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LNJ Logo レイバーネットTV第21号「TPPってなに?」テキスト版
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*以下は、10月20日に放送された「レイバーネットTV」第21号放送「TPPってなに? 知らないうちにハゲタカの餌食」の全テキストです。ご活用ください。(作成=ゆか 写真=杭迫隆太)
 またアーカイブは以下で視聴できます。http://www.ustream.tv/recorded/17990607

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松元:こんばんは。労働者の、労働者による、労働者のためのメディア、レイバーネットTVの時間がやってまいりました。キャスターの松元ちえです。

土屋:こんばんは。同じくキャスターの土屋トカチです。震災に便乗して、とっても恐ろしいことが起ころうとしております。日本政府は推進しておりますが、ちゃんと理解して、本当に私たちに必要なものなのかどうかを判断したいところでございます。その恐ろしいこと、今日の特集は「特集 TPPってなに?知らないうちにハゲタカの餌食」

松元:ハゲタカですよ。

土屋:恐ろしいですね〜。見たことないけどハゲタカってね。(笑)忍び寄ってきてるそうですよ。8時20分頃からお伝えいたします。ということで、恒例のワンポイント英会話でございますけれども。TPPってそもそも何ていうんだ?ってことですけどね。お願いします。

松元:はい。ここにも、ちょっと小さくて見えませんが、書いてありますが。
Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement
[tr'nz 'fik strti:ik i:na'mik pa'rtngri:nt]

<会場からは戸惑いがちの散漫としたレスポンス>

土屋:皆さんもう完璧ですよね。もっかい言ってくださいじゃあ。

松元:はい。(笑)Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement

土屋:まあ皆、番組が終わる頃には皆これ発音できるようにね。(笑)

松元:これ、プレゼントでもあるので。

土屋:ああこの本ね。

松元:そしたらここ、確認できます。今晩のレイバーネットTVは、新宿三丁目のバンブースタジオから放送しています。たくさんの方がスタジオにお集まりです。スタジオの外からもTwitterでご意見や質問などお寄せください。ハッシュタグは#labornettvです。まずは、今月のニュースダイジェストを。尾澤さん、お願いします。

【ニュースダイジェスト】

担当:尾澤 邦子さん

こんばんは。
10月15日、「ウォール街を占拠せよ!世界同時アクション」が世界82カ国950ヶ所以上で行われました。

<映像:アメリカ・ニューヨーク、スペイン・マドリード、フランス・レンヌ市、東京・六本木、東京・新宿各所のOccupy>

ニューヨークでは、「我々は苦しんでいる99%の庶民だ!」と1ヶ月にわたり抗議活動を続けていた公園のデモ隊が、市から立ち退きを求められていました。しかし、撤回に追い込みました。スペインのマドリードでは50万人が大通りを埋め尽くしました。フランスでは、7つの都市で行動が行われました。特にレンヌ市では2000人以上が集まり、ブルターニュ地方の音楽やドラムにあわせた脱原発デモが行われました。またロンドンやローマ、ソウル、台湾などでも格差に怒る民衆のデモが行われました。東京では、日比谷、新宿、六本木で行動が取り組まれました。六本木の三河台公園には約200人が集まり、一人ひとりが自由にアピールしました。スカイプでアメリカとつないだり、カレーを食べたり、ドラムをたたいたり、自由な広場空間が生まれました。新宿には約300人が集まり、「“怒れる者たち”の世界同時行動に連帯を!occupy tokyo」と訴え、デモ行進しました。プラカードには、「もうたくさんだ!」「変革を!」「グローバル・チェンジ」などの文字が書かれていました。

次です。
10月16日、反貧困世直し大集会が東京の法政大学で開催されました。

<映像:10月16日の反貧困世直し大集会、本会場、サブ会場ユースト、分科会など>

テーマは「震災があぶりだした貧困」。被災者・被災地からのリレートーク、13の分科会、シンポジウム「生きるために必要なこと」の3つのパートに分けて進められました。リレートークでは、津波で肉親を失った人、仕事がなくなり解雇され3人の子育てで途方にくれている人、原発労働者の苦悩、漁業・農業が奪われた人など、被災地の深刻な実態が生の言葉で語られました。シンポジウムでは「これからどうしたらいいのか」をめぐって会場を交えてディスカッションが続きました。最後に約600人の参加者全員で「貧困なくそう」のスタンドアップを行いました。

次は、フィリピントヨタ労組の現地と日本での共同行動のニュースです。

<映像:トヨタ名古屋本社前抗議行動、トヨタ東京本社前抗議行動、フィリピン現地抗議行動>

フィリピントヨタ労組を支援する会は、10月9日から12日、11年に及ぶフィリピントヨタ労組の解雇闘争の解決を求めて、フィリピンと日本で共同行動に取り組みました。9日、トヨタ名古屋本社前で行われた情宣活動で、フィリピンから来日した労組のロエル職場委員は「トヨタはきれいごとを言っているが、実際はILO勧告を無視し、人権無視の汚いことを行っている」とトヨタを批判しました。またウェニー副委員長は、勝利するまで闘うと訴えました。10日は、トヨタ本社工場周辺で支援要請のチラシを配布し、また愛知本社に申し入れを行いました。フィリピン現地では10月10日、支援の他労組の組合員たちと共に、フィリピン雇用労働省、法務省、日本大使館などで抗議行動が行われました。

次です。
文化の日の11月3日、西新宿の小学校跡地、芸能花伝舎で「フリーランス文化祭2011」が開かれます。

<映像:昨年のフリーランス文化祭、2011年版チラシ>

「クリエイター、アーティスト、フリーな働き方をしている人、大集合」と呼びかけるこの文化祭は、昨年から始まりました。主催は音楽ユニオン、映画演劇アニメユニオン、インディユニオン、出版ネッツ。フリーランスが集う4つのユニオンです。昨年はライブ、展示のほか、フリーランスの仕事と生き方をめぐる本音のしゃべり場が盛り上がりました。2回目の今年のテーマは、「変わる世界をどう生きるのか」。コンサートやライブ、仕事展、トークセッションなど盛りだくさんで、静止画にセリフや効果音を加えたアート作品「画(が)ニメ」の上映も注目です。こちらがチラシです。楽しそうですね。11月3日の14時から20時、会場は芸能花伝舎(かでんしゃ)。参加費は資料代500円です。詳しくは03−5909−3062音楽ユニオンにお電話するか、ネットで「フリーランス文化祭」と検索してください。

以上、ニュースダイジェストでした。

松元:尾澤さん、ありがとうございました。
一番最初にOccupy Tokyoのニュースがあったんですけども、あれちょっと静止画しかなかったので、映像をちょっと観たいな、と思って。

尾澤:あ、いいですね。

土屋:行ったからね。

松元:はい、是非映像を。

<映像:Occupy Tokyo六本木>
松原:すごいでも公安の、警察の数だね。

松元:公安警察らしいですよ。なんか上から見張られてるからあんまり好きな体制じゃないんですけどこれ(笑)。

参加者1:金に依存して生活する、金を求め続ける生活はもうやめようじゃないか!若者だって怒ってんだコノヤロー!

参加者2:警察の皆さんも私たちを守ってください!1%を守るのはもうやめてください!

<スカイプでアメリカとつながる>

みんなの顔が見えている、というアメリカからの返答に、声援をカメラに送る。

ジョニーH:Tokyo Occupy!Tokyo Occupy!

(アーカイブ= http://www.ustream.tv/channel/labornet02 )

松元:はい、盛り上がりました。六本木だったんですけど、スペインマドリッド50万人とか、

尾澤:すごいですね〜。

土屋:数が全然違うけどね。

松元:東京は数百人だったんですけど、それでもやっぱり、今回、自分の声を聞いてもらいたい、っていう人たちがたくさんいて。見えたと思うんですけど、手作りのプラカードで、一人一人個人で参加されてた方が多かったんですよね。また第二回目も。今度はバラバラじゃなくて皆で一緒にやろう、っていう話も出ています。

土屋:一ヶ所でね。

松元:レイバーネットTVでは、英語と日本語の映像が、今YouTubeにアップされているので、是非ご覧ください。

土屋:はい、チェックしてみてください、ということでね。

松元:ということで、どうもありがとうございました。

土屋:尾澤さん、ありがとうございました。

松元:次は、さっき「ウオー!!」ってやってたジョニーさん。

土屋:雄叫びをね、言ってた。Occupy Tokyoでも活躍してたジョニーHさん、乱さんの不満★自慢のコーナーでございます。

松元:歌も作っていただいたので。


【不満★自慢】

右:ジョニーHさん
左:乱 鬼龍さん


誰にだって不満はあるさ 特に仕事をしていれば
その不満 とんでもない 労働問題かもしれないぜ


ジョニー:不満自慢コーナーのお時間がやってまいりました。お相手は私ジョニーHと。

乱:川柳界の若手、乱鬼龍です。

ジョニー:さきほどニュースダイジェストで出ましたけど、occupy tokyo。occupyってなんか、僕はトイレのイメージがあって。(笑)トントンってノックすると、”オキュパイ””ああ、入ってるんだ”って、そればっかりイメージがあったけど、どうもその”占拠する”という意味ですごいな、と思いましたけどね。すごい言い方なんですよね。で、1%の富裕層、この”富裕層”っていうのも乱さんとか僕みたいに”浮遊してる”っていうイメージがあったんだけども、すげえ、ギガ、”ギザ金持ち”みたいな。”超金持ち”みたいな。で、企業も入ってんだよね、それね。それ意外と、セレブの人じゃなくて、企業も実は、というところがあるんで。その1%の富裕層のために99、99%の人が泣いてるよ、ということで貧乏でいるという、われわれ世界の99%の不満を代表して、なんかすごくえらそうですけども(笑)。かつてヒットしたあの、ドイツの女性ボーカル・ネーナの♪ルフトバルーンは99♪、英語や日本語では♪ロックバルーンは99♪の替え歌で♪occupy tokyoロックするのは99♪です。

