報告 : 「見殺しにされてたまるか」双葉町・賠償問題住民集会 | |||||||
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「見殺しにされてたまるか」 双葉町・賠償問題住民集会レポート 堀切さとみ 3・11以降、着の身着のままで避難所を転々とさせられ、埼玉・騎西高校での集団避難を余儀なくされた双葉町の人々。八ヶ月間、やり場のない思いに耐えてきた町民に対して、国も東電も「帰れるのか帰れないのか」の方針もしめさず、町の復興計画は地元まかせだ。 11月8日、賠償問題をめぐる住民集会が行われた。双葉町民がこうした集会を開くのは初めてのこと。よびかけた堀井五郎さん(64・写真上)は、騎西高校体育館に集まったおよそ百人を前に「みんないつまでここにいるつもりなんだ。このままガマンして黙ってていいのか。我々のほうから国や東電に賠償の話をもちかけていこう」と檄をとばした。 ●「帰れないことはわかってるんだ」 堀井さんは現在、騎西高校を出て福島県内の仮設住宅に移っている。仮設の生活環境がいかに孤独で情報もないかということを伝え「大勢がまとまってるこの場所で皆が話し、まとまった賠償案を出していけば、よその仮設でもそういう声が出てくると思う」「おれは東電で長年働いて、放射能管理のことも多少は勉強した。放射能は消えない。あと90年、120年は帰れないと思ってる。だったら賠償金を請求して、一人ひとりの生活を再建して、故郷に戻れる日を待つ。それしかないだろう」 そう口火を切ると、集まった双葉町の人たちも、立ち上がって自分の思いを訴え始めた。 「セシウムの半減期は三十年。加須市に世話になっているが、三十年もこの建物にいられますか?年寄りが弁当持って、ヨイショヨイショと四階まで階段上がっていく姿をみると、涙が出ます。 国や東電は『共存共栄』『国策』と言ってきた。でも電気そのものを、双葉や大熊で使ってた人いますか?『原発の近くに住んで、うるおっていたでしょう』と言われるが、それは違う。自分が放射能を浴び、危険な仕事をしてきた、そのお金なんだ。うるおいではない。共存共栄を言うなら、ばらばらになっている町民を一箇所に集め、公務員住宅のようなものを建てて、双葉に帰れるようになるまで皆で暮らせるようにしてほしい」 「双葉、南相馬などに仮設住宅が建っているが、放射線量きちんと管理されていない。仮設に入った町民の中には、余計な放射腺を浴びてる人もいます。十歳の娘をつれて帰るのはかなりきびしいです。会津地方だと仕事がありません。県内には帰りたいけど帰れません」 「ここにいる人たち、高齢化でどんどん亡くなって、皆、この近くのお寺に入ってます。われわれの墓は双葉にあるんだ。でも行けないから、賠償金もらってここを出て代わりの所に住んで、帰れる日を待つしかない。国も東電もカネがないと言っているが、いくらでもある。加須の市議会に聞いたが、双葉町が来たことで、埼玉と馬の県境の農家に、風評被害対策といって一軒あたり60万円ずつ払ったらしい。『双葉は出て行け』といわんばかりだ。だからっておれたちは自由に帰ることなんかできない。人権蹂躙だ」 ●町民と向き合わない東電 集会の中盤、賠償金なんていいから早く双葉に帰りたいという声も上がった。それに対して「原発事故賠償を考える会」代表の朝川栄さん(55・写真上)がいう。 「双葉、大熊に放射能除染の大きなプラントを立てる計画がある。何十億ってカネをかけてだ。こんなのムダだ。三年、五年たって、やっぱり除染できませんでしたなんていうのは目にみえてるんだ」 戻れるかのような幻想をつくるために除染だなんだと手間ヒマをかける。しかも住民の頭越しにだ。そんなところにお金を使うくらいなら、住民の補償にあてるべきだと朝川さんはいう。 井戸川町長も「放射能でふるさとを汚した挙げ句、これまで『安全です』と言ってきたことを反省して謝罪もないまま、何かを新たにつくるなんてとんでもない話」(朝日新聞)と言っている。 九月半ばに東電社員が150ページにおよぶ分厚いパンフレットを持参し、個人面談形式の賠償説明会を行おうとした。「一言の謝罪もなく一方的な話を持ち込むのはおかしい」という声があがり、騎西高校での説明会は中止になった。今回の住民集会はあまりにも町民を無視した東電の対応に対し、やむにやまれぬ思いで開かれたといえるだろう。「双葉の人間はおとなしいが、今こそ言わねばと思っていた。今日はこういう集会を開いてもらってよかった」という声が、幾人からも聞かれた。 およそ一時間半の集会のあと、堀井さんは語った。「俺は三十年、東電での仕事に誇りをもってたし、原発は絶対安全だっていう自信があった。今回の爆発だってしようがないと思ってきた。出稼ぎするしかない俺たちにとって、原発は有難かったんだ。東電と町民。おたがいに助け合ってきたじゃないかという思いがある。それが何だ。今回のことで東電社長は一度だって謝りに来たか?オレは未だにそれが信じられない」 「今だまっていたら、東電は『なあんだこんなもんで済んだ』『今までどおりでいいや』となるだろう。賠償金そのものよりも、安全対策を一生懸命やれって言いたい。それがオレの本当の気持ちなんだ」 双葉町のひとたちは原発とともに生き、東電を信じてきた。その人たちが今、東電のあまりの不誠実さに声を震わせている。 7日には臨時町議会で、五千万円を計上して東電への賠償請求交渉を行う弁護団を結成した。12月3日には福島原発周辺の八町村が集まって、住民総決起大会も開かれる予定だ。 ↓東電の住民説明会を中止に追い込んだ堀井さんの記事(東京新聞) Created by staff01. Last modified on 2011-11-13 19:43:19 Copyright: Default |