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LNJ Logo 「君が代」不起立者への懲罰研修の実態
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根津公子です。

21日に強行された「君が代」不起立「再発防止研修」の報告、根津の場合、をお届けします。

   ◇◇◇   ◇◇◇   ◇◇◇ 

 21日は今春の卒業式・入学式と周年行事における「君が代」斉唱時の不起立・被処分者に対して「再発防止研修」なる懲罰「研修」が強行された。

先に不起立に対し懲戒処分をされているのだから、二重処分とも言うべきもの。今回は「基本研修」と呼び、3月に退職した人を除く35人が、午前午後の2回に分けて呼ばれていた。だからてっきり昨年同様、同室に集められて担当者の「講義」を聞かされるものと思っていた。

 9時半、会場となっている水道橋の都教職員研修センター前に到着。入り口には17人の背広の職員プラス2人の制服を着用した警備員が立っている。入り口にはチェーンが張られ真ん中からは入れないようにされている。チェーンを外すよう要求するが、チェーンがない右端の一角を指し、「ここから入れ」と言う。「出張」で呼んでおいて真ん中から入れないとは何てことだ!といつものことながら思い、開始時刻ぎりぎりまで入り口で時間を待った。

 雨の中、ぞくぞくと都教委に抗議を、そして私たちを支援してくださる人たちが駆けつけてくださった。被処分者の会の代理人弁護士が代表して都教委の役人に抗議と申し入れをし、大勢の人たちが見守ってくださる中、私たちは会場へ入っていった。駆けつけてくださった皆さま、ありがとうございました。

 9時50分、エレベーターに乗り、私は指定された部屋番号の6階を押してはっとした。エレベーターの中には先に乗った数人が8階を押していた。同じ「再発防止研修」受講者のように見える。ここで初めて私と河原井さんが別室に隔離されていることに気づき、あわてて受付で渡された座席表を見ると、私に用意された部屋は私一人、河原井さんも一人で受けさせられるのだとわかった。

 指定された席に着いた。私の右手が鶴川二中校長、他にあと3席が用意されていた。

10時、研修センター研修部教育経営課N氏の司会で始まった。私の左手に司会のN氏、その後ろに記録をする女性、正面に講義担当者である教職員研修センター研修部教育開発課長K氏が座った。

司会は昨年同様、「本日の流れ」を言い、「受講中の注意」を読み上げた。効果的な研修の受け方として「録音は禁止」はおかしいではないかと思いながら、そこは聞き流した。

 いよいよ、講義。昨年の「基本研修」は、「受講上の注意」のあとはすぐに講義担当者が講義の原稿を読み上げたが、今年のそれは違っていた。減給・停職被処分者を対象に強行した2回目、「専門研修」の時のように、「所属、職、氏名をおっしゃっていただけますか」から始まった。まるで刑事事件の取調べのよう。黙っていると、「拒否ですか」と訊く。「いいえ、拒否ではありません。私を呼んだのはあなた方ですよ。私を特定して呼んだのでしょう。なぜ、わかっていることを訊くのですか。答える必要がないことをなぜ、訊かれるのですか。それがわからないから、答えられないのです」。

数度やり取りをした後、担当者は校長に訊き、「受講されるのは、町田市立鶴川第二中学校教諭根津公子さんですね。よろしいですか」と言い、私は返事をしていないのに、「先に進む」と言った。でもまだ、講義には入らなかった。

「初めに質問したいことがあります」と言い、(1)「職務について実践してきたことを答えてください」と言う。「憲法、教育基本法に則り実践してきました」と私。

次に、(2)「今年度担当している学年、校務分掌を言ってください」と来た。根津:「この質問が今日の研修とどう関係があるのですか」 担当者:「それがわからないと答えられないということですか」「研修との関係が不明確なので答えようがないということですか」 根津:「はい」

(3)「今回懲戒処分を受けた理由についてどのように承っていますか」。根津:「私はまったく納得していませんが、処分説明書には職務命令違反と書いてありました。」 担当者:「それはわかっているんですね」 根津:「説明書に記述してあったという事実のみ、言いました」

(4)「再発防止研修は地方公務員法32条違反者に・・・、教育公務員としての自覚を持ってもらうために行います。今日は基本研修として行うものです。そのような研修を今までに受けたことがありますか、ないですか」。 根津:「何のために訊かれるんですか」 担当者:「素直に言ってくれれば」 根津:「素直です。だから、目的のわからないことには答えられません」 担当者:「説明が十分でないから答えられないんですね」 根津:「はい」 担当者:「結構です」

 ここまでで30分が経過した。ようやくのこと、講義に移る。冒頭、「服務事故を起こすと学校や教育委員会の信用を失うことになる。日頃どんなにすばらしい実践をしていても、任命権者が違反に対し、道義的責任を問うことになる。7月は服務事故防止月間。自己啓発に努めていただきたい」と、昨年聞かされたと同様のことを言った。

そして、「教育公務員の服務義務と関係法令について」と題したレジュメに沿って講義を始めた。見ると、分厚い原稿を読み上げている。地方公務員法第1条「制定の目的」を、第3〜4条「地方公務員法の適用職員」を、