「occupy tokyo ロックするのは99」 by ジョニーH
( 原曲 ネーナ 「ロックバルーンは99」 )

1%の悪魔が99を苦しめている
世界中の99 苦い涙を流している
泣いて泣いて99が毎日流す苦い涙を
1%の悪魔が全部吸い取り甘い酒にする

1%の悪魔は毎日着飾りパーティー開く
世界中の99汗水流すが腹は満たない
だからだから99甘い酒蔵占拠して
1%の悪魔が溜め込んだ甘い酒をとりもどす


ジョニー:元歌は素晴らしい、本当は反戦の歌なんですけども替え歌にしてみました。六本木や反貧困でも歌いましたけども、もっとでかいテーマで。今日このあとTPPの話が、発音難しいですけども(笑)、それが出てくるんで、農業以外に医療関係、教育関係、福祉関係も意外と関係あるんじゃないか。そんな話今日聞けるかなと楽しみにしながら、この歌でいきたいと思います。♪にっちもさっちも貧乏人は♪。”Tell me how can a poor man stand such times and live?”

「にっちもさっちも貧乏人は」 by ジョニーH
(原曲 BLIND ALFRED REED 「Tell me how can a poor man stand such times and live?」)

Tell me, how can a poor man Stand such times and live? ×2
Tell me, how can a poor man Stand such times and live? ×2
にこにこしながら医者が言うのさ しばらくすれば良くなりますよと
そして眠り薬と 炭水化物の粉と 多額の請求書をくれる
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
にっちもさっちも渡っていけない
物価が上がって 収入変わらず 物価が変わらず 収入下がる
物価が下がって 仕事がなくなり 収入そのもの 全くなくなり  
いつまでたっても何にも買えない
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
にっちもさっちも渡っていけない

(さあ駄菓子屋を知ってる世代の方たちに歌いたいと思います!年代によって違いますけど、10円が結構貴重でしたよね〜)
10円持って5円のハムカツ 後の5円で夢を買った(ジョニー:5円で何買いましたっけ乱さん? 乱:飴せんべいめんこビー玉… ジョニー:そうですよね)
そんな時代ははるか昔 5円玉は税金用に  水を飲むのに105円払う
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
にっちもさっちも渡っていけない

消費税が上がるそうだぜ(乱:テーピーピーなんてものも、今晩やりますけど、やってきそうだということで。 ジョニー:テーピーピーですよねいいですよね。(笑)テーピーピーでいいんです!消費税が上がるそうですけども)
なかなか結構なことだそうだぜ(乱:消費税は悪税だよ。1%でも悪税。 ジョニー:乱さんありがとうございます)
でも一体何に使うのか 政治屋たちが食い尽くす 貧乏人はとられ損だぜ
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
(ま)ったく貧乏人には今の世の中 にっちもさっちも渡っていけない
にっちもさっちも渡っていけない

Tell me, how can a poor man Stand such times and live? ×2
Tell me, how can a poor man Stand such times and live?×2


ジョニー:ありがとうございました。次は川柳ですが、告知しましたようにTPPに関する川柳を募集しておりまして。今日はその、川柳のいいやつを、乱さんが発表してくれるってことで。投稿した人、楽しみに。

乱:近くからもトークが来ましたってんで(笑)。
えーと最近私の字読めるようになってきたんですよ段々。(笑)
段々相田みつを風になってきたでしょ?(笑)
ご紹介します。
「TPP 甘言駆使し やって来る」
非常に甘い言葉で言ってますけど毒がいっぱい、というね。

土屋:”言”って言葉読めないですよこれ。ハングルかと思っちゃった(笑)。

ジョニー:そうですよね(笑)。

乱:「TPP 知らないうちに 丸裸」
まあ今までの福祉だの農業だの、非常に曖昧でいい加減なんだけど、その権利とか条件すらも緩和とか何とか言いながら実に丸裸にしちゃうよ、という句ですね。

乱:「テーピーピー 危険な音が 鳴り響く」
なんか、テーピーピーって耳に聞こえてくるけども、それは何となく危険信号だなと、そういう感じですね。わざとカタカナで書いてるところが面白いところで。そういうのがまさに、俳句じゃない、川柳なとこだよね。

ジョニー:(テーピーピーの危険信号音真似)

乱:「亡国の 邪論TPP を吠え」乱鬼龍
今から100年ほど前に、田中正造が「亡国に至るを知らざるは、これすなわち亡国なり」っつったけども、弟子の一人だった黒沢酉蔵は、まだ若かりし頃ですけど、田中正造が日本は滅びるっつった時意味がわかんなかったと。だけど自分だけがわかんなかったんじゃなくて、周りにいた誰もわかんなかったんだってなことを、後に言ってますけどもね。このTPP問題が、あるいは原発もそうですけども、日本を滅ぼして、何が平和だ民主主義だという気がしますね。というようなところです。

ジョニー:ありがとうございました。ということで今日の不満自慢は、TPPと99に特化しましたけども。

土屋:元歌がわかんないっていう問い合わせがあったよ。

ジョニー:ネーナのほうは、多分?「トップガン」か何かの挿入歌で使ってたかもしれませんね?ドイツの曲だけどアメリカで「ロックバルーンは99」で検索すれば出てくると思います。「にっちもさっちも貧乏人は」のほうは、「Tell me how can a poor man stand such times and live?」、これはブラインドアルフレッドリードという人が、1940年代に歌ってたんですけど、それをライ・クーダという人が発掘して、ライ・クーダがちょっとだけヒットさせましたね。

乱:また今日発掘したと。

ジョニー:ジョニーHが今発掘(笑)ちがうか(笑)ありがとうございます。

土屋:ライ・クーダとジョニーHが並んじゃったってすごいね。

ジョニー:ありがとうございます。

乱:現代の唖蝉坊みたいになっちゃった。

ジョニー:ありがとうございます。
ということで、23日出ますんで。
ここでは僕がパクっちゃった、制服向上委員会と競演になっちゃいましたんで(笑)。ちょっと恥ずかしいかな、っていうのもあるんですけども。

土屋:先生と教え子みたいだね。

ジョニー:まあそんな感じですかね。(笑)是非来てください。ありがとうございました。来週は普通のバージョンに戻ります。ジョニーHと。

乱:乱鬼龍でした。


ちょっとだけ教えて 小さな声でいいからさ
もしかしたらもしかして ひょっとしたらひょっとして 解決するかもしれないぜ


松元:乱さんジョニーさんありがとうございました。次は【特集 TPPってなに?知らないうちにハゲタカの餌食】です。

土屋:こわいよっ。

【特集 TPPってなに?知らないうちにハゲタカの餌食】

ゲスト右:本田 宏さん
ゲスト左:大野 和興さん

土屋:今日ご紹介するのは、ジャーナリストの大野和興さんと、済生会栗橋病院外科医の本田宏さんにおこしいただいております。(拍手)

松元:よろしくお願いします。こんばんは。さっそく、このタイトルどうですか?”TPPってなに?知らないうちにハゲタカの餌食”。ハゲタカの餌食になっちゃうんですが。さっきのジョニーさんの歌にもありましたけども、まずTPPって一体何なのか?この”Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement”でございますが、これは一体何なのか?ということですけれども。まあ簡単に説明するというのは難しいと思いますが、大野さん、何なんでしょうか。

大野:そうなんですよね、簡単には言い切れないんだけども、一応日本語に直すと”環太平洋戦略的経済連携協定”ということで。この図を見ていただきます。
<図:IFTAAP構想>
これは、アジア太平洋地域で今どういう風に進められようとしているのか図にしたものなんですけれども。その中の一つがこのTPPなんですが。9カ国、それからASEAN(東南アジア諸国連合)と日中韓の3つ、それからもう一つがそれに日中韓プラスインドとかオーストラリアとかニュージーランドを含めた6カ国、みたいなのが並行して進んでるんですけども、日本の政府はTPPを前のぼりで進めようとしていると。まあこれが全体像なんですけれども。

