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LNJ Logo 民間人被害者を救済する差別なき戦後補償の立法措置を(中山武敏)
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今日の朝日新聞朝刊15面の「私の視点」にー戦争損害の補償「立法で解決を」と地裁指摘ーとの見出しで私の原稿が掲載されています。

昨年12月、原告131名が国を被告として、民間人空襲被害者に対しては、国が何らの救済をなさず、放置してきたことえの謝罪と賠償を求める 東京大空襲訴訟の第1審判決が東京地裁で言渡されました。判決は戦争被害は全て国民が受忍(我慢)しなければならないとの最高裁の「戦争 被害受忍論」判決に依拠できませんでした。「原告らが受けた苦痛や労苦には計り知れないものがあったことも明らかである。」とも判示して被害 事実も認めました。にもかかわらず、原告ら空襲被害者の救済は「立法を通じて解決すべき問題」として、原告らの請求を棄却しました。原告らは、司法の責任を放棄するものとして東京高裁に控訴しています。原告の平均年齢は77歳、最高年齢は91歳、第1審裁判中にすでに7名の原告が 死去しました。裁判の結果にかかわら早急な救済が求めらています。東京大空襲から65年目の3月10日には空襲被害者の補償を求める衆議 院会館での院内集会も計画されています。(以下省略) 

     中山 武敏

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「立法で解決を」地裁は指摘(朝日新聞「私の視点」 2010年2月3日付) 中山武敏(東京大空襲訴訟原告弁護団長)

 今年は戦後65年を迎える。 戦争を知らない人たちが大半を占める時代にあって、戦争のない 平和な未来をどうつないでいくか。私は戦後処理裁判を通して、戦争が決して「過去の惨禍」では ないことを伝えたいと考えている。

 昨年12月。1945年の東京大空襲で被災した民間人131人が国に謝罪と賠償を求めた集団 訴訟で、 東京地方裁判所は原告らの請求を棄却するとの判決を言い渡した。 私は原告代理人 の一人である。

 東京大空襲は、一夜にして10万人もの命を奪った。 戦争は「国家」の名の下に行われたが、 空襲による民間被災者は何の救済もなく放置され、その傷は現在でも癒やされることなく続いて いる。原告らは国に対し、軍人軍属などと差別せずに戦争被害者として認めて欲しいと訴えてい る。最高齢91歳、平均年齢77歳、すでに7人が死亡している。

 現憲法は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」して 制定された。 戦後政府は、 内外の戦争被害者への保証責任を果たすことが第一の任務であっ たのに、戦後処理の基本方針は、外国人の被害者を排除し、日本国民についても 「我慢」 を原 則とした。そうして、軍務や国の業務の従事者は援護する、というものであった。

 裁判でも、被告・国側は名古屋空襲で同様な訴えを退けた87年の最高裁判決を引用した。戦 争犠牲ないし戦争被害は国民等しく受忍しなければならない、とする「戦争被害受忍論」である。

 しかし、今回の東京地裁判決は原告の請求棄却ではあるが、注目すべき点があった。

 判決は 「原告らの受けた苦痛や労苦には計り知れないものがあったことは明らか。一般戦争 被害者に対しても救済や援護を与えることが被告 (国) の義務であったとする原告らの主張も、 心情的には理解できないわけではない」と述べ、戦争被害者受忍論を引用していない。 さらに、 原告らの救済は「国会がさまざまな政治的配慮に基づき、立法を通じて解決すべき問題である といわざるを得ない」とも指摘した。原告らは東京高裁に控訴している。

 民間人空襲被害者への援護を求める 「戦時災害援護法案」は、73年から89年までに計14 回、議員立法として国会に提出されたが、与党の反対で成立しなかった。

 しかし、政権交代により国会の構成も変わった。これまでの戦後処理、 戦後補償のあり方を 見直すべきである。

 私は、裁判の結果にかかわらず、戦争による民間人被害者を救済する差別なき戦後補償の 立法措置を求めたい。原告らに残された時間は少ない。それは、 若者たちに平和な日本を保 証することにもつながると考えるからである。

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Created by staff01. Last modified on 2010-02-03 12:09:36 Copyright: Default

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