そして、「服務規定の主な特徴・内容」として、32条「法令等及び上司の職務上の命令に従う義務」、35条「職務に専念する義務」、33条「信用失墜行為の禁止」を、条文とその説明なるものを読み上げた。時間がなくなったのか、ところどころ飛ばしているようだった。そして最後は、「組織人としての自覚を高めていただきたい」と結んだ。この間45分ほど。

 聴いていて6つの疑問質問が浮かんだ。「たくさん伺いたいことが出てきました。まずは簡単なことから。最後に『組織人としての自覚を高めていただきたい』と言われました。私は組織人としての自覚を十分持って仕事に当たっているつもりですが、だから起立できなかったのですが、こうおっしゃるのは、私に組織人としての自覚がない、あるいは足りないとおっしゃっているのですか」と訊いた。担当者は、「ないと言っているのではありません。なお一層、ということです」と逃げた。

 「納得してはいませんが、たくさんお聞きしたいことがあるので先にいきます」と断って次の質問に移った。

32条「法令等及び上司の職務上の命令に従う義務」の説明で、「法令の解釈を色々にしてしまう心配があるが…」とあったことに関して次のように質問した。「確かに法令の解釈をいろいろにしてしまう心配があると思います。法令自体は変わらないのに、例えば『君が代』処分で言えば、不起立をしても東京でも以前は処分にならなかった。いま現在でも処分をするのは広島県など数県。累積加重処分は東京だけ。法令の解釈をどう変えて今の東京の処分になったのか、2つの解釈について説明をお願いします」。

担当者は、「処分については答えません」と席を立とうとする。私は、「法令の解釈を訊いています。受講者の質問に答え、納得させることが研修の目的でしょう。それをして初めて、担当者の職務専念義務は遂行されるのではないですか。答えない、では、受講成果は上がらず、担当者が職務専念義務違反になってしまうでしょう」と訊いたが、答えずに退室してしまった。

司会者は、「すでに報告書の作成の時間になっています。受講報告書をお書きください」と繰り返すのみ。私は講義の途中で、「効果的に進めるために、一区切りずつで質問の時間を設定してほしい」と要求したが、「最後に質問の時間を保障する」と司会が言ったからそれに従ったのに、今回も質問の時間は保障されなかった。

後で聞くと、他の人たちには、質問の時間が保障されたそうだ。去年も一昨年も質問の時間を取らなかったことを私たちが批判したことが、今回の「研修」に反映されたのだろうと、皆さん言っていたけれど、私にはそれが保障されなかった。なぜ都教委は私に、いつも差別的な扱いをするのか?!

 司会者から「受講報告」を書くよう立て続けに言われ、「疑問がいっぱいのまま、受講成果がないのだから、報告は書けません」と言うと「わからない、と書けばよい」と言われたので、次のように書いた。

 ボールペンで書き始めてしまったので、文章がおかしくなってしまっても訂正はしなかった(できなかった)。

「地公法に規定する服務規定について担当者のK氏の講義を聴いていて、わからないところがたくさん出てきた。それについて質問の時間が保障されなかったために、この研修は生きたものにならなかった。担当者が受講者の質問に答えてくれて初めて研修が意味あるものになると思うのだが…。私は授業者として常に生徒の質問には丁寧に答え、また、生徒全員にとって授業が意味あるものとなるよう、授業(職務)に専念しているが、今日の研修も同じように受講者である私、根津の理解を深めるものとすべきであった。疑問が解決され、理解が深まった上で書くべきこの報告書は、何一つ疑問が解決されていない状態では書きようがない。

 私は今までと同じように、子どもたちを戦争に駆り立ててしまった反省から生まれた教育基本法に則って、教育活動に専念していきます」。

12時、やっと解放された。ここでも私だけが12時まで退室を禁じられていた。

質問をしたいと思っていたのに、させてもらえなかった事項は以下のとおり。

・「上司の職務上の命令」について。「君が代」処分撤回を求める人事委員会審理の校長証人尋問で、校長たちの中に何人か、「本当は起立・伴奏の職務命令を出したくなかった」という趣旨の証言をされましたよね。校長が出したくない、出すべきではない、と思っている職務命令が果たして『正当な職務命令』と言えるのか。

・信用失墜行為の禁止について。昨年の東京、朝日新聞調査によると、東京の『君が代』処分をおかしいと思う都民は6〜70%となる。それでも、不起立が信用失墜行為となるのか?信用失墜行為の要件を満たすもの、基準はなんなのか。

・同じく信用失墜行為について。噂されているY教育委員のセクハラ・破廉恥行為は信用失墜行為に該当しないのか。またその理由は、何なのか。教育委員が一般職ではないからなのか。

・職務命令が正当であるための要件の一つとして、『実行可能な職務命令であること。犯罪を命じることはできない』と言われた。職務命令を発した校長には犯罪に繋がる認識はなくとも、発せられた職員には、その職務命令が犯罪に繋がる認識がある場合、その職務命令は有効なのか(私には『君が代』起立が戦争犯罪に繋がる認識がある)。


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