松元:注目すべきところは多分、ここにアメリカが入っていない、ということですね。

大野:そうですね。つまりTPPは、アメリカ主導である、という所が第一の特徴。第二番目が、自由貿易、これはモノとお金の自由貿易、自由化なんですけれども、それをかなり徹底してやりましょう、例外はないですよ、その2つが特徴なんですね。
<図:TPP加盟国、参加表明国の各国GDP比率>
図の裏を返していただきますと、これが今参加している国。日本を含めて10カ国で、どのくらいの経済規模があるか見たものですが。アメリカが62%ですね、日本が22%で、まあこれで殆どを占めちゃう。それにオーストラリアを入れると、全体の強国の3つで、あるいは2つで全体を統合していく、みたいな、そんな感じの特徴がある。最初、TPPといったら、このその他の8カ国のうちの半分の、4カ国くらいで始まったものなんですよ。これがまあ、お互い貿易国なんで、お互い貿易自由化をやり合いましょう、みたいなことで始まったのを、オバマさんが、俺も入れろといって占拠しちゃって(笑)。で、こんなに膨れ上がっちゃったんです。オバマさんが何故入れろといって入ってきたかというと、先ほどの図で、アメリカが入ってないASEAN+3とかASEAN+6で、中国が大体主導権を持っている。アジアっていう地域は、これからの世界経済の中心地、爆発的に成長するであろう、と、まあそうなるかどうかわかりませんけれども。そこにアメリカが入れないのは困る、と。で、中国と対抗するためにもなんかなきゃいけないというんで、4カ国のちっちゃなグループの中に割って入って、アメリカのものにしちゃった。そして、アメリカのこっちのほうに一生懸命日本がくっついていってる。これが大体の見取り図です。

松元:色々問題点も言われていて、日本の政府は”参加すべきだ”といって推進してるんですが、何故それが問題点なのか?ということなんですけれども。

大野:全てを市場の決定に委ねる、市場が全てに優先する、という究極の自由化、モノとお金の自由化ですから。あらゆるものを市場で決めてもらう。安くて品質のいいものが市場で勝ち残っていく、それに対しては文句を言わせない。文句を言わせないということは、市場が全てであって、流通、モノとお金の流れを規制するものはダメなものだ、悪なんだ、だからそれを全部排除していく。そういうふうな構造、考え方で組み立てられている。その究極がTPPだ、というふうに言われてるんですね。そうすると何が起こるかというと、市場で勝つ国と勝てない国、勝つ部類に入るのは元々お金があって力があって、それ以外の人は排除されていく、というそういう構造が元々あるんですけれども。

松元:損するだけ、という。

大野:そうですね。それでこういうものを作ってみたんですが。TPPで損する人と得する人。
<図:TPPで損する人・得する人>

土屋:おお。なんかつまようじみたい。

松元:わかりやすいですねこれ。

大野:(笑)色々考えたんです。得する人は誰だろう?といったら、やっぱり1%しかいないですね。

松元:やっぱりOccupy Tokyo!Occupy Tokyoなんだ!

大野:これで見ると、高級官僚、日本の資本家、特に巨大企業の資本家ですね、中小企業は入らない。

土屋:これが得する人ですね。

大野:そう、得する人。それから大企業の幹部職員。まあそれ以外得する人はちょっと考えられないんですよ。

土屋:ここにいる人全員得しないですね。(笑)

大野:損する人は誰かというと、失業者、野宿者、非正規労働者。

松元:ここみんなそうだ(笑)。

大野:そうですそうです。まあ労働者全体が損するんだけど、中でも非正規労働者が損する。農民、漁民、それから中小の商店の商人、中小企業のおやじさんおかみさん、治療費を心配することなく医者にかかりたい人。

松元:非正規労働者とかまさにそうですね。

大野:そうです。それから自然環境を守りたい人も損する。つまり自然環境も壊されますよ、と。それから、安心できる食べ物を食べたい人も損する。安心できる食べ物が食べられなくなる。まあ他いくつもあると思うんですけど、とりあえず考えたのはこんなところ。

松元:これはわかりやすいですよ。やっぱり99%なんだ。そこで、今巨額の医療費が払える人、というのがその1%に入っている、ということで、それ以外の人たち、医療費にお金がかかるのは損する人、と書いてあったんですが、済生会栗橋病院外科医でいらっしゃる本田さんにお伺いしたいと思うんですけれども。

本田:わかりました。じゃあ私はパワーポイントで説明させていただきたいと思うんですけれども。実は、日本の医療費というのは、よく日本の医療にはムダがあるとか、医師不足は偏在が問題で絶対数は不足してないとかって言われるんですけれども。例えば日本の医療費をこのパワーポイントで。
<図:高齢化とともに高まる医療費>
ちょっと下が見えないですが、これ見ていただけると、実はこれ横軸が高齢化率なんですね。ですから日本は高齢化している、そういう意味です。日本は一番高齢化率が右側にきている。縦軸はGDPあたり医療費で、その国の医療費がGDPあたりどのくらいお金を使っているか、というグラフです。そうしますと、日本は世界一の高齢化で、目の前に団塊の世代の高齢化がきますよね。ある種、例えて言えば、目の前に超高齢化社会が津波のように押し寄せてきているのが日本なんです。もう見えているんです、これは。地震と違いますから。その日本の医療費が世界一最低なんですよ。他の国は日本より高齢化が遅れたりしてるけど、みんなこれ右肩上がりになっていくでしょ。日本だけ抑制してます。黒い、一番下のグラフが。つまり、必要な医療費を日本は上げてこなかった。そういうふうな歴史があるんですね。

松元:日本の医療費って高いんですか?

本田:日本の医療費は安いです。それで、次のグラフをお見せしますと。
<図:盲腸手術入院の利別費用>
例えばこれは、下が切れて残念なんですけども、盲腸の値段。盲腸で手術した時の値段で、実は右下のほうに日本の値段が出てるんですけども、左上をご覧ください。ジュネーブ、スイスで盲腸の手術をすると、3泊4日で病院が医療費として受け取るのが300万近く。(会場、動揺)日本は6泊7日で40万弱なんです。つまり、日本の病院がいただける医療費っていうのは、先進国最低なんですよ。その中ですごいのは、ここらへんご覧ください。ロンドンとかカナダとか、そういう所は個人負担殆どなし。日本皆さん1割から3割負担ですから。日本人は、一番安い医療費で絞られた病院の値段で一番高く払ってるんです。ですから、日本の支払いは一番高いってことは世界的にも有名なんですね。個人負担が1割から3割になったのは皆さんご存知だと思います。ですので、ちょっとここは飛ばしますけども、日本の医療費は個人負担が高いっていうのは、わかっているんだけどもそれが国民には伝わっていない。これは一番窓口負担が高いのはイタリア、2位が日本です。
<図:医療費患者自己負担割合>
ですから最近の流行りの言葉で言えば、本当に”絶句ジャパン”っていう感じなんですね。(笑)ですからもう皆さんは一番個人負担が高いので、世界では最低の医療費なんだけれども、窓口負担が高いから医療にかかりにくい、という状況が出てる。これが今の現状です。今まさに、更に医療が高額療養制度とかそういうものを充実させるために、1回窓口に行く度に1人から100円ずついただこうかと。更に世界でもトップクラスの個人負担をまたもらっちゃおうかな、という動きを国は考えているわけですね。

土屋:バカにしてますよね。

松元:それが今現状のお話ですよね。

本田:今は世界でトップクラス、既に。で病院がいただけるのは最低クラスですから、日本の病院が医者も少ないし、サービスが悪いっていう状況になっているわけですね。

土屋:皆で足引っ張り合ってる感じですね。

松元:本当に、3分診療なんですよね、今ね。

本田:そうですね、はい。アメリカなんかは逆に言うと、すごく医療費が高くて、保険にも入れなくて、7人に1人は無保険なんです。ですから日本人は、もしTPPなんかに入ると、アメリカなんかで一番医療界で儲かっているのがHMOって言いまして、保険会社。日本人ももっと保険に入っておかないと医療にかかれない。

松元:マイケル・ムーアの映画に出てくるHMOです。

本田:そうです。保険会社が一人勝ち状態。そうなるわけですね。ですから、大変なことになると思いますね。

松元:そうすると、TPPに日本が参加することによって、これがどういう風になってしまうのか?

本田:おそらく私医者なんで、あんまり詳しいことわからないんですけども、先ほどのデモでも見てわかるように、アメリカ型の、1%が得して99%が損してるわけですよね。それをうまくTPPを導入すれば、アメリカで、2%から3%の人が得をして97%の人が損をするようになるかもしれないんですね。(笑)

松元:ええ〜!?

