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LNJ Logo 報告―今学校はどうなっているの? 映画とコンサート
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「地震で大変な時期にこんなに集まってくれて、ありがとうございます」――湯本雅典さん(元公立小学校教員)はこうあいさつすると、上映作品の解説を始めた。

3月29日夜。東京・荒川区の「ムーブ町屋」ハイビジョンルームで開かれた映画とコンサートの集い。「今学校はどうなっているの?」と題したこの企画に集まった人々は、スクリーンに投影された教育現場の実像に戸惑い、怒り、そして涙した。

映画「学校を辞めます−51歳の僕の選択」は、製作者である湯本さん自身の物語。荒川区の小学校に勤務中、区の英語教育に関する意見を新聞に投書したことを理由に、突然校長から転勤を命じられた。50歳の誕生日だった。仲間たちの支援で異動は撤回させたものの、ストレスで体調を崩し、自主退職した。この作品は辛く苦しかった当時の記録である。

据え置かれたカメラは、湯本さんと子供たちの心温まるふれあいを、画面いっぱいにとらえる。教員朝会での訴えは音声のみ。職員室の光景に思いがめぐる。 ラストシーンは感動的だ。湯本さんは母親の戦争体験を通じ、子供たちに命の、生き抜くことの大切さを語る。小さな手が顔を押さえる。会場からすすり泣きが漏れる。16分という短い時間のなかに、湯本さんの人柄が、生徒への愛情が凝縮されている。

「子供はそれほど弱くはない」――「ジョニーH」こと疋田哲也さんに体罰を受けたという生徒本人の証言だ。2本目「『不適格教師』の烙印を押された男 ジョニーカムバック」は、「分限免職」処分と闘う疋田哲也さんと、彼の周辺の人々への取材で構成。自分の力で意見が言えるようにと、授業はもちろん文化活動にも全力をあげた。その姿勢と情熱は、今も変わらない。

疋田さんは、性教育の分野でも功績を残す。映画「異性とつきあうってむずかしい? 3年C組からのメッセージ」(93年・東映)は、「第二次性徴期」を迎え、異性を意識する子供たちの姿を追う。登場する生徒は彼の実際の教え子たちだ。男女が時間をかけて相互に理解を深めることで、優しく豊かな関係が生まれていく。

3作品の上映後、コンサートが始まった。ジョニーさんはこのかんの東京電力抗議行動でも元気に歌っている。「鉄腕アトム」の替え歌「テプコのアトム」。「サマータイムブルース」「卒業式を台無しにする歌」「子供のしあわせ」など全12曲を披露。駆けつけてくれた教え子を含む70人の参加者を熱気で包み込んだ。

教師という天職を全うしようと、子供たちと真剣に向き合い、信念を貫いたがゆえに受ける理不尽な仕打ち。ジョニーさんは、「梅干し弁当のような布切れに、なぜ頭を下げるのか。その後ろにいるのは誰だ」と問い、「40秒の抵抗を子供たちの前で見せろ。それが教師の適格性じゃないか」と叫ぶ。教育者としての尊厳、人間としての良心を守り抜く人たち。支える運動の輪は、さまざまなかたちで広がっている。

「分限免職取消訴訟」の控訴審判決は、6月30日に東京高裁で言い渡される。この日上映された湯本さんの作品2本は、DVDでも見ることができる。(Y)


Created by staff01. Last modified on 2011-03-31 20:03:26 Copyright: Default

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