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2001年1月、NHKで放送されたドキュメンタリー番組「ETV2001 問われる戦時性暴力」に取り上げられた「女性国際戦犯法廷」が、右翼の攻撃や政治家の圧力を受け、大幅に改ざんされて放送された。期待と信頼を裏切られたとして主催者側が損害賠償を求めた裁判の上告審判決が6月13日、最高裁で言い渡された。

判決は一審二審の被告側敗訴部分を破棄、原告「バウネットジャパン」の請求をすべて退けた。

13日の夜、東京・駿河台の明治大学構内で行なわれた報告集会。会場いっぱいの120人が集まった。

飯田正剛弁護士は集会前の記者会見で、今回の不当判決のポイントを以下のように指摘した。

「先に結論ありき。政治介入の不当性をまったく問題にしなかった」。「あまりにも一般論、抽象論に寄りかかり、問題を矮小化している」。「こんな論理で私を説得できるのか。最高裁に一片の敬意も持てない。まさに『最低裁判所』だ」。

主催者代表の一人東海林路得子さん(写真右側)は、「報道の重要性を、すなわち市民の知る権利を守るために裁判を起こした。今日の判決はまったく納得がいかない。しかしこの7年間でメディアと市民との連帯も築けた」とこれまでの経過を振り返った。

上智大学教授の田島泰彦さん(写真)は、この裁判で何が問われたのか、と短く提起。特別発言として松田浩さん(元立命館大学教授)がマイクを握った。「高裁での調査しつくされた判決に比べると、今日の判決はまったくお粗末。そもそも放送前にメディアが政治家にお伺いをたてることじたいが恥。それは検閲だ」。「最高裁は権力の番犬だ。法の番人ではない」。「高裁の優れた判決を作りあげたのは闘いの結果。運動を通して日本の民主主義は作られていく。まだまだこれからだ」と力を込めた。参加者や来賓の発言が続いた。

集会の最後に東海林さんがまとめた。「私はメディアの実態を知らずに裁判に引き込まれた。みなさん、これを機会にメディアの現場の人々の表現の自由を守る、私たちの知る権利を守る運動を、一緒にやっていきましょう」。

今回の判決に商業紙は勇躍。「編集の自由、最大限に尊重」(毎日新聞・13日朝刊)などと横並びでうかれ、紙面を埋めた。日常的にスポンサーを意識し、権力に迎合してきたマスコミに、司法のお墨つきが与えられたかたちになった。番組製作現場が受ける「圧力」を、内部告発として積極的に報じてきた朝日新聞。広報部は、「訴訟の当事者ではなく〜コメントする立場にない」(13日・毎日新聞朝刊)などと、まるで他人事のように話したという。

原告の訴えを一蹴した最高裁第一小法廷裁判長横尾和子は、6月4日に「違憲」の判決が出された「婚外子差別裁判」で、「合憲」との少数意見を発した人物。告発された番組編集は、NHK上層部の指示でオンエア直前まで執拗に繰り返された。完成した映像には、法廷開催に敵対し続けてきた右派論陣のコメントまで挿入されていた。弁護団はこうした常軌を逸した「異常」な事態は、強調しても、し過ぎることはないと主張している。

百歩譲って判決の「超一般論」を認めたとしても、原告には「格段の負担」が生じ、損害が生じた。それは原告が被告NHKにのみ、多大な便宜を図って取材を許可、協力し、それを利用して被告らは制作を進めてきたからだ。そのことを、双方が十分に認識していたからだ。原告の「期待権」が保護されるのは極めて当然なのだ。 市民運動、反戦運動を無視し続け、スポンサーに唯々諾々と従ってきた巨大報道機関。たとえば数万の人々が粘り強く街頭に繰り出したイラク反戦運動。「ベトナム反戦以来最高の規模」と言われたこの盛り上がりを、NHKは少しでも伝えたのか。この国の将来を憂い、労働の現場で、地域で日々地道に運動を続ける人々を、どれだけ取りあげたのか。先の戦争で大本営と一体化してナショナリズムを煽り、国民を悲惨な総動員体制に駆りたてた反省は、いったいどこにいったのか。

新聞の購読者は減り続けているという。ニュース枠では小学生にも言えるようなコメントを、したり顔でくり返すキャスター。こんな官製番組に、国民はそっぽを向くだろう。

社会的弱者の、被抑圧者の現実を正確に伝え、その立場に立ちきらないジャーナリズムは、ジャーナリズムではない。大物政治家への取材と市民運動への取材を、同列に論じることじたいが非常識である。メディアに求められているのは、編集作業上の「自律」ではなく、支配者と政治権力からの「自立」なのである。

最高裁の不当な判決に抗議する。「インターネット」は市民運動の貴重な武器だ。市民のための市民のメディアを、さらに強化し、活用しよう。

(写真と報告=レイバーネット会員・Y)


Created by staff01. Last modified on 2008-06-15 10:32:03 Copyright: Default

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