土屋:たいして変わんない。

本田:ただ日本では、1%対99%がもっと酷くなるかもしれない、そういう印象を持っています。つまり、TPPの基本理論というものが、”新自由主義、経済最優先”であるということとすると、それをまさに輸出して、アメリカで困っているところを、例えば日本の個人資産とか、そういうものが保険にいくとか、色々なところで、もうちょっとアメリカに回してちょうだい、という意味があるのではないかと。

土屋:随分自分勝手な(笑)。

本田:TPPっていうのは先ほどから出ているんですが、私大事な言葉を訳してないと思うんですね。発音はあんまりよくないんですけど、Trans-Pacific Strategicってある。Strategicは”戦略的”なんですよ。つまりアメリカの戦略的なんです。アメリカが戦略的に得しようと。私は大変残念ながら、日本の政治家がアメリカの方と交渉して、勝てるわけないと思うんですね。色んな事情で。ちょっと今日はこれ以上は言いませんけども。ですから、やめたほうがいいと思います。これは。(笑)勝てるわけないと思います。

松元:そうすると、TPPに日本が参加することによって、医療関係では私たちにはどういう影響があるんですか?

本田:確かにうまくすると、お金持ってる人は今よりももっと医療が受けられるようになるかもしれません。お金さえあればもっとふんだんに人手がいるところで、最高の薬を使えるかもしれませんけども、逆にお金がなくて保険にも入れない人は、今より更に個人負担が高くなる。逆に保険料が高くて保険に入れなくなる可能性があると思います。

土屋:…全然いいことがないのになんで?お金持ちにとってはいいかもしれないけどね。

本田:だからアメリカにとってはいいんですよ。そこがポイントだと思いますね。そういう見方をしないと。やっぱりアメリカも困ってるんだと思います。デモ起こされて。

松元:今のお話ですけど、アメリカも1%の人が2〜3%になるかもしれないけれども、でもやっぱり90何%の大半の人たちはやっぱりまだ損するままですよね。

土屋:困ったままですよね。

本田:やっぱりそれは新自由主義の限界じゃないでしょうか。”Winner Take All”、弱肉強食が新自由主義ですから。それは仕方がないと思います。アメリカはだって、頑張れば勝てる、っていうのが競争主義ですから。アメリカが弱い人助けたらアメリカじゃなくなっちゃいますもんね。

土屋:(笑)うまいことゆう。

松元:今の、日本での医療費が高くなる、お金持ちしかいい医療が受けられないんじゃないか、というお話なんですけれども、日本の国民保険制度っていうのがあるんですが、それは維持したままで、ということになるんですか?それともそれが崩壊する?

本田:ですから既に、日本の国民皆保険制度は50年経って、もうほぼ崩壊してるに近いんですよ。というのは、ヨーロッパは、殆ど個人負担が安い、ないんですから。しかも、ヨーロッパは安いけれども、病院にはきちんとお金を出して、いい医療体制を作っているわけです。日本は病院に出すお金をギリギリ最低に抑えて個人負担最高高いですから、名前だけ国民皆保険制度で。皆さんもご存知のように、国民健康保険が持てない人がいっぱい増えてるんですね。病院に行けない人も増えてるんです。

土屋:滞納すると、なんか変なカード渡されたりね。俺も経験ありますけど、インチキなカード渡されてね。

松元:生活保護の人もそうですよね。

本田:そうです。ですから本当に厳しいと思いますね。首の皮一枚でつながってるだけです。

大野:しかしそれでもまだ、保険制度は一応あるんですね。それも多分、僕は、TPP入ったら邪魔になると思うんですよ。というのは、例えばアメリカの民間保険会社はいっぱいありますよね。あれはもう日本に進出してきてるんだけれども、それにしても、国民保険制度があるということは、市場が狭いっていうことですよね。それを拡大するためには、保険制度、形だけにしてもあるものを壊さないと、アメリカの保険資本は儲からないから。多分だからもっと壊されていくと思う。

本田:例えば、先ほど盲腸の値段を言いましたけれども、日本で胃がんで手術して4週間入院して、病院がいただけるお金は100万〜120万なんですよ。全ての医療費で。アメリカでは1泊2日の盲腸で100万ですから。

土屋:全然額が違うよね。

本田:ええ。で一方で胃がんの手術で120万なのに、抗がん剤は、最高の抗がん剤を使うと年間の薬代だけで1200万する。(一同驚き)もしそうすると、皆さん、抗がん剤を使いたいっていう人が1200万のために保険を払う時にはどのくらいお金払うか、何となくわかるでしょ。そうすると保険会社は大変儲かることになりますね。

土屋:よくテレビCMで”がん保険が…”とか、ようやってますよね。

松元:考えますもん私いつも。

本田:がん保険もそうだし、最新医療とかってなって、それが国が保険で認めなければ、皆が心配になって保険入りますから。

松元:入ろうと思った人(笑)。

本田:そうすると、保険入ると、保険会社は更にまた大きなビルが建てられる、こういうシステムになっていますから。

土屋:CMでバンバンやってるのは、あおってるわけですね。

本田:CMはタダじゃないんですよ。(笑)

土屋:そうですよね。恐ろしいなあ。

本田:あのCMはタダじゃないってことを忘れちゃいけません。

松元:でも、その今のお話だと、やっぱり先ほどの99%の中に非正規労働者っていう人たちがいたんですけれども、今その労働の問題、いつもTPPの話をすると、農業の話がよく出てくるんですけれども、実は労働者にも大きな影響がある、ということで。大野さんに、損する99%の非正規の、ここらへんの人たちに影響することなので。

土屋:自分も入ってるんだからね。(笑)

松元:怖いよ〜(笑)。

大野:つまりTPPというのは、完全にモノとお金の自由な移動を保障していく。そのために邪魔なものを切っていく、ということですよね。先ほど言いましたように。モノとお金、つまり商品と資本なんだけども、商品の中には労働力も入りますよね。労働力商品ですから。それが商品化されて、自由に行き来する。商品っていうのは、放っておくと安い所から高い所へ流れますよね。高く売りたいから。そういう意味じゃ、安い賃金の労働者が、高い賃金の、まあ日本も随分崩れてきてますけれども、所に入ってくる。そして全体の競争が激しくなって賃金水準が低下していく。賃金水準を低下させるためには、労働者の抵抗があっちゃ困るから、労働基本権とか、団結権とかいうものは制限していく。

松元:制限できちゃうんですか?

大野:それがね、TPPでやろうとしていることの一つなんですけどもね。

松元:アメリカが来て。

大野:アメリカが来て、というかまあ、そういう取り決めをしようということなんだけども。ILOの勧告、先ほど話にあったんですけれども。

松元:フィリピントヨタのね。

大野:はい。だけど、TPPに入っている9カ国のうち、どれだけきちっとした労働条件が守られて、労働者の権利が守られてる所があるか?っていうと、例えばアメリカもひどいもんだし、日本ももうだいぶん酷くなってるし、基準法なんか解約されてるし、派遣法があるし。まあ多分オーストラリア、ニュージーランドくらいはそれなりにましかもしれない。後はそれぞれ、途上国が中心ですよね。例えばベトナムが入ってるんだけども、ベトナムでは法的には非常に制限された労働者の法律があるんだけども、殆ど権利は認められていないし、労働組合の結成の権利さえあやしいもんだ。そういう所が入って、労働力をどうしますか?という時には、基本がスムーズに動かすもんだから、下のところに揃えていく、っていう、そういう感じになると思うんですよ。そうすると、まだ日本ではかろうじて労働組合法あるし、労働基準法があるし、団結権も保障されているし、というところは邪魔になるわけですよね。それはやっぱり緩和していきましょう、と。労働基本権が、労働者の権利が貿易障壁だと、非完全障壁だと。スムーズに労働力商品が動くためには基本権を制限しましょう、っていう。そういうふうに僕はなっていくだろうと思います。それの一つが、韓国は日本のお手本にはなってますよね。自由貿易の優等生、みたいな感じで。ちょっと古い数字なんですけどもね。
<図:世界を相手にFTAを進める韓国の労働者の賃金格差>
これ、ちょっと文献調べてたら、韓国の、これ2000年当時だから今から10年前なんですけれども、非正規労働者と、正社員と、男女の割合を、男の非正規労働者を100として見たものなんですけれども。一番低いのはパートの女性で、26しかない。派遣労働者に女性は37しかない。大体4分の1から5分の1ぐらいの格差が生まれている。その後韓国はもっともっと、あそこは自由貿易の優等生ですから、もっと進んでいって。これはレイバーネットの記事見ていると、結構韓国の労働運動、労働者の状況わかるんですけれども、大変ひどい状況になっている。この2000年の時に、韓国の全労働者中の非正規割合が大体60%くらいあったんですね、もうこの時点で。その時日本では大体30%弱だったんです。その後日本がどんどん追いついていくんですけれども。いずれにしても、FTA、自由貿易協定の優等生ということで、日本政府が、韓国に見習え、このままでは韓国にやられちゃうぞ、だから韓国がやったことをやっていこう、みたいなことを言っているわけだから、確実に、もう日本だってこれくらい格差ありますけどね。もうなってますね。

土屋:もう、なってますね。

大野:もうなってますね。これが一つの典型例だと思うんです。

本田:私、既に日本中の格差は世界先進国のトップクラスだと聞いたことがありますけどね。今現在で既に。その格差がまた更に開く、ということですね。確実に世界ナンバーワンを目指すっていう形で。(笑)

土屋:そんなナンバーワン欲しくないよね。

松元:ナンバーツーじゃいけないんですか?っていう感じですね。

大野:典型例が牛丼だと思うんですけどね。

松元:はい。どんっどん安くなってますよね。

大野:はい。安くなって。我々には助かるんだけども、今1杯250円ですか?

