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世界経済フォーラム・世界社会フォーラムに対する労組声明

この声明は「Global Unions」を構成する以下の労働組合国際組織によるもの(※訳注1)
■International Confederation of Free Trade Unions(ICFTU:「国際自由労連」)
■International Trade Secretariats(ITS:「国際産別組織」)
■Trade Union Advisory Committee(TUAC:「労働組合諮問委員会」)
■WORLD CONFEDERATION OF LABOUR(WCL:「国際労連」)
■EUROPEAN TRADE UNION CONFEDERATION(ETUC:「欧州労連」)



社会的公正のグローバル化を


 世界中のほとんどの労働者民衆は、21世紀を迎えても劣悪な処遇を受けている。雇用の安定が崩壊し、賃金は企業の利潤とは逆に低下している。持てるものと持たざるものとの、男性と女性との、先進国と途上国との不平等が拡大している。途上国に対する国際経済機関の支配力はますます増大している。富の集積・集中が進む中、貧困はかつてないほど深刻になっている。

 民主主義も危うくなっている。グローバル化した市場が、しばしば企業間以上に国家間の競争を激化させ、国民国家の政策の幅が抑制されるようになっているから、民主的政治が難しくなっているのだ。そして、グローバルな秩序・ルールが出てくる場合、それは労働者の権利ではなく、資本の利益・財産の権利を守るためのものになっている。一般の人々の意志を反映し擁護するための民主的機構が脆弱あるいは不在であるために、実際、選挙で選ばれた政府のリーダーから選ばれていない世界的資本のリーダーに権力がシフトしている。

 こうして個々人の手の及ばないところで政策決定がなされはじめている、という感覚が広がっている。このことは、単純な業務にたずさわり不完全にしか雇用されていない多くの労働者にとって、真実である。またこのことは、多くの人が投票という簡単な行為でもそれが日常生活と関わりないことのように思えてしまう、今の政治状況において真実である。ゆとりある社会にとって不可欠な公共サービスの無責任で包括的な民営化は、手頃で公平で平等なサービスと政治参加との関係を見えにくくすることで、こうした疎外感をますます助長する。

 しかしながら、今までのやり方では十分でないことに多くの人々(政府や企業も)が気づきはじめている。彼らは、無規制なグローバリゼーションが、一部の人には有利でも、圧倒的多数の人々のためではないことを知っている。国際金融市場の規制緩和がテロリズムのネットワークをも広げたことは、国際的管理とグローバリゼーションへの規制を増やすための枠組みづくりを進めなければならないことの証拠となった。

 市場は自己管理ができない。それは自ずから公正を産み出すわけではないし、利益や職務ほどには人権を尊重することを必要としない。言い換えれば、世界は自動操縦装置によっては成り立たない。世界の指導者や諸機関がそのモデルを押しつけることを止めるまでに、どれだけ多くのアルゼンチンの人々が生活破綻をきたさなければならないのか。また指導者たちが企業が従来思われてきたほど信頼のおけるものなのかを深刻に疑うまでに、どれだけ多くのエンロンが破滅に向かうのか。

 歴史は、民主的な労働運動が、市場原理によって産み出された道徳的空白を埋めうることを示している。そうした労働運動は、労働者の意志を示し、富と権力の国内的分配を変え、さらに世界を動かす動力になってきた。労働運動は、社会変容を促す能力を持っている。だからこそ、官民問わず圧制者は、組合の自由を恐れるのである。労働組合はまた、今日の二極分化を越えていける数少ないアクターであり、それゆえ、よりよい世界の基礎単位なのである。我々、国際労働運動は、労働組合の諸権利を尊重することが、社会的公正を伴う社会的・経済的発展にとって不可欠であることを確信している。

 労働運動はその統一された意見を、ポルトアレグレ(世界社会フォーラムWSF開催地)とニューヨーク(世界経済フォーラムWEF開催地)に届けに行く。労働組合は産業の一部であると同時に社会の一部である。我々の組合員のために経営者と対話や交渉をしていくと同時に、コミュニティの他の人々と連帯する。我々の役割は、我々と同じ見地をもつ人々と同盟を築き、そうでない人々と議論・論争をしていくことで、労働者の利益を守り前進させることである。だからこそ、我々は両フォーラムに同時に参加するのである。(※訳注2)

 グローバルな討論への参加は、たとえそれが限定されたものであったとしても、有意義なものになりうる。世界は必ずしも、グローバリズムに賛成する人と反対する人にきれいに分かれてはいない。我々は、バランスなきグローバリゼーションを強制してきた新自由主義のアジェンダには反対する。我々は世界経済フォーラムに、社会的公正をグローバル化する必要性を宣言するよう圧力をかける。同時に我々は、すべての労働者の利益の観点からグローバリゼーションを民主化する建設的アプローチを示すことで、世界社会フォーラムに貢献したい。我々の家族やコミュニティの日常的現実をみれば、社会と経済は今までも、そしてこれからもずっと、密接に結びついて(リンクして)いるのである。(※訳注3)

 我々の目標は、貧困・失業や差別・不公正、あらゆる形態のテロや戦争・抑圧の不安のない世界への支持を獲得することである。我々は、完全に民主的で人権が尊重される世界を求める。我々は、大小規模に関わらず企業が労働者・労働組合・そしてそれらが支える社会の権利を尊重する世界を求める。我々は、極端な富裕と困窮の撲滅、男女の完全平等、青年や高齢者すべての人々の権利尊重を求める。我々は、経済と社会が、民主的で説明責任を果たす政府・諸団体によってなされる高度な公共サービスと私的パワーの統制に基づいた場合にのみ持続可能となるということが、受け入れられることを求める。そして我々は、もうひとつの世界が可能だということを確信している。以上が、21世紀の世界の労働運動のビジョンであり、我々がポルトアレグレとニューヨークに呼びかけていることである。



【原文】

※訳者注1
 ICFTUは1949年に西側諸国の労組が「世界労連(WFTU)」から脱退して作った組織、TUACはOECDの下部機関である。労組国際組織について詳しくは、『日本労働年鑑』(第69集/1999年/大原社研)などを参照のこと。

※訳者注2
 WEF2002には、30〜40人(うちジョン・スウィニー含む米国9人)の労働組合指導部が参加している。これほど多くの組合指導部がWEFに参加したことはかつてない。

※訳者注3
 先進国労組幹部層による、経済グローバル化に社会条項(社会的諸権利の実現を条件とすること)をリンクする修正戦略については、社会条項違反の際の制裁が先進国に有利だという第三世界エリートの観点だけでなく、もっと構造的な変革が必要であるという観点からも否定的意見が出されている(例えば韓国の労組ナショナルセンター民主労総)。その意味で、上の声明は、反グローバリズム労働運動の中の、一潮流を代弁するものに過ぎない。この点に関して重要なことは、「社会的公正」が本当に実現するような水準の社会条項であれば多国籍企業や新自由主義的諸機構・政権はそれを絶対に受け入れないこと、したがって(国際的な社会権ルールが必要だという考え方自体は否定してはならないが)WEFやWTOに参加してその実現を図ることが果たして正しい戦略であるのか問われなければならないこと、さらに制裁措置が行われることが社会的に公正であると言えるのはそれが社会権違反を犯した多国籍企業に向けられた場合のみであること(例えば対国制裁という考え方は別の意味で不公正である)、制裁というやり方に基づく修正戦略は市場競争のグローバル化によって飛躍的に拡大してきた国内的・国際的格差といった構造的問題自体を変えるものではないこと、以上のことより、表面的でない「社会的公正のグローバル化」を求めるならば、投資・生産・通商のあり方全体が「異なる世界」を作らなければならないことである。世界社会フォーラムでは、どこまでそうした認識と変革構想が進展するか注目される。



ANOTHER WORLD IS NECESSARY

JNK(国際部)


Created byStaff. Created on 2002-02-01 05:43:35 / Last modified on 2005-09-05 02:58:42 Copyright: Default

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