シンポジウム
「もうはじまっている監視社会 ストップ・サイバー・ゼノフォビア」報告
中口八惠子(カトリック東京国際センター)
法務省入国管理局が2004年2月16日から開始したホームページ上での「不法滞在等の外国人情報」のメール通報制度は、フォームの一部変更はあったものの依然として継続されている。この制度の廃止を求める活動の一環として5月22日新宿のハーモニックホールで、「『Stop! メール通報』連絡会」主催による「もうはじまっている監視社会 ストップ・サイバー・ゼノフォビア」のシンポジウムが開催された。
はじめに、主催者からこの制度の問題点とこれまでの取り組みの報告がなされた。根本的な問題点として、ⴡ政府による外国人への差別であり、排外主義を煽る行為である、ⴢお互いが監視しあう社会へと推し進め、民主主義を破壊するものである、ⴣ違いを尊重しあ
う多民族・多文化共生社会への道に逆行するものである、ということが指摘された。また、具体的な問題点としては、ⴡ人種差別撤廃条約に抵触する、ⴢプライバシーの侵害である、ⴣ匿名を奨励している、ⴤ当初は入管法違反とは関係のない通報動機を羅列していたことがあげられた。
さまざまな国籍・民族・文化の背景を持った人々へのインタビューのビデオ上映では、彼らが日本社会の底辺を支えながら何の保証もないうえ、誰に通報されるか分からない不安に怯え、外出もままならない状況にあるなど、精神的にも追い詰められている現状が訴えられた。
パネルディスカッションは、パネリストにピーター・バラカンさん(ブロードキャスター)、福富忠和さん(ジャーナリスト)、明珍美紀(新聞労連委員長・毎日新聞記者)、原由利子さん(反差別国際運動日本委員会事務局長)を迎え、各方面からこの問題について討論された。
ディスカッションでは、日本はなんでも事前に防ごうとする傾向があり、自分たちで危険だと言ってさらなる危険を作っているということが指摘された。また、監視社会という視点から、このメール通報は、外国人である、または、宗教など、個人の表面・行動の監視であり、これをきっかけに、さまざまなところで、通報するのが当たり前という通報の義務化につながっていく危険性がある、つまり、監視社会の方向へと進められていることが議論された。また、マスコミのなかでも統制がきびしくなってきているということも述べられた。
このメール通報にみられるように、最近は、日本社会が多文化共生社会とは逆の方向へ向かっているように見える。なぜ、「不法滞在」が多くなったのかを、彼らの日本での役割、歴史などその背景をきちんとみて、対応することが必要であることが議論された。さらには、日本は差別が見えにくい社会であり、あたかも差別がないように見えるが、差別をなくすためには、私たちは差別があるということを自覚することから始めなければならないということも指摘された。
最後に鳥井一平さん(全統一労働組合書記長)から「外国人労働者は私たちの友人であり、同僚であり、私たちが住んでいるこの日本の底辺を支えてくれている人たちです。また、彼らは私たち日本人に権利意識を教えてくれたのです。私たちは彼らに感謝しなければなりません。」と締めくくった。
「Stop! メール通報」連絡会としては、法務大臣への申入れを調整中であるが、このメール通報制度の一部変更ではなく中止を一日も早く実現するため、今後一層の各方面からの協力をお願いしたい。
(移住労働者と連帯する全国ネットワーク発行「M-ネット」2004年6月号より)
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Last modified on 2005-09-06 04:53:28