土屋:そうですね。

大野:あれ、どんな原理を使って、どんな賃金を労働者に払ってるかっていうのがよくわかるんだけども。(笑)

松元:安いです。

大野:270円と250円を行ったりきたりしてますよね。

土屋:でもあれ、俺大学生の時400円くらいでしたよね。

大野:そんなもんだ。約半額。で、TPP入ったらね、牛肉安くなるからね、あれ150円か100円になるっていう気がするんですけども。

松元:ええ〜!?じゃあ労賃はどうなってるんですか?

大野:そう、つまりね、僕は”貧困の連鎖”って言ってるんですけども、何故外食産業が下げるかというと、その値段でしか食えない人たちが大量に出てくるから、商売していくためには、食える値段を設定していかなくちゃならない。食える値段を設定すると、牛丼店で働く人の賃金も下げなきゃいけない。それで、典型がすき屋ですよね。労働者収奪の典型みたいな。

松元:労働組合ありますよ。首都圏青年ユニオン。

大野:(笑)それから、牛肉の値段を買い叩く。で、牛肉を買い叩くと、どんな肉食ってんだ、ってことになるんですよね。考えたら怖いんですよ。そうやって下げる。そうすると、それに習って他の労働者も賃金が下がる。そうするとますます高いものが食えなくなる。だからますます下げる、っていうね。そして、原材料下げるためには、例えばアメリカの牛肉資本がアマゾンに行って、森林を焼いて、牛飼ってる。で、その安い肉をより買い叩いて買う。そうすると、アマゾンの牛肉資本家は、儲けるためには大量に飼わなきゃいけないから、益々森林を焼く。それから現地で雇ってる労働者をこき使う。という形で、牛丼の値下げ競争が世界の貧困に連鎖していく、っていうね。これ一つの例だけども。今そういう状況に入っていく。そしてTPPが、より加速させるっていうか、そんなことになるんだろうと。だから、労働者の賃下げと、世界の貧困とはやっぱり日本の労働者はこういう連鎖のなかで結びついていっている。ますます貧困の深みに入っていく。それが今の99%の背景があるんだろうと思うんです。それは、アメリカもヨーロッパも日本も、いわゆる先進国と言われた所も、アフリカも、新興国も、それからアジアも、ラテンアメリカも、同じ連鎖の循環の中にきている、っていうことなんだろうと思いますけどね。

松元:そうすると今、環境の話も出てきて。先ほどの図の、”環境を守りたい人”も損するほうに入ってましたよね。このTPPというのは、農業、先ほどの図にも農業、漁民も損するほうに入ってたんですけれども、農業も今の連鎖を考えると、やっぱりかなり大きく影響する部類だと思うんですけれども、農林水産省は実は、TPP反対してるんですよね?または

大野:…反対のふりしてるか。(笑)

松元:(笑)ふりなんだ。私は真面目に信じてました。

大野:(笑)結局政府の一員だし。権力機構の事業の一角ですからね。最後まで反対しきれるわけないんで。この問題で、今度は震災復興の問題にも絡んでくるんですけどもね。TPPが去年の秋、衆議院の施政方針演説で、当時の菅直人首相がいきなり”TPPやりますよ”みたいなこと言って。

松元:言いましたね。

大野:それ、国会議員の半分知らなかったって話なんだけど。うわっと盛り上がって。こっちも12月に”TPPに反対する人々の運動”っていうのを作って。百姓呼びかけて、”99%、結集しよう”みたいな。まだ3%ですけども。(笑)それで運動始めて。で、震災がきて。震災問題、これだ!と。原発も大変だ、ってことで、そっちへシフトしていって、TPPはしばらくおあずけだろうと思ってたら、いきなりまた、もう4月段階から出てきた。

松元:そうですね。

大野:その時に、最初に口火切ったの経団連で。

松元:やっぱり。

大野:復興のためにTPPを、っていう論理を出したわけですね。

土屋:やりたくてしょうがないんだろうね多分ね(笑)。

大野:そう、そう。なんでもかんでも結びつけちゃうんですよね。復興には金がかかる。その金を稼ぎださなきゃいけない。日本経済を活性化しなきゃいけない。活性化するためにはTPPだ。っていう論理で。その後1週間ぐらい経って読売新聞が社説で、”復興のためにTPPを”っていう社説を出すんですけどもね。そういう論理の中で今出てきて、それにこないだオバマと野田が会談して、あの時3つ脅されたんですよね。1つが、”普天間何とかしろ”って言われて。

松元:(笑)脅されて。

大野:そうなんですよ。結果出せ、と言われて。それから牛肉。これはTPPに関連するんですけれども、

松元:BSE問題でね。

大野:そう、BSEで今日本は20ヶ月以下しか買わないんですけども”それ外せ”って言われて。それから、”TPPどうした”って言われたんですね。(笑)それで恐れ入って彼。へらへらと”努力します”って言って帰ってきて、それからまたわーっと出てきたんですけれども。全部脅かされた結果みたいな所があるんですけども。で、農業に戻りますとね、そうやってじゃあどうやって復興するかと、農業漁業を。そうすると今は政府が出しているのは、宮城県の知事なんかも言ってますけれども、農地の規制を緩和して、農地を集約化して、もう農家にはすっこんでもらって、どうせトシとってんだから、企業に入ってもらおう、と。漁業もそうですよね。漁業権、これは漁師が持っている生存権なんですけれども、漁業権を漁師から取り上げて、それも企業が。復興を担う企業にそれを譲っていく、売っていく、っていう方向です。つまり、漁師や百姓は要らない、っていう。で、強い農業を作るためには、国際競争力を獲得して、TPPに入れて、その中で生き残っていく者しか残っていられない。だから百姓がやる農業ではない、企業がやる農業になっていく。漁師の漁業じゃなくして、企業の漁業にしていこう、っていう、それが今の復興の道筋なんですね。それとTPPがぴったり合っている、ということなんだろうと思うんですね。

松元:便乗しているような気がしますね。

本田:ここで私ひとつ心配なことがあるんですけども。私があんまり不勉強でよくわかりませんけど、日本は確か最低賃金もILOの勧告をちゃんと認めてないとか、そういう話いくつか聞くんですけれども、日本の企業が世界で頑張ってきちんと利潤を上げた分を国民にパッと返すような企業、渋沢栄一さんの言われるような、道徳経済合一を守るような企業だったら今のようなこともいいかな、と思うんですけど、なんか噂を聞くとすごく内部留保はあるけれども、国民はどんどん安く叩いて叩いて働かせるのが大企業だとすると、農業も漁業もそういうことになっちゃうっていうことですか?

大野:そうですね。

本田:なるほど。わかりやすいですね。全てのところでもっと大企業が入って儲けたいという意向がある可能性があるんですね。

大野:多分、漁業特区、水産特区と言われているのは、漁師がどうすんだっていったら、それは使われれば、労働者になればいい、というふうに言うんですけれどね。大体漁師の平均年齢が、百姓も同じだけど70過ぎてますから、70過ぎた人を雇う企業はないですよね。そうするとね、僕ずーっと50年60年70年、海で生きてきた人は、海でしか生きられない人が、そのまま放り出されるんですよ。それは百姓も同じですけれども。ですから、TPPで関税を全部引き下げてやると、米は10%しか残らない。これは農水省が出している試算ですけれどね。今900万トンくらい作っているのが、100万トンくらいしか残らない。後の9割は輸入しなさい、と。輸入先は、アメリカにこれだけの米がありますよ、みたいなこと言ってるんですけれどね。

土屋:勝手な話だよねホントにね。

大野:そういうことと同時に、もっとその基礎にある、農地とか水とかいうのが、農民の手から剥奪されていく、剥ぎ取られていく、っていう、このほうが。これはあまり誰も言わないんだけど、もっと大事で深刻なことなんだろうと思うんですよ。

本田:一つお聞きしていいですか?私「ローマ人の物語」っていう本が好きで、読んでるんですけども、ローマが滅亡した原因は色々あるんですが、一つは自分たちで防衛、軍事をしなくなったこと。今の日本がそうですよね。あともう一つは、自分たちの所で小麦とかを作らなくなったこと。そうすると、既に日本は戦後自分たちで防衛はしてないわけですよね。立場が弱いわけですよ。そして自分たちの所で食べ物ができなくなったら、ローマのように滅亡する、と考えればよろしいんですね。

