ポチとボスとの会話
「おいおいポチや、何年も前から『早くやれやれ』と言っていたのに、ようやっとやったね。どんな無茶なことだって、やりさえすればできるもんなんだ」
「ワンワン、おっしゃるとおりで、ボス。私も一時はもうダメかと思ったのですが、最後に『一か八か』の無茶な勝負に出たら勝っちゃいました」
「ポチや、世の中だいたいそんなもんなんだ。ワシなんかは、『大量虐殺核兵器があるある』なんて言う嘘がバレたって、国際法を無視して子供や民間人10万人以上を殺したって、支持者はいっぱいいるんだからね」
「ワンワン、そういえば私なんかも、違法行為の証拠を突きつけられていつものはぐらかし答弁も通じないほどピンチに陥った時、『人生も会社もイロイロあらあね』って居直ったら、驚いたことにことにそれですんじゃったこともありました」
「そうなんだよポチ。何にも考えないで、何も説明しないで、とにかくやっちまうことが肝心なんだ。後は、ワシがやったことで儲ける奴らが何とかしてくれるんだ。ワシなんかはいつもそうしているよ」
「いやあボス、おっしゃるとおりで、ワンワン、気が合いますねえ。今回ばかりは私も丸投げをしないで、リーダーシップをとったんですよ。どうせ私が数十年後に生きているわけでもなし、後は野となれ山となれ、勝負に負けたからといって食っていけなくなるわけでもなし、目をつむって突入することが大切なんですね。得票率では5割を切ったのに議席は3分の2以上の大勝利です」
「おお、ポチやポチや、愛でるべき奴よのう」と言ったかと思うと、急にボスは悲しげな声になって「ホントに忠実な奴は、お前だけよのう」とぽつりと漏らした。
「おお、ボス、ボス。私たちは運命一体です、キャンキャン」と言ったかと思うと、急にポチもそれまで振っていた尻尾が垂れ下がり「ボスも私も、外交行き詰まりで四面楚歌になってきちまいましたもんねえ」とぽつりと漏らしたのだった。
翌日11月16日の新聞朝刊には以下のような記事が載った。
「久しぶりの日米首脳会談が昨日行われた。席上、340兆円郵政民営化(株式会社化)法案成立を踏まえ、ブッシュはコイズミに『米国の保険会社が自由に日本で振る舞えるようヨロピク』と要請した」。
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ボスとポチの会話では、次のような話もされたらしい。
「ボス、私は今のうちハンバークとかメンチカツとか食い溜めをしているんですぜ、ワンワン。年内輸入再開の後はもう危なくて食えませんからね」
「おおポチや、苦労をかけておるのう。でも牛丼は『吉野家』がすぐにでも使うらしいけれど、『スキ屋』で食べればいいじゃないか」
「でもねボス、ワンワン、日本消費者連盟などが抗議運動を起こすとか、郵政4・28ネットが物販商品にチェックをと考えだしているとか、日本の中じゃあ結構大変なんですぜ。何せ輸入強行は殺人罪に匹敵する行為ですからね」
「おお、ポチやポチや、お前だけじゃよ、BSE(いわゆる狂牛病)を快く引き受けてくれるのは。世論の反対を押し切ってまでとは、あっぱれじゃ」
「ボスにそう言ってもらえるなら本望ですぜ、ワンワン。何せ、『米国内検査等がキッチリされるならば危険度は小さい』っていう審議会答申を、米国内検査等がキッチリされていないと熟知している連中に出させたんですから、あっぱれでしょう」
「ポチよ、あっぱれついでに沖縄など米軍再編問題でも誉めてやりたいのだが、どこをどう誉めて良いのか、この種の難しい問題は何も解らないんでねえ。一応ワシは軍の最高責任者にはなってはいるんだが」
「いやあボス、実は私も他人任せで、ちょっとでも難しい問題の一切が解らないんですよ。一応私も『世界有数の軍』最高責任者にはなっているんですがね。ホントにボスとは似たもの同士ですぜ、キャンキャン」
名古屋哲一(郵政4・28免職者)
「郵政ユニオン九州地本機関紙」及び「大阪・吹田千里支部機関紙」にも掲載
*タイトルはレイバーネット編集部