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きょうと通信
京都郵政職場交流集会(準)発行●06年12月24日 NO、21

【東京南部】ジャガーノート通信 第二一回 (〇六年初冬)
                    
 十月二九日の朝日新聞一面に、「郵政公社トヨタ式に混乱」という記事が掲載されていた。すでに目を通された方もいるだろうが、内容を簡単に紹介しておこう。JPS(ジャパン・ポスト・システム)方式の実施状況の点検のため、トヨタから派遣された指導役の社員が、全国一四二郵便局を視察した結果を記事にしたものである。それによれば、「郵政公社は、JPS 方式の全国展開の結果、全体で一八%ほど生産性が向上し、一四六七人の余剰人を浮かせることができたと、公式に発表していたが、トヨタの点倹者が視察した結果、これがまったくの出鱈目だったことが明らかになった」とされている。点検者が副総裁に提出した報告書では、「実効果につながる動きは何一つやっていない」「うわべだけの改善ごっこが氾濫」といった指摘がなされ、JPSを「まじめにやっている」局は八局、「やっていない」が三十局、「まったくやっていない」が五六局もあり、「全体の八一%はデタラメ局」とされている。また、「各局がやっていないのにやっているという、うその報告、ごまかしを本社にあげている」と書かれ、「怒り、憤りを通り越してかわいそうな連中だと思った」と感想も記載されている。記事は、「公社の発表した数字が実態を反映していない可能性もある」とし、「JPSの導入にもかかわらず〇五年度の人件費は前年より三一億円増えて一兆四二三八億円。超過勤務手当ても一一五億円多い一〇四〇億円だった」と結ばれている。

 現場でまったく実行不可能な合理化計画を押し付けて、それが実現できないと見ると、自らの責任は棚上げにして「かわいそうな連中だ」などとほざいているトヨタもトヨタだが、トヨタの連中が完全に誤解しているのは、民営化の看板は掲げているが、郵政公社の管理機構は、民間企業の業務を中心とした実務組織ではなく、郵政省以来のできの悪い日本型官僚組織そのものだということである。上からの指示は命令であり、疑問を差し挟むなどということはあってはならず、自己保身と出世欲から与えられた


目的の実現のために努力はするが、自己保身に駆られるあまり、できない場合もできたことにしてしまうのが常識の世界なのだ。

 最近も信じられないことがあった。郵便配達と平行して、郵便局アルバイト募集や、営業のチラシを各戸配達するのが常態化しつつあるが、過日降ろされてきたチラシは、上質紙にフルカラーで印刷されたチラシで、文面は、東京段階で四五〇名の正規外務職員を募集するという内容だった。幸か不幸か郵政公社の採用試験には応募者が殺到していて、ただでさえ高倍率になっているのに、四千五百名ならいざ知らずたった四百五十名の募集のチラシを各戸配布する必要があるのだろうか。しかも、これを全都でやるわけだから、その費用もかなりの額になるし、公金の無駄遣いという以外にない。課長を捉まえて聞いてみると、確かに変なチラシだが降りてきているんだから早く処理してくれ、いう。どこで誰が企画したものかわからないが、私の局にたどり着くまでに数多くの人がこの無意味なチラシの制作にかかわっていたことは間違いない。そして、ほとんどの人がこんなチラシを作って意味があるのか、と疑問を感じたに違いない。それでも、誰も何も言わないから、無意味なチラシが私の目の前にドンと積まれることになるのだ。万事がこの調子なのである。無意味なチラシ程度であったらまだ笑い話で済むが、上部がまったく誤った事業計画を次々に打ち出した場合はどうなるのか。おそらく、誰も何も言わずに黙々とそれを実行に移すに違いない。

 考えてみれば、郵便の現場とまったく正反対の「ライン労働」「看板方式」を「金科玉条」とするトヨタの連中と、自己保身とつましい出世のこと以外あまりものを考えたことがない連中が多数を占める郵政の小役人との二人三脚は、考えうる限り最悪の取り合わせなのかもしれない。民営化に向けての目玉であったGPS方式と配達の非常勤化は、すでに暗礁に乗り上げている。民営化までにすでに一年をきったが、行く手に暗雲が立ち込めている。

 今年の年末一時金は、二・二五ヶ月であるが、Aランク職員は、二・七五となり、Cランク職員(「成績不良者」、長期病欠者)は一・七五となる。この差はかなり大きい。他方では、些細なことで処分が乱発される。5分の遅刻で注意処分、書留の配達証の一時紛失で注意処分、車輌事故で処分(その上、車輌事故で郵政事業に損害を与えた場合、5万円を上限としての自己負担制が導入される)等々。成果主義と厳罰主義が仕事の能率を高めるなどというのは、無能力な資本家と小役人が描く幻想にしか過ぎない。法律における厳罰主義が、犯罪の抑止につながらないことは統計的にも証明されている。成果主義と厳罰主義の結果、郵政の部内犯罪はうなぎのぼりに増大している。

 そんな状況に見切りをつけてか、今年度の早期退職者は一万四千名と過去最高水準になると、新聞に報じられていた(十一月二二日毎日新聞)。早期退職の対象者である五十歳以上の職員数は、六万七千名であるから、この数は大きい。郵政公社は、一万四千人の早期退職者による人件費の削減効果は七百億円に上ると、ほくそえんでいるようであるが、一万四千人の熟練労働者から見放された企業に、どんな未来があるというのだろうか。