松元:うーん。自給率。

大野:そうですね。

本田:他の国の言いなりですから。

松元:頼って依存していく関係になっていくから。

本田:日本が第二のローマになる、という。

大野:そういえばニュージーランドでもね、TPPはこれからですけれども、自由貿易をすすめる中で、随分外国資本が入って、農地が買われている。今世界的にそうですよね。日本の農地も、多分、今アフリカとかアジアで随分、企業による農地の買占めが進んでますけれども、この被災地をきっかけとして、日本の農地とか、それから水、水源地だとか、どんどん買われてってる。地域資源が、地域から離れていくんだろう、という気はします。

本田:そうですよね。高く売れるもんなら何でも買われちゃいますよね。

大野:それとね、後もう一つ、これを見て欲しいんですが。
<図:白鷹町の農林水産業生産額の推移>
農業と地域経済の問題があるんです。これは山形県に白鷹町っていう所がありまして、大変豊かな農業の町なんですが、その町の統計で。農業生産額をずっと追ってみたんですよ。そしたらね、これそのうち伸ばしていったらゼロになっちゃうんだけども。農林水産の額が、90年には52億円あったのが、2005年には半分になってるんですね。そのままいくと、2015年くらいにはゼロになる、という(笑)。そこはならないんだけども。実はこのくらい、地域の農業っていうのはもう崩壊してきているところがあるんですが、それはどんどん農産物価格が下がっていったことが背景にあるんですけれども。その価格が下がった背景には、例えば米の部分自由化とか、牛肉とか、酪農製品の自由化とかいうのがあってそうなるんですけれども、地域を考えると、これは被災地もそうなんですけれども、いかに力が弱くなったとはいえ、脳漁村地域の経済の基礎には農業と漁業があって、それが一定の生産額をあげて、農民漁民が一定の収入を得る。それを地域のお店で買う。それから地域の農漁民が取ったものを地元の中小企業者が加工して漬物にしたり干物にしたりする。そういう形で地域の経済、お金は回っていってる、その構造は、特に東北じゃまだ崩れてないし、被災地ではその構造は厳然と生きてきたわけですよね。その基本の所の、お百姓や漁師が作る、その所を壊していくと、その地域経済の循環の基礎がもう崩れていってしまうと思うんですよ。その代わり大企業がよそから来て、作りゃいいじゃないか、と。大企業が作ったものはみんなよそに行っちゃうんですね。地域じゃ回らないです。そうするとね、農業の崩壊、漁業の崩壊は、地域の崩壊にそのまま繋がっていく。地域の崩壊に繋がるということは、そこで農民や漁民が守ってきた、土地とか水とか山とか海とか浜とか、いうものを守りきれなくなって、企業がそれを金儲けの手段としてしか見ないですから、短期で収益を上げるためにそれを使い尽くしていく。それが環境破壊に繋がる。農業の問題、漁業の問題っていうのは、メディアとかなんかでは、安いものが入ってきて大変だ、というレベルの議論しかないんですけれども、もっと深い所でこの列島の基礎のところを壊していってしまうんだろう、という気がします。

本田:一つお聞きしていいですか?私思うんですけども、先ほどから出てるように、安い労働力ということでずーっと勝負すればどうしても日本は、今までの通りいかないっていうのは、これは仕方のないことだと思うんですよ。ですからより付加価値を高めたものを作るとか。農業とか漁業を生かして、その地域の観光、産業や文化を残して、観光できるとか。そういう道をしなくちゃいけないのに、日本全国が農業大工場、漁業大工場、っていう国になってしまえば、外国の人が見に来てもしょうがない国になってしまいますからね。

大野:(笑)そうですよね。

本田:大体、文化がなくなりますよね。人が住めなくなったら文化がなくなりますから。そういう基本的なことはちゃんと政治家の人たちは考えてるんでしょうかね。お忙しいから考える余裕がないのかもしれませんね。

松元:アメリカに追随することしか考えてないと思うんですが。ツイッターで質問が入ったので、ご紹介したいんですが。
「かりにTPPを拒否できても、また自由化の波は来ると思いますが、本質的に問題を防ぐには、どうしたらよいと思われますか?」

大野:99%の反論です(笑顔)。(笑)

松元:Occupy!Occupy!
やっぱり下からの運動しかないですか。

大野:それしかないでしょ。そうです、下からの運動しかないです。

松元:なるほど。やっぱり意味があったんだ。次は。
「農民や漁民は、棄民になってしまうのがTPPなの?」

大野:そうだと思います。つまり、今日本の農業を支えて、米を作ったり野菜を作っている農民や漁民、これちっちゃな農民で、兼業で高齢化して、コスト計算もしないでどんぶり勘定でやってるんですよね。どんぶり勘定だからやってるんですよ。経済計算したら誰もやりたくない。(笑)それがね、日本の農業の強さなんですよ。それ何百年やってきたし、今100%の米を自給しているし、野菜もたっぷり作っているし、餌に穀物は入れてますけどね。自給率40%とは言うんだけど、基本的な食料は結構日本の百姓作ってるし。三陸の漁師は日本の漁獲高のかなりの部分を担ってきてますよね。そういうものはいらなくって、企業にやらせればいいと、効率的に。そしてコストを下げて、海外競争力をつければいい、っていうことですから、本当は百姓や漁師は要らない、っていうね、今、それが政策なんだろうと。TPP推進というのは、そういうことなんだろう、というふうに僕は思います。

松元:もう一人の方は。
「完全障壁を撤廃することによって、グローバル大企業の利益に資するための評定ということ、そういう理解でいいのでしょうか?」

大野:両面はあると思うんですけどもね。関税が何故あるかというと、それぞれの国を単位に、保護すべき産業、守らなきゃいけないもの、を守っていくということ。例えばあまり国家の枠にとらわれるのも僕はまずいと思うのは、TPPは自由貿易や投資の自由っていうのは、僕らはすぐ日本のことしか言わないんだけども、世界中の貧乏人を虐げてるわけですよね。例えば先住民が一番割り食ってんですよ。先住民っていうのは、何も知らされなくって、いきなりこの自由貿易で、投資の自由がありますよ、と。そしてそれを協定するとそのままうわっと、例えばウラン鉱山なんかが例ですけども、外国資本が入ってきて、そこで開発を始める。そして、色んな被害を生む。そういう例が各地に、アジア、アフリカ、中南米で出てきてるんですけれども。そうしたことまで念頭において、TPPの問題を考えなきゃいけない。つまり、国家にとらわれないで、世界の99%がいかに団結して、抵抗していくか、っていうところから考えなきゃいけないと思うんですよね。あんまり関税っていうと、非常に強く、国家ってことを意識しなきゃいけなくなるんで、やっぱり、モノと市場の競争に全てを委ねるということの危うさというか危険さみたいなものを、皆が国境を越えて共有していくっていうことが僕は大事だろうな、という気がします。

松元:本田さんはどの辺りがTPPはハゲタカの餌食になると思いますか?

本田:私ちょっと不勉強なんですけど、確か昔ノーベル経済学賞とったミルトン・フリードマンという方が、「資本主義と自由」ということで、それで立派だ、ということで、アメリカは、もっとシンプルに言えばその理論を世界に広げたい。だけど、そのアメリカで1%99%って言ってるってことが、いかにそれが問題かっていうのが、もう証明されてるんですよね。それをなんで今さら、その証明されていることを我々受けなくちゃいけないの?我々医者の場合は、何か手術でも何でも、これはうまくいかない、ってことはやめる。やらない、ってのが基本なんですよ。それをなんで、ダメだってわかってることを、相手が強いから、ジャイアンに言われたスネ夫みたいな感じでね。素直にハイ、みたいな。(笑)なんでそうしなくちゃいけないのかな、というのがちょっと情けないな、と。勿論、受けなけりゃ受けないで問題もあるんでしょうけど、そこで使うのは知恵なんじゃないですか?それこそ”モッタイナイ”という精神を日本は世界に広げるべきだと思いますよ。

松元:じゃあやっぱり99%の私たちはドラえもんになって。(笑)

本田:ええ、ジャイアンに負けないように。

土屋:なんかあそこのおじさんがなんか言ってますよ。

会場:お話を聞いていると、労働法も何もかも全て、今まで日本にあったものがなくなってしまう。つまりこれ、憲法がなくなるってことに僕は思えるんだけど、そういうことでいいんでしょうか?憲法の上を行くものができてしまう?

大野:そうですね。生存権の侵害だと思うし。それからTPPが怖いのは、これニュージーランドの学者も言ってるんですけれども、そこで決まったことが、国内法に優先する、っていう。

松元:それ怖いですよね。

土屋:”俺が法律だ!”っていうね。

松元:国境が取っ払われてる感じですよね。

大野:そうなんです。それが一番怖いことで。北米自由貿易協定っていうのがだいぶ前にできて。アメリカ、カナダ、メキシコですね。メキシコに、アメリカの廃棄物処理業者が進出していって、ひでえことやったらしいんですよ。周り汚染しちゃって。ある、そこの自治体が、創業差し止めしたんですね、メキシコの法律に従って。その業者は、そのメキシコ政府を、”投資の自由”を侵害したということで、損害賠償請求したんですよ。そして、勝ったんですよ。メキシコ政府は損害賠償請求を払わなければいけなくなった。つまり、メキシコの環境基準よりも、TPPの”投資の自由”の協定のほうが優先するっていうね。これ、アメリカが強く主張してまして、TPPっていうのはアメリカ主導ですから、これは確実に入るはずです。

松元:なんか、FTAもTPPも、全部アメリカがいい所ばっかり取っていくようなシステムなんですけどもね。

本田:もしそうなんだったら、日本はアメリカの一つの州になっちゃったほうが早いかもしれませんね。(笑)州になってないと向こうは守ってくれないですよね、義務がないから。州になれば我々を守らざるを得ないです。

土屋:それは嫌だな。

会場:そんな酷いものなのに、なんでマスコミは、朝日をはじめ、全マスコミがこれを推進してるんですけれども、何故ですか?

