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河原井・根津「君が代」裁判・最高裁判決の二つの顔

             佐々木有美

1月16日12時半、最高裁南門まえは、傍聴を希望する160名あまりの人と報道陣で埋まった。河原井・根津「君が代」裁判の最高裁判決が午後1時半にある。わたしは、傍聴の抽選にはずれ、門の付近で旗出しを待った。河原井・根津「君が代」裁判は昨年11月に最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)で裁量権問題について弁論が開かれ、高裁で認められた停職処分は取り消しになるはずだった。(弁論は二審判決を見直すときにのみ開かれる)

1時半を過ぎること数分。中から出てきた岩井信弁護士が持っていたのは「逆転勝利判決」ではなく「分断判決弾劾」の旗だった。勝利とばかり思いこんでいたわたしは一瞬旗の意味が理解できなかった。岩井弁護士によれば、河原井純子さんの停職処分は取り消し、しかし根津公子さんの上告は棄却というものだった。同じように生徒を思い「君が代」不起立を続けてきた二人に、なぜ最高裁は、まったく正反対の判決を出したのか。心の中では、最高裁に裏切られたという思いと、早く判決の理由を確かめたいという思いが交錯した。

記者会見(写真上)は午後2時半から始まった。戸田綾美弁護士は、判決理由について「今回の判決は、減給以上の処分には慎重な考慮が必要と述べている。判決は、河原井さんは、不起立を続けただけで行事の妨害もせず、処分回数も多くない。だから停職処分は裁量権の濫用に当たるとした。一方根津さんは過去、再発防止研修でゼッケンをつけたこと、卒業式で国旗の掲揚を妨害したことなどを理由で上告を棄却された。」と語った。つまり、根津さんは「不起立」とは直接関係ない過去の処分歴を問題にされ、上告棄却となったということだ。あまりにもアンフェアーだ。「君が代」不起立のシンボル的存在であり、しかも主体的な抵抗をし続けた根津さんの処分だけは何としても取り消したくないというのが最高裁のホンネではないかと思った。

判決報告会で岩井弁護士は、「今日の判決では、秩序は個性を嫌う、もしくは、秩序は秩序に歯向かうものを嫌う、と感じた。判決は非常に露骨に、学校の規律と秩序の保持の必要性と処分による不利益の内容を較べて処分を決めるべきだと言っている。根津さんが過去にしたことに対する非常な嫌悪感を示している。今回は行為を処罰したのではなく、態度を処罰している。人格を非難している。これは法律的な判断ではなくて非常に政治的な判決だ。」と語った。処分を取り消すといった度量を示しつつ、一方では権力の秩序を乱すものは絶対に許さないというのがこの判決のもう一つの顔だった。

判決内容に問題をはらみつつも、今回の判決が河原井さんの停職処分を取り消した意味は大きい。16日には他に2件、「君が代」訴訟の最高裁判決があり、うち1件では減給処分が取り消された。最高裁は戒告は認めつつ、減給・停職の重処分については処分権者に慎重な考慮を求めた。大阪の教育基本条例では、3回の職務命令違反で、教員が解雇されることになっている。河原井さん、根津さんは、「分断判決」に怒りつつ、今回の判決がこの条例に歯止めをかけるものになることを期待したいと述べた。


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