本文の先頭へ
LNJ Logo 中国のカシオ工場で労働者3500人がストライキ
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item casio-china
Status: published
View


3月6日、日系企業の関連工場が集中する広東省広州市番禺にあるカシオ計算機の委託工場で労働者3500人がストライキに突入し、賃下げを含んだ賃金改定を阻止した。ストライキは周辺の日立、ウシオ電機など日系工場にも広がった。最低賃金の引き上げや労働契約法の導入などにともなう労働者のたたかいは、組織的行動に対する厳しい弾圧にもかかわらず途絶えてはいない。 ― 新田和夫(APWSL日本委員会)発

<写真↑>  機動隊に前進を阻まれ工場へもどる労働者

中国のカシオ工場で労働者3500人がストライキ

3月6日、広東省広州市の南に位置する番禺にあるカシオ計算機の委託工場でストライキが打たれた。

番禺カシオ電子工場(以下、番禺カシオ)で働く3500名の労働者の大半がストライキに突入した。労働者は賃金体系の変更に伴う賃下げの恐れに対して立ち上がった。

地元メディアによると、3月6日午前9時、番禺旧水坑村にある工場のゲートが開くと同時に、多数のカシオ電子工場の労働者が街頭に繰り出した。工場周辺の路上が労働者たちの青い作業着一色に染まった。10時ごろ、工場から2−3キロはなれた路上で、盾をもった警官隊、機動隊、国境警備の部隊が労働者の前進をさえぎった。

11時ごろ、警察の部隊が労働者たちを工場側へ移動させた。11時30分ごろ、警察が拡声器で、労働者の行動は違法行為であり、「要求がある場合は、正当な手段を通じて訴え、解決すべきである」という警告を発した。12時10分、カシオ工場内で、現地政府の労働部門の担当者が拡声器を使い、解決に向けて協議を行うことを通知した。

<写真↑> 機動隊に前進を阻まれ工場へもどる労働者

一方的な賃金体系変更に抗議

ストライキの発端は前日の夜に張り出された一枚の通知である。報酬に関する最新の通知というその張り紙には「今年2月1日から、一般労働者の基本給を580元から690元に引き上げる。長期服務手当ては12等級を維持するが、最低ランクの30元を5元に、最高ランクの240元を215元に改定する。またABCDの四段階の勤務評価は、これまでの145元、100元、85元、20元から、60元、15元、5元、0元に引き下げる」と書かれていた。

別な報道では、ストライキは実質的には、5日の夜のローテーションからはじまっていたとも言う。
労働者は、それまでの収入は「基本給+手当て+奨励金」で毎月690元前後だったが、新たな規定では「基本給が中心になって、手当てや奨励金はなくなってしまう」と語っている。総体としての金額は変わらないように見えるが、労働者によると、毎月20.92日の労働時間を完了しないと満額の賃金がもらえないという。「工場は、受注がないという理由で、よく休みになる。そうなれば規定の労働日を達成することはできず、賃金が下がるのは確実だ」。
番禺カシオの総務部の黎建林次長によると、工場には3500名の労働者がいるが、そのほとんどが作業をやめてストライキに参加したという。新しい賃金体系の提示の目的は、賃金が最低基準の690元に達しているということを分かりやすくするためであったという。「全体としては変化はない。形式的なものだ」とも。賃下げの恐れについて、黎次長は、「受注の減少で休みが増えたとしても、最低賃金の額は支給する」と述べた。「今年になって、労働力確保が難しくなっている。新しく雇った労働者には特別手当を支給している」。

<写真↑> 強制的に退去させられる労働者たち

33人の労働者が警察に拘束される

ストライキは盾と棍棒によって弾圧された。だが労働者、経営、そして現地政府の協議の結果、従来どおりの賃金体系を維持することが確認されたという。

今回のストライキで多数の労働者が拘束された。当該労働者によるウェブサイトの書き込みでは、「33人が拘束され、15人が釈放された。あとは治安拘留ということで十数日間拘留される。ストライキがどうして違法なんだ。どうして拘留されなければならないんだ。工場の敷地外にでることができないので、工場内でストライキを続けるしかない」という。

またこのストライキに鼓舞され、同じ地域にあるウシオ電機と日立の関連工場でもストライキが打たれた。「カシオ労働者に学べ!」という垂れ幕が工場外に掲げられ、数百人がストライキに突入し、4月に賃上げを実施するという回答を勝ち取ったという報道も流れている。

<写真↑> 強制的に退去させられる女性労働者

カシオ本社に責任がないわけがない

日本ではカシオ計算機との資本関係はない現地の企業であるという報道が出回っている。しかし、現地企業は香港カシオの関連会社であり、生産管理はカシオ本社が統括している。カシオ計算機の「コーポレートレポート2007」では、この「現地企業」が、グローバル企業カシオ計算機の安定供給体制の重要な位置をしめていることがはっきりと示されている。 http://www.casio.co.jp/csr/env/pdf/report_2007/c35.pdf

突然の給与体系の変更や異議申し立てに対する現地政府および暴力装置を用いてはじめて実現されるのがグローバル企業カシオの「安定供給」である。商品の安定した供給と企業の安定した利益は、労働者の不安定な労働・生活条件とコインの裏表である。

<写真↑> 香港番禺カシオ電子廠(工場)

中国の特色ある労働者管理

コスト削減のための賃金体系の改定に抗議して立ち上がるのは当然である。だが広州市労働保障局労働関係処の謝迎建処長は次のように語っている。「そういった行動では政府の関心を勝ち取ることはできない。自分の賃金問題だけで公共の秩序を乱してはならない。」
労働当局のこのような冷ややかな態度にはそれなりの理由がある。番禺カシオや日立、ウシオ電機などの工場が集中するこの旧水坑村で働いている労働者たちは、管理職を除いて、直接これらの外資に雇用されているわけではない。生産に携わる労働者たちは、旧水坑五金総合工場という地元有力企業が一括して管理して、労働力の必要な外資系工場などに派遣されているという。カシオや日立、ウシオ工場などは、労働者一人当たり1200〜1300元とも言われる人件費を旧水坑五金総合工場に支払っている。同総合工場はそこからピンはねをして労働者を各工場へ派遣する。この企業は日本資本との商業関係があるだけでなく、地元政府と密接な関係にある。

政官財のグローバルトライアングルを突き崩す労働者の国境を越えた団結を。

現場の映像(youtubeより)

文責・新田和夫(APWSL日本委員会)
情報源:「南方都市報」ウェブ版、「ラジオフリーアジア」ウェブ版等

写真は「南方都市報」 より

関連ニュース:東莞市のコニカミノルタなど日系企業2社でストライキ


Created by takaheims. Last modified on 2008-03-12 10:27:09 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について