本田:いや、それは私は医療のことでも本当に悩んでるんです。ずっと前から医師不足、医療費不足っていっても殆ど報道してくれないし、記者クラブ発表しか流してくれないんですね。だからやっぱり私は、マスコミの方も生きてらして、給料もいただかなくちゃいけないから、それなりの事情があって、(笑)どちらについたほうが得なのかな、っていうことを懸命に考えてらっしゃるんじゃないかな、と。

松元:いやこれは私は、東電と同じ考え方だと思います。

土屋:過ちだよね、なんか。

本田:戦争中もそうでしたからね。マスコミだって自分のことが大事ですよ。人間誰でも。

松元:ただ、保険会社が、例えば大きい広告の主だったりすると、それもあるかなと思いますね。

土屋:今多いでしょうね。

本田:そうですよね。だって広告料いただかないと、給料払えないですもんね。メディアのほうもね。

大野:しかしホント支離滅裂、と思うのは、こないだの朝日新聞で、99%弱者の反乱、みたいなことが、1面から社会面、第二政治面まで、かなり大きく。でその社説が”TPP推進推奨”なんですよね。(笑)

松元:矛盾してる。(笑)

大野:それから、星さんっていう論説委員長かなんかがコラム書いて、”野田首相は決断を!TPP”ってな。支離滅裂なんですね。あれはどっちかにしてほしいな。

松元:ちょっと、あまりTPPのこと理解してないのかな?

本田:バランスとっとかないと、それこそ売れなくなっちゃう。(笑)99%の人が新聞買ってる可能性もありますから。それはバランスとる必要あると思いますよ。

松元:だんだんマスコミ批判になってきましたが(笑)。とにかく、今日はすごくわかりやすい説明でした、というツイッターでのコメントもありました。お二人ともお忙しいところ、本当にどうもありがとうございました。大野さんと本田さんでした。(拍手)

土屋:ありがとうございました。

松元:続いては、【山口正紀の ピリ辛コラム】です。


【山口正紀の ピリ辛コラム】

担当:山口 正紀さん

土屋:はい、山口さん、復帰おめでとうございます。なんか足のほうを痛められたとか。

山口:(笑)アキレス腱を切ってしまうというえらい目に遭って。

土屋:足もちょっとひきずってらっしゃいますけども、本当に今日はありがとうございます。よろしくお願いします。

松元:こんばんは。

土屋:今日のテーマは。

<今月のテーマ:「陸山会事件」判決報道 「小沢叩き」の大合唱>

山口:陸山会事件のその判決報道について、ということなんですけど。今大野さんたちのお話を聞いて、本当に関連してるな、って強く思いましたね。というのは、何かっていいますとね、つまりTPPの問題も明らかに、アメリカの金融資本の言いなりに、日本の政府、あるいはその財界、官僚たちが日本の仕組みを変えようとしている。こういうのが根っこにある。そういうのが最大の問題だと思うし、メディアがそういうアメリカの意向に沿って、とにかく大手メディア殆どが、TPP推進・賛成で今やってると。そういう問題と、実は小沢問題というのは非常に密接に関連している。

僕民主党政権できてからの日本のメディアの2つの戦略があったと思うんですね。民主党つぶしの。一つは普天間問題で、日米同盟が崩れる、という宣伝を、これは読売を中心に、朝日も加わって大々的にやった。もう一つは、官僚たちが、小沢が中心の民主党政権は、反官僚だし、一部で中国と仲良くして、対米樹立の方向を打ち出そうとしている。この小沢をつぶせ、というのが官僚たちの大きな、あるいは財界もそうですね。そういうものに対して、それをつぶせ、と。で、普天間問題では、どんどん、いわゆる”Voice Of America”になって、それをつぶしていく、というのがまず成功した。その時小沢に対しては、2009年の10月から、早速読売を中心に陸山会報道はじめて、2010年の1月には、石川知裕議員を逮捕する。これがいわゆる陸山会事件ですね。

元々の事件っていうのは、逮捕されたのは、容疑は、小沢元代表の政治資金団体である陸山会、これの土地取引をめぐって、4億円の不正な金があると。それが資金収支報告書に記載されてない、不記載。だから政治資金規正法違反。こういう容疑で3人の元秘書が逮捕された。それの判決がついこないだあったわけです。この判決を見て僕は、判決と判決報道を両方見て、愕然とした。何故愕然としたかというと、先ずは、この判決に対して全部のメディアが、まるで小沢一郎元秘書たちの有罪が確定したかのような、そしてそれに、極めて小沢元代表が、責任があるかのような社説をいっぺんに並べたってことですよ。全社一緒なんですよ。

僕ちょっとメモで書き出してですね。例えば朝日「小沢氏の責任は明白だ」、読売「小沢氏は天の声も説明せよ」、毎日「小沢元代表の責任重い」、産経「小沢氏は即刻議員辞職を 悪質な犯行に自ら応えよ」、日経「責任を問われる小沢元代表」、東京「古い裏金政治の根絶を」。これだけ、見て全部が同じなんですよ。これは見事に一緒なんです。まるで、一審判決なのに、有罪が確定したかのようなこういう報道なんですが、僕はここで大きな疑問を持った。何かっていうと、判決要旨っていうのを、各社皆出てるわけですよ。あんまり普通の人がね、普通の人っていうか読者そこまで細かく見ないと思うんですけど。これずーっと読んでいくと、新聞報道と、随分ズレが出てきてる。

どういうズレかっていうとですね、その判決の認定は、中堅ゼネコンの水谷建設っていう会社が、ダム建設をめぐって小沢氏に便宜を図ってもらうということで、その大久保秘書とか石川秘書に、約1億円の裏金を渡したんだ、と。こういうことが水谷建設の元社長の証言でも明らかであると。元秘書たちは、その裏金授受を隠すために、土地取引の4億円のうちの原資が明らかでない部分、この中に1億円は含まれているんだと、これを隠すために、政治資金規正法に違反してまでも収支報告書に記載しなかったんだ、と。こういう判決認定なんです。

これを読むと、本体は悪質な授受、贈収賄事件ですよね、明らかに。なんで贈収賄で立件しないのか、という、当然疑問出てくるわけですよ。この疑問をメディアは一切報告しない。実は何かっていうと、東京地検は、元々は贈収賄でやりたかったわけですよ。ところが調べていっても、全然立証できない。つまり1億円の授受っていうのが、いわゆる贈収賄とはとてもじゃないけど立件できない。だから諦める。で、とにかく地検ないし法務省の幹部たちは、小沢を何としてもやれ、と命令。で、それ何があるかってったら、いわゆる手続き的なもの。まあ手続き的といっても、それなりに意味あるんですけれども、まあ一つである政治資金規正法でしかやれなかったわけですよ。それをね、判決をあたかも贈収賄事件であるかのような判決の認定をする、と。これは何かというと、検察だから立証してないんですよ、裁判。立証できないですよね。できなかったことを、裁判所が認定しちゃってるわけですよ。こんな馬鹿な裁判判決はないんです。

土屋:相当無茶やってますねえ。

山口:無茶ですよ。こんな判決は、本当にとてもじゃないけども通らない。で、立証してないものをどうやって認定するかっていうのが。まあ判決でもわかりますよ。やたらと”推認””推認”っていう言葉が出てくる。推認ってのは”推理認定”ですよね。推理して認定できる。証拠に基づいて認定するのが裁判の判決なのに、この判決は”推認”なんですよ。推認だけでズラーっといってしまう。そういう推認だけで、秘書3人の有罪を確定させてしまう。

この矛盾を、本当はメディアがきちんと指摘して、こういう判決は実は危険なんだよ、と。もしこんなことが通れば、裁判所がこんな形で、証拠に基づかない認定をどんどんやっていくんであれば、検察が政治的な意見を持ったり、あるいは何らかの意図を持って、ある人を逮捕する。そして証拠がなくてもその中に証拠ない主張だけをやって、その主張をまるで、裁判所が事実であるかのように推認して、判決に盛り込んでしまう。これ有罪だと。しかもその判決内容の問題点を、メディアが全く報道しないで、そしてその見出しで”小沢の責任”だとかね(笑)いうことだけをキャンペーンしていけば、殆どの人は、やっぱり小沢さん悪いんだよ、と。

僕もあんまそんな好きな政治家じゃないですけども、(笑)いやそうはいってもね、やっぱり民主党政権ができたことの大きな意味の一つに”対米樹立”というね、彼が中国行ったことに対してメディアがえらい叩きましたけども、対米樹立の思考回路を持っていた、という問題があるわけですよ。それからもう一つは、官僚に対する政治主導っていうのを持ってたわけですよね。そういうものを叩き潰せっていうふうな意向が法務官僚、官僚全体の中にあって、外務省にもありますね。そういう連中がよってたかって小沢潰しをやる。それをメディアと一緒にやる。こういうのが僕は今回の判決の問題だと思うんですよ。それをね、非常に体制翼賛というか、殆どのメディアが一斉に同じ路線で咆哮している。原発ではある程度、東京、毎日、それからちょっと朝日、という風に分かれてきているけども、こういう問題に関しては全く一緒。それからTPPも全く一緒。ここに僕は現在のメディアが、まさに1%のメディアであると。

つまり、アメリカの1%、日本の1%、その1%を自分たちの存在基盤として受け入れてしまって、それでその方向としている。で、何だかんだって言うと、日本経済の活性化がなければ全然意味ない、これは原発を再稼動するために、日本の電力危機を一生懸命言ってるのと全く同じ方向ですよね。そうやって、何故日本経済、日本経済か?ということを言えば、まさにそれで金科玉条になって、なんでもっと大きく金をな、画策に、メディア自身が陥ってしまっている。まあ、記者自身は、僕も読売新聞の記者でしたけど、そんな1%じゃないんですよ。大したことないんすよ。(笑)なのに、いつのまにか、記者クラブでしょっちゅう官僚たちと、あるいは財界の人たちと付き合っているうちに、

土屋:あ〜。偉くなった気分になっちゃう。

山口:いつの間にかいいスーツ着て、車で送り迎えされているうちに、何となく1%と錯覚して、1%の奴隷になっちゃう、というところが僕はやっぱりあると思う。

松元:そうですね。気持ちだけは。

土屋:バカになっちゃうんだね。気持ちは1%。

山口:で先ほどの議論の中で、憲法の問題っつってましたね。実は今度の国会、今日から始まる国会の中で民主党が、凍結されていた国民投票案を、憲法審査会、この委員を専任するというところに合意したんですよ。これもね、僕はやっぱり今までの流れの中で、とにかく憲法が、何らかの形で抵触してくると。そうするとそれを突破口にしなきゃいけない、という下準備の一つ、かもしれない、というふうに今日のお話を聞いていて感じました。

松元:ありがとうございました。(拍手)

土屋:そうかー。全然未来が持てないようなピリ辛コラムでしたけどね〜でも。腹立ちますねーでもねえ。
山口さん、ありがとうございました。(拍手)
アキレス腱、早く治してくださいね。

山口:メディアがアキレス腱みたいなもんだなと。(笑)

会場:それはうまい!

山口:プチっと切ったほうがいいんじゃないかと思って。

土屋:山口さんは切らないようにね。
ということで、続きまして。9月1日、第17回放送から応募しはじめてきました、原発御用大賞でございますが、ノミネートは今日で締切りです。何時までオッケーなのかな?とりあえず24時まで大丈夫?

松元:そうですね、はい。

土屋:応募の方から、公募の名前をいただいております。残念ながら自薦はなかったですけどね。今からでも遅くはないですよ。我こそはって方ね、是非お願いします。昨日辺りからかけこみでドドドっと公募が寄せられておりますけども、このようなコメントもありました。
「好企画、ありがとうございます!結果を見るのが楽しみです。NHKの『あさイチ』っていう番組でやっていた『食材ベクレル比較』、同じ企画もレイバーネットなどでやっていただければと思います」
というようなご意見もいただいております。
候補者の名前で、「学者 山下俊一さん」、文化人で「朝日新聞様」って書いてありますね。(笑)まあ朝日がん大賞とか色々出してますけどね。さっきのTPPの話聞いてると、なんかよくわからなくなってきますね。誰を表彰したいのかって、なんか見え隠れしますよね。政治家では、「佐藤雄平さん」ですね。

山口:福島知事ですね。

松元:そうですね。

土屋:ノミネートがあがっておりますよ松元さん。

松元:はい。今お見せしましたけど、こちらのブログから申し込みできるので。簡単ですからね。皆さん今!やりましょう!
(公式応募ブログ= http://goyotaisyo.exblog.jp/ )

土屋:このあとすぐにね。まだあげてない方はどうぞお願いします。

松元:これまであがったノミネートを今あがってますけども、こんな感じの名前がいくつかあがっています。そのノミネートを集約して11月3日の放送時に公表しますので、それから投票開始となります。投票期間はちょっと短いんですけれども、11月3日、第22回の放送なんですが、それから17日まで、23回の放送までとなります。2週間ぐらいしかないんですけれども、この間このブログからじゃんじゃんおうぼしていただきたいと思います。ここに名前のリスト、候補者をあげていきたいと思います。このかわいいロゴもね、活動家一丁あがり講座の井崎みかこさんに作っていただきました。”御用だ御用だ!”っていう。

土屋:ありがとうございまーす。
そして、大賞と、金賞、全身御用賞に輝いた方には、賞状を差し上げに行きたいと思います!

松元:予定です、予定(笑)。

土屋:嫌かもしれませんけど差し上げますので、その様子を映像におさめて、12月4日のレイバーフェスタで上映する予定でございます。お楽しみに、ということです。

松元:ツイッターで今日先ほど、これ大変申し訳ありません、いつも私ガンガン言ってるんですけど「労働業界でジェンダー主流化していくのはとっても必要です」というコメントが挙がっていました。(拍手)ジェンダーバランスが悪い、っていうのはすごい、さっきも言われてたので。

土屋:女性の出演者でね、TPPや色々な問題を語ってくれる方をね、探したんですけどね、今度からね。また、立候補していただいても構いませんからね。

松元:労働業界少ないんですよ。そうですね。女性の業界では、っておかしいですけれども、(笑)

土屋:業界だったの?

松元:リストアップ運動っていうのもありますからね。こういう人たたちがいるから、っていう、是非。

山口:コメンテーターも是非、女性でね。

松元:そうなんですよ!専門家とか。復興会議とかで、女性の議員が一人しかいない、っていうので、”じゃあなんで女性もっと増やさなかったの?”って言ったら、”いや、適当な人がいなかった”とかね。”いい人がいなかったんです”って言われるんですよ。そんなことはない。探せばいっぱいいる。

土屋:まあそれも含めてね、視聴者の方からどんどんご意見をいただいてね、”私が出たい”って方も、名乗りをあげていただければと思います。で、TPPの話ですけども、プレゼントをね、これしたいと思います。大野さんの書いている本ですよね。

松元:これとってもわかりやすいんです。

土屋:これPARCで100円で売ってますけど。(笑)値段言っちゃいけないか。(笑)

松元:なんかプレゼントなのに100円なのか、っていう感じが(笑)。

土屋:でも100円以上の価値がありますよ。これを10名様にプレゼント、差し上げますので、ご応募お願いいたします。絶対得することがいっぱい書いてますよ。応募先はHPにありますんで、是非チェックしてみてください。
(プレゼント応募サイト= http://vpress.la.coocan.jp/tv-present.html )

松元:じゃあこれ、10名の方に差し上げます。

土屋:はい、じゃあシメの言葉をちえさんから。

松元:レイバーネットTVでは、これからも大手メディアが報道できないことをどんどん紹介していきます。
今回の番組、次回のご意見など何でもいいのでお寄せください。ツイッターやホームページでもお寄せください。
(メールアドレス= labor-staff@labornetjp.org )
(公式サイト= http://www.labornetjp.org/ )
(ツイッター= @lnjnow @labornetjp ハッシュタグ= ハッシュタグは#labornettv )

土屋:レイバーネットTVは、皆様からの寄付で運営されております。
「この番組、いいな」「面白かったな」と思う方は、どんどんカンパしてください。寄付を寄せていただいた方のお名前は、番組終了時のエンドロールに流れます。
(★レイバーネットTV基金カンパ受付中 郵便振替 00150-2-607244 レイバーネット日本 または 〇一九店(019)当座 0607244 )

松元:有名になれます。

土屋:少しでも、小額でも歓迎です。100円200円、払える分だけでもいいので、ご協力いただければと思います。次回放送は11月3日、文化の日ですね。

松元:すみません!さっき大野さんが宣伝し忘れていたチラシです。10月31日(月曜)18時半〜、文京区民センターで「やっぱりTPPでは生きられない」、震災復興に便乗してます。皆さん是非是非いらしてください。

(サイト「TPPに反対する人々の運動」=http://www.geocities.jp/yaoyahyakusho/muramachi/home.html )

土屋:皆さん是非チェックしてください。ということで、今晩もお付き合いいただきましてありがとうございました。

松元:次回、11月3日にお会いしましょう。

土屋:さよなら〜。


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