 書留・小包のバーコード読み取り機が、突然モデルチェンジされた。さぞかし軽量化され、扱いやすくなったのかと思いきや、手渡されたものは、今までの機種よりも大きくズシリと重く、扱いも複雑である。価格を聞いたところ、一台十万円だという。どこが改良されたのかといえば、従来型では読み込んだ結果を帰局してから中央に送信していたのだが、新機種では配達先ですぐに結果を中央に送信できるのだという。たったそれだけのことのために、十分使用できる読み取り機(こちらは一台三万円だった)を廃棄して、三倍以上の価格の、しかも扱いにくい器具に交換したというのだ。しかも、実際に使用する際には専用の小型プリンンター(これも、すでに現物が配置されていたが、書留かばんの半分ぐらいの大きさのズシリと重い代物だ)を腰に着けてそれと併用するのだという。これを全国配置するわけだから、その費用たるや相当な額に上る。一方では、赤字克服を絶叫して人件費をギリギリまで切り詰めながら、他方ではこの「お大臣」ぶりである。これでは、またもや郵政御用達の天下り企業が二重三重に絡んで、民営化前のドサクサに稼げるだけ稼いでおこうと画策しているのでないかと勘ぐりたくもなろうというものだ。

 以前にも書いたが、私の職場での朝の日課は、コーヒー用の湯を沸かすことから始まる。ところが、最近異変が起きていた。湯沸し用のガスコンロが、水を被った状態になっていて点火できないのだ。一度ならともかく、連日そんな状態が続くとさすがに不愉快になる。そうかと思うと、何の異常もない日もある。毎日早朝から働いている清掃のおばさんにそれとなく聞いてみたが、ガスコンロに水をかけて掃除するなどということはやっていないし、朝ウロウロしている人も見たことがないという。最近暇になって、整理整頓のチェックマンと化して、局内をうろついている労担(労務担当)が怪しいのではないか考えたが、「いくらなんでもそんことはしないだろう」との弁当仲間の返事で、私もそれはそうだろうと思う。それでも、そんな状態が続くと疑心暗鬼といった気分が募ってくる。時々水を被っていないのは、「犯人」が非番日(休み)だからではないだろうか、などと憶測ばかりが自己増殖していく。
 

そんな状態が続いたある日のことである。その日ガスコンロは水を被っていなかった。今日はガスコンロが使えると喜んで湯を沸かし、やかんを持ち上げいそいそとコーヒーカップに湯を注ぎ、ふと、ガスコンロを見て驚いた。乾いたガスコンロの表面に、一点水のしみ跡がついているのだ。何のことはない、やかんに目に見えぬほどの小さな穴ができていたのだ。やかんに湯が残っていると、一晩かけてすべて漏れ出し、ガスコンロを水浸しにする。そこに私が出勤してきて異常に気がつき呆然とする、といったことの繰り返しだったのだ。試しにその日はやかんを空にして帰った。翌日、コンロに異常はなかった。早速労担を呼んで、やかんを交換してもらい一件落着となった。

 些細なことを長々書いたのは、今の職場状況を象徴しているように見えるからだ。こんな文章を書いているくらいだから、私は物事を冷静・客観的に見るという点では、いささかの自負があった。それでも、些細なことから、あっという間に被害者意識と疑心暗鬼に陥ってしまうのである。正常なコミュニケーヨンが成果主義と厳罰主義で切り刻まれ、それぞれが個と化してしまった職場状態の中で、「やかんの針穴」のようなことですら、相互不信を増殖していく要因に転化するのだ。今回は偶然解決したが、もし、あの小さな水滴のしみに気がつかなかったらどうなっていただろうか。

 もう一つ謎がある。弁当仲間で、昼食時の味噌汁(味噌と具が別々の袋になっているどこにでも売っているものだが)を買いだめしてあるだが、一袋を使い切るときになって味噌の小袋と具の小袋の数が合わないときが頻繁にあるのだ。茶道具が入っている戸棚に放り込んであるだけだから、誰かが無断で使うことは有りうるしそれは構わないのだが、味噌だけ、具だけ使う人がいるとは思えない。弁当を食べながら、冗談で、「あんたが慌てて味噌を二袋つかったんじゃないの」などと言い合うが、こちらのほうの謎はいまだに解けていない。

 編集部後記

本号は06年最後の発行になる。4ケ月で20本。12月に入って、札幌から原稿が届くようになった。07年はこの通信でぜひ紹介したい。
さて、12月16日の第三回京都郵政職場交流集会(準)は、年繁直前の各局職場状況の点描からはじまった。共通して言えることは、「年賀準備に当たる余裕が全くない、否、準備どころではない!」ということに尽きる。特に、小包本務者執行局に至っては崩壊寸前にあることが強調された。こうした状況にあって、労組が賑やかに意見を交わすことが対処法のひとつなのだが、そうなっていない。この問題意識のうえに立って、「酒井不当配転裁判の勝利をめざす京都講演集会」(3月24日 18時30分 京都キャンパスプラザ)を成功させることを申し合わせた。

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