなど、1審の決定を変更させる道が開かれつつあります。福島原発告訴団運動には、筆者も事務局周辺にいる者として関わっていますが、世間の関心も高く、被害の大きかった関東・東北を中心に、告訴人1万人を目標として進められています。告訴人を福島県民・福島避難者に限定した第1次告訴(6月11日)に次ぐ第2次提訴は11月15日に予定しており、現在はラストスパートの情勢です。まだ参加していない方、国や東京電力に責任を取らせたい方は、締切が迫っていますので、ぜひご参加をお願いします。

「子ども・被災者支援法」は、今年6月、超党派で提案され、全会一致での成立を見ました。被災者救済の概略だけを示す理念法であり、誰を、どのように支援するかは今後、復興庁が定める基本計画で策定されます。救済範囲を具体化し少しでも広げたい被災者と、「財政難」を理由に支援範囲をできるだけ狭めようとの思惑を持つ政治・官僚との激しいせめぎ合いが続いており、こちらも重要な局面を迎えています。

疎開裁判、告訴団運動、子ども・被災者支援法の闘いはリンクしています。福島では、すべてを失い、最後にひとつだけ残った健康さえ奪われようとしている県民の厳しい現実があります。全国、全世界からの支援が必要とされています。福島を忘れず、見失うことなく、福島を原点に、切り離されそうになっている連帯の手を、もう一度、強く、握り合っていきましょう。


Created by staff01. Last modified on 2012-10-14 12:45:55 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について