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LNJ Logo 中国高速鉄道事故について/安全問題研究会
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23日に発生した中国高速鉄道の事故については、鉄道ファンのひとりとして衝撃を受けている。中国でこれだけの規模の鉄道事故は、日本の修学旅行生らが多数犠牲になった1988年の上海列車事故以来ではないだろうか。鉄道ブログとして犠牲者のご冥福をお祈りする。

私は海外の鉄道事情には疎い上に情報も少なくて何とも言えないのだが、「推定される事故原因」「同種の事故は日本でも起こりうるか」「突貫工事は事故に影響したか」「設計・施工上の問題」「事故車両を埋却して1日半で運行を再開する中国鉄道省の姿勢」の5点についてのみ、報道の範囲内で言えることをコメントしておきたい。

参考記事 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110724-00000621-yom-int

1.推定される事故原因について

中国当局は事故原因を落雷が原因と発表しているが、1年中自然災害だらけの日本の感覚では非常に違和感を覚える。鉄道というのは、たかが落雷ごときで事故を起こすようではいけないのである。

先行列車と追突した後続列車との車間距離がきちんと維持されていたか、また落雷で先行列車が停止したのに、後続列車にはなぜ非常ブレーキが自動でかからなかったのかが当面の焦点だと思う。高速鉄道は在来線と異なり、非常ブレーキをかけても実際に列車が停止するまで2〜3kmも走ってしまう(運転時間にすると30秒弱)。それだけの車間距離が確保されていたかどうか。

また、日本の新幹線の場合、落雷によって停電した区間で列車が停止した場合、停電していない区間を走っている後続列車にもすべて自動で非常ブレーキがかかるように設計されている。このような設計がされていたかどうか、されていた場合は事故当日、なぜその設計通りに保安装置が動作しなかったのかが事故原因を解明する上で最大の焦点だ。

2.同種の事故は日本でも起こりうるか

1で述べたとおり、日本のシステムでは落雷によって停電した区間で列車が停止した場合、停電していない区間を走っている後続列車にもすべて自動で非常ブレーキがかかるように設計されているから、保安装置の故障、あるいは乗務員が故意に保安装置を切って走行するという重大な規定違反がない限り、このような事故の可能性はほぼない。

ただ、日本の新幹線もATC(自動列車制御装置)を切って走行することは可能であり、実際に2002年6月、山陽新幹線で「こだま」がATCを切ったまま40km近く走行するという事例が起きている。落雷による不意の停電で先行列車が停車しているときに、後続列車がATCを入れ忘れるという人為ミスが重なれば、日本でもこのような事故の可能性があり得ることは指摘しておく必要がある。

3.「突貫工事」は事故に影響したか

一般メディアでは、突貫工事が事故に影響したという見方が多いが、私は現状では何とも言えないと思っている。東海道新幹線も1959年に起工し、64年の開通まで工期は5年しかなかった。事前に入念なシステムの設計と技術力、そして手抜きをしない「生真面目さ」があれば、工期がある程度短くても安全な鉄道の建設は不可能ではない(もちろん、1〜2年の工期ではさすがに無理だろう)。

4.設計・施工上の問題は

むしろ、各国の技術を寄せ集めて木に竹を接いだようなシステムにしたことが事故の最大の要因に挙げられそうだ。鉄道は車両だけでなく、線路や軌道、保安装置などが一体のシステムとして動くものだ。それを各国技術のつぎはぎという形にしたことが事故の最大の要因と考えられる。

車両には日本の川崎重工業製の他、カナダのボンバルディア製も使われている。ボンバルディアといえば、高知空港での胴体着陸事故などを起こし、世界一危険といわれる飛行機DHC8−Q400のメーカーとしても知られている。機体そのものも問題だが、トラブルが頻発するまで整備マニュアルも作成していなかったような会社だ。車両を外国に発注すること自体を否定はしないが、せめてもっと相手を選べと言いたくなる。

5.事故車両を埋却して1日半で運行を再開する中国鉄道省の姿勢

中国当局は運転記録やデータが収められたブラックボックス回収後に事故車両を埋めたと報道されているが、仮にそうだとしても、現場検証が終わるまでは現場を保存するのが先進国の事故調査の鉄則だ。いまこの時期に車両を埋めるという行為はこれに反するものであり、証拠隠滅と受け取られても仕方がない。事故犠牲者の遺族がこの事態を見たらどのように思うだろうか。

中国は昨年、ついにGDPで日本を抜いて世界第2位の経済大国になったが、社会を真の一流に成長させたければこのような無益な行動は慎むべきだ(福島原発事故を巡る見苦しい言い訳や隠蔽の数々を見せつけられ、日本も他国のことをとやかく言えないが)。むしろ、犠牲者をこの事故で最後とし、せっかく開業にこぎ着けた高速鉄道をより安全なものに変えていくための反省と再挑戦の機会と捉えることが必要である。犠牲者がこれで最後となるかどうかは、中国鉄道当局がこうした意識を持てるかどうかにかかっているといえよう。

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黒鉄 好 aichi200410@yahoo.co.jp

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