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LNJ Logo 報告 : 東京・荒川で「平和憲法からこの国の今を問う」シンポジウム
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10月5日、「平和憲法からこの国の今を問う」と題するシンポジウムが都内で開催され、3人のパネリストが緊迫する今日の情勢について、それぞれの立場から問題提起をした。

主催したのは東京・荒川区と周辺の市民有志で構成する「平和憲法を守る荒川の会」。草の根の運動を続け、年次総会のプログラムとして企画した。会場の町屋文化センターには、会員ら約40人が集まった。

開会後、同会のこれまでの活動を記録した写真が上映された。共同代表の森谷新さんは基調提案として、「平和憲法の危機」、「脱原発の闘い」、「基地撤去・オスプレイ配備反対の闘い」、「平和・人権問題の闘い」と、4つの項目で発言。「問題山積の現在、平和憲法を社会の隅々まで生かす活動が求められています。みなさん、共にがんばりましょう」と呼びかけた。

■惨事便乗型改憲論

「大震災の後は、日本が大きく反動化する可能性がある」。領土問題を論じる国際会議をキャンセルして駆けつけた高田健さん(許すな憲法改悪!市民連絡会)。冒頭であるジャーナリストの言葉を紹介した。当初実感がわかなかった発想だが、時間が経つにつれ、その予告通りに事態は進んでいく。

ナオミ・クラインは著書で「惨事便乗型資本主義」による新自由主義のさらなる収奪強化を語っているが、現在、「惨事便乗型改憲論」が噴き出していると高田さんは指摘。昨年5月から憲法審査会が動き出したこと。自民党総裁選候補に、党内のタカ派ばかりが集まった事例を挙げた。

今年は「日中国交正常化40周年」にあたり、本来ならアジアの友好・共存関係を確認し、双方に祝福ムードが盛り上がるはずだった。ところが都知事石原には、これがどうしても許せなかった。そこでみずから「尖閣問題」に火をつけ、挑発的な世論を煽っていった。

「それでも、関東大震災以後の治安維持法制定当時と今では、民衆の成熟度が明らかに違っている。中国、韓国、台湾、沖縄と、変わりつつある本土の運動が連帯して、戦争の動きに反対していくことができる」。「大震災、改憲、領土問題。一連の出来事がしっかりと結びついている。これにどう立ち向かっていくか。そういうことを一生懸命考えながら、毎日バタバタと活動しています」。高田さんは、穏やかだが確信に満ちた語り口で、聴衆を引き込んだ。

■福島は社会の矛盾の頂点

いつも切ない思いで福島に帰るという椎名千恵子さん(放射能から子どもを守る福島ネットワーク)は、県民の厳しい暮らしぶりを淡々と語った。活動の柱は、保養・防護・情報共有・行政対応の4つ。原発事故の責任を追及する訴訟のかたわら、子供たちの健康を守るため診療所建設運動も担う。

福島に戻る人は、放射線量の高さを、自身の体調の変化で敏感に感じ取るという。昨年5月頃から鼻血を出す子ども、心因性疾患で倒れるケースが増えてきた。子供と高齢者がバタバタと死んでいく。 不十分な医療体制のなかで、やっと検査が受けられても、結果には納得できない。見つけられたしこりやのう胞がどこにいくつあるのか。詳細はいっさい知らされず、次回の検査は2年後だ。転々とした避難先の最後の地で「即手術」と宣告された30代の女性もいた。そんな深刻な情報がいくつも伝わってくる。

健康管理調査検討委員会の「準備会」を、県が密室で開いていたことが明らかになった。人々の不安や不信感を抑え込み、紛争を封じるためのシナリオが、事前に作られていたのだ。

「復興」が声高に叫ばれ、「全国大会」と名のつくイベントが頻繁に行なわれている。それに子供たちが駆り出されている。危険な高線量地帯で「花火大会」「餃子大会」など、有名人を使って全国から無料で被ばく地に呼ぶ。安全安心の一大キャンペーンが張られている。

「今の社会の矛盾の頂点が福島です。ぜひ、福島の現実に目を向け続けてほしい」。椎名さんは一語一語をかみしめるように報告した。

「子供たちの精神状態はどうなのか」と会場から質問があった。私の孫の世代、中学生くらいになると、「私たちはもう子供を産めないのよね」とふてくされる。散歩をすれば「被ばくしてきちゃった」と吐き捨てる。そんな言葉を耳にするたびに心が痛 む。「放射能」というファクターは、もはや福島の日常の暮らしから切り離せない。子供たちを導くバイブルは、いったいどこにあるのか。それは誰がつくるのか。椎名さんは、子供たちの将来に思いを寄せ、何度も言葉を詰まらせた。

■沖縄だけの問題ではない

「憲法への憧れと情熱は、本土の人々以上だった」と切り出したのは、沖縄反戦地主会関東ブロックの木村辰彦さん。1959年に那覇で生まれた。戦後の沖縄に適用されたのは、平和憲法の基本的人権ではなく日米安保だった。それでも「本土復帰」では、強制的に取り上げられた県民の軍用地が地主に戻ってくると信じていた。だが71年の沖縄国会で復帰後も強制収容の継続が決まった。

岩国に強行配備されたオスプレイ12機のうち、すでに3機が整備不良で飛べない。まさに欠陥機だ。普天間のゲート前では自民党議員も座り込んでいる。配備反対の闘いに、保守・革新の違いを超えて、県民が総ぐるみ、一丸となって闘っている。

横田基地にもオスプレイが来る。東京の上空も飛ぶかも知れない。沖縄の人々は長い間「自分たちの痛みを他者に押しつけない」と耐えてきた。しかし、これ以上本土の人々が沖縄の現状に無関心でいるなら、「基地は本土に持って行ってくれ。そうすれば初めて沖縄の痛みがわかるだろう」と言い出すところまで、運動が追い込まれている。なぜここまで、沖縄ばかり差別するのか。

木村さんは何度も「オスプレイ、普天間、高江。これは沖縄だけの問題ではない」と強調。本土の人々に、もう一度一緒に闘ってほしいと呼びかけた。

今回で6度目を数える「荒憲の会」総会。発言者の誰もが、怒りと悔しさをにじませながら、それでも負けずに、現実に立ち向かっていく決意を来場者と共有した。

フィナーレは椎名さんの指導による「かんしょ踊り」。忙しい秋の闘いに向け、連帯の大きな輪が回り出した。